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腎がんの原因
〜腎がんにならない・早期発見のために知っておきましょう〜
2016.10.3
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腎がんの原因
- 腎がんの原因は①日常の生活習慣、②職業的な有害物質への接触、③長期の透析、④遺伝因子(VHL病気)などがあげられる
- 生活習慣因子の中でも肥満・喫煙・高血圧の3つは発癌と強い相関が認められている
これまでの研究から、腎がんの原因の多くは日常の生活習慣と深く関わっていることがわかっています。その他職業的なものとして、重金属や有機溶媒などへの長期間の接触もあげられます。
透析患者さんに関しては、透析自体ががんの危険因子となり、通常の方よりも15〜20倍ほど発生率が高くなることがわかっています(「透析患者さんと腎がん」参照)。
また、生まれつき発生しやすい場合もあります。遺伝的にがんを抑えるVHL遺伝子(フォン・ヒッペル・リンドウドウ病がん抑制遺伝子)などに傷がついている家系の方なども高い確率で発生することがわかっています。
ここからは、特に発病と密接に関わる生活習慣と腎がんとの関係をