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腎がんと診断されたら①
〜不安にならずに治療を受けるために〜
2016.11.14
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まずは腎がん診療の全体の流れを知りましょう
- 体調がおかしいと感じたら放置せずにまず検診
- 情報収集し、検査や診断、治療についてよく知ることで、治療法を選択する際に役立ち不安を解消できる
- わからないことなどは遠慮せず担当医に質問したり、家族と話し合うなどして、とにかく一人で悩まない
下の表は、受診から治療、経過観察までの大まかな流れです。全体像を把握し、自分の病気とゆとりを持って向き合うために確認しておきましょう。
腎がんの疑い
体調をおかしく感じたら、放っておかずなるべく早く受診しましょう。健康を維持するための定期検診や人間ドッグも有効です。腎がんは泌尿器科で診療しています。
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情報収集
できるだけ多くの情報を得て検討し、最新情報に通じた専門医や、実績が豊富な医療機関を受診しましょう。また、腎がんにとはどんな病気かもよく知りましょう。
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情報収集(医療費)
治療にかかる費用について心配になると思います。公的医療保険の利く範囲や、ご自身が任意で加入した医療保険を確認し、相談先も把握しておきましょう。
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受診
受診のきっかけ、病状や気になっていること、不安なことなどは遠慮なく担当医、看護師に伝えましょう。前もって頭の中を整理し、症状などのメモを持参すると良いでしょう。
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検査・診断
検査や診断、治療についてよく理解しておきましょう。治療法を選択する際に役立ったり、不安を解消できます。担当医から検査・診断結果について説明があります。わからないことは理解できるまで質問しましょう。また、患者会などの情報交換の場で情報収集しても良いかもしれません。
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治療法の選択
主治医が、がんや体の状態に合わせて治療方針を立てます。主治医とよく話し合い、あなたの希望に沿った治療方法を見つけましょう。セカンドオピニオンを求めてもいいかもしれません。一般的に腎がんの標準治療法は外科手術です。
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治療
治療中も不安なことやつらいことなどは担当医や看護師に伝えましょう。よい解決方法が見つかるかもしれません。
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経過観察(フォローアップ)
術後の経過観察の主な目的は、腎臓の状態を含めた合併症や再発・転移の早期発見のためです。しばらくの間通院し、検査を行います。
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病気そのものの悩みや心配以外にも、治療にどの程度お金がかかるのかという経済的な問題や、治療のための離職や休職、復職などの社会的な問題も降りかかります。周囲の理解と協力を得るためにも、一人で悩まず周りの方に遠慮なく相談しましょう。
診断結果を上手に受け止めるために
- つらい気持ちを一人で抱え込まない
- 不安や落ち込んだ気持ちを少しでも和らげる
がんの告知を受けたら衝撃を受け、動揺するのは当然のことです。最近では「がん=死」ではないとよく言いますが、病気を認めたくない気持ちや不安は誰にでも芽生えるものだと思います。体調のこと以外に生活や仕事のことなどの不安が一気に押し寄せて、絶望感にさいなまれることもあるかもしれません。
しかし、適切な治療を受けて生活の質(QOL)を保つため、冷静に病気を受け止め覚悟することが必要です。
気持ちを人に話してみましょう
一人で悩んだり落ち込むのはやめましょう。家族や友だちなどあなたが心を許せる人に、今のあなたの気持ちを話してみてください。話すことで気持ちの整理がついたり、落ち込んだ気持ちが軽くなったりするかもしれません。 家族や友人に心配をかけたくない、気を使わせたくないなどの理由で話すのが難しい場合は、相談サービスを利用してもよいでしょう。
国立がん研究センターが運営する「がん情報サービスサポートセンター」は、がんに関する心配事や知りたい情報を相談できる電話のサービスです。また、直接スタッフに相談することができるお近くの「がん相談支援センター」の案内も行っています。
がんの相談窓口「がん相談支援センター」
http://ganjoho.jp/public/consultation/cisc/cisc.html
全国に設置されたどなたでも利用できるがんの相談窓口です。がんについて詳しい看護師や、生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどが、相談員として対応しています。がんにまつわる全ての相談が可能です。
不安や落ち込んだ気持ち少しでも和らげましょう
不安なまま治療を受けてもつらいだけです。なんでも構いません、人に不安を話す、趣味や読書など気がまぎれることに没頭するなど、不安やつらい気持ちを軽くするために何が自分に役立つか考え実行しましょう。
がんに向き合うための心得
- “自立”と“孤独・孤立”は別のものだと心得る
- “自立”して病気と向き合うためにも患者さんをサポートするさまざまなしくみを活用する
- 情報収集とコミュニケーションを積極的に行う
自分らしい向き合いかたを考える
がん体験者を対象としたアンケート調査※での質問「悩みや負担等の軽減のための要望・支援」の回答結果の第1位は「自身の努力による解決」でした。2位以下を大きく引き離し約20%を占め、いかに患者さん自身が自ら努力し、悩みを克服しようとしているかがわかる結果です。第2位は「相談・心のケア」、第3位は2位とほぼ同数で「医療者との良好な関係」でした。
がんに限った話ではありませんが、誰にも相談せずに一人で悩んで孤立してしまうことと、“自立”は全く別のものです。自立を目指して、多くの方とのコミュニケーションをとり、あなたをサポートするさまざまなしくみを積極的に活用しましょう。
※「がんの社会学」研究グループ「2003年 がんと向き合った7,885人の声(がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査 報告書概要版)」2014年1月
お金のこと、仕事のこと
がんの治療では、治療そのものにかかる費用の他にも、治療に伴う間接的な出費や付随してかかる費用も少なくありません。また治療のための離職や休職となった場合には当然ですが収入も減少します。家計や将来のことを考えてもお金と仕事の問題は大きな悩みですね。次回の「腎がんと診断されたら②」では、お金と仕事の問題を掘り下げます。
主治医を始め医療者との関係づくり
がんは慢性の病気です。そのため、診断や治療からその後の経過観察(フォローアップ)や療養まで、主治医をはじめとする医療者と長く関わり、話し合いを重ねることになります。主治医はあなたの病気と体の状態を一番よく知っている頼もしいパートナーです。しかし、痛みなどの自覚病状や、心配や悩みなどはあなた自身にしかわかりません。お互いに納得しながら治療を進めるためには、コミュニケーションで関係を築くことが大切です。
主治医から診断の結果や治療方針の説明を受けるとき、一度で全て理解することは難しいことです。わからないことや知りたいことはしっかりと主治医に伝え、改めて時間を取ってもらってもいいでしょう。
主治医とうまく関係を築くことが大変だと感じたら、看護師や他のスタッフ、家族などと同席して、会話の調整役をしてもらうことも検討しましょう。
セカンドオピニオンを活用する
セカンドオピニオンとは、主治医とは違う医療機関の医師に、現在の自分の病状や治療方針などに関して「第2の意見」を求めて参考にすることです。
こんなときに活用しましょう
- 主治医からの診断や治療方針が妥当かどうか悩んでいるとき
- いくつかの治療方針を主治医から提示され、どれが良いか迷っているとき
- 主治医から提示された治療法以外の方法を知りたいとき
- 手術などの重大な決断をしなければならないとき
セカンドオピニオンの効果・メリット
- 主治医の診断に対する認識を再確認できます。
- 診断結果に対する治療の妥当性を確認でき、納得して治療を受けることができます。
- 主治医が示した治療法以外の方法を提案された場合、治療の選択の幅が広がる可能性があります。
セカンドオピニオンを求める医師を選ぶポイント
- 腎がんに詳しい専門医で、治療成績を公表していること
- 自分の希望する治療を行っていてその治療法に詳しいこと
- セカンドオピニオンに積極的であること
- 主治医と違う医療機関で、かつ出身大学や医局が違うこと
セカンドオピニオン上手に活用するために
- 主治医の診断(ファーストオピニオン)の理解に努めましょう。セカンドオピニオンとの比較ができなければ意味がありません。
- セカンドオピニオンを求めることは患者の権利です。自分の疑問や不安を取りまとめ、主治医になぜセカンドオピニオンを利用したいかをしっかりと伝えましょう。
- 紹介状をはじめとするさまざまな資料をできる限り準備してもらいましょう
患者同士の交流・支え合い
主治医や看護師に相談しにくいことも、同じ立場の人には話しやすいですよね。病気に向き合うためには仲間が必要です。
同じ病気を持った患者が集まり、情報交換や悩みの相談をする集まりのことを患者会と言います。医療機関や地方自治体などが主催している身近なものから、インターネットを活用した全国的な患者会などさまざまです。以下で代表的な腎がんの患者会を紹介します。
そらまめの会
http://www.soramamenokai.net/
腎細胞癌と腎盂癌の患者さんとその家族の方が、それぞれの体験やさまざまな情報を共有するために発足した団体です。インターネットと交流会で患者同士の絆をつないでいます。
女性腎細胞がん患者会「with-you」
http://www.geocities.jp/himiko3366/omoi4.html
2006年発足、女性患者さんだけが対象です。登録メンバーに届くグループメールシステムを利用して交流を進める会です。
再発転移治療中の腎細胞がん患者会「avec(アベク)」
http://www.geocities.jp/himiko3366/avec.html
2014年発足、腎細胞がんで再発転移治療中(休薬・緩和ケア含む)の患者さん本人のみが対象です。会員制・招待制のSNSを利用してインターネット上で交流するための会です。
楽天的にいきましょう(心と免疫力)
「病は気から」とよく言いますが、本当でしょうか?
心の安定は免疫力を高め、反対に心理的なストレスは免疫力を低下させることは科学的に明らかにされてきています。免疫システムがきちんと働いていれば、がん細胞と戦うマクロファージやNK細胞などが活性化し、がんの増殖を抑えてくれます。
前向きに楽天的に、感情的な負荷をかけず、「病気と闘おう、生きよう」という意欲を持って病気と向き合いましょう。
腎がん経験者:所長のことば
元来怖がりな私は告知のショックで病院の駐車場で号泣し、直後に自損事故を起こしてしまいました。当「腎がんシリーズ」監修の近藤先生と下記であるさんがおっしゃっているように、前向きに病気と向き合うという気持ちが治療をする上で大切なんだと今は思っています。 病気でなくても生きていれば色々なことがあります。生活全般に渡って心の持ち方の大切さを改めて感じています。
腎がん経験者:じんラボ研究員 あるさんのことば
私の知人には7回がんになって打ち勝った方がいます。その方は、がんになる度「またやってきたな!でも絶対に克服してやるぞ!!」と言っていました。私はそこまでできるかどうか分かりませんが、親にも呆れられるぐらい楽天的に「なんとかなるさ」と思ってやってきました。なったものは仕方ないんです。悩んで治る病気はありません。むしろ悩むことは最大の弱点です。 信頼できる医師と、自分で学んだ治療法で困難を乗り越えましょう!
おまけ ー代替療法や民間療法(補完代替療法)
- あなたの身体の状態を誰よりもよく知る主治医に必ず相談
がんと診断されてから不安な日々を過ごし、藁にもすがる思いで民間療法や代替療法に関心を持つ患者さんやそのご家族も多いと思います。 しかし、代替療法や民間療法についてご自身が集めた情報が正しいのかを見分けるのは難しいものです。中には治療の効果を弱めてしまったり、最悪がんをさらに悪化させてしまうものもあるかもしれません。 ご自身で情報収集し、有効性と安全性の評価を知ること以上に、あなたの身体の状態を誰よりもよく知る主治医や看護師に相談することが大切です。
がん治療が目的の医療(手術、薬物療法、放射線治療など)に加えて、「補足的に」行う施術や療法のことを補完代替療法と言います。健康食品やサプリメント以外に、鍼・灸、マッサージ、運動療法、心理療法と心身療法なども含まれます。
参考
- 『患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版』学研メディカル秀潤社 (2013/9/10)
- 「がんの社会学」研究グループ『2013年 がんと向き合った4,054人の声(がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査 報告書)』2016年9月第3版
- 「がんの社会学」研究グループ『2003年 がんと向き合った7,885人の声(がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査 報告書概要版)』2014年1月
- 編集:厚生労働省がん研究助成金「がんの代替医療の科学的検証と臨床応用に関する研究」班、監修:日本補完代替医療学会『がんの補完代替医療ガイドブック 第3版』2012年2月
参考サイト
- キャンサーネットジャパン『もっと知ってほしい腎がんのこと2013』 (2016/9 アクセス)
- がんサポート『そらまめの会(腎細胞がん・腎盂がん)インターネットと交流会でつなぐ、腎がん患者の絆』 (2016/9 アクセス)
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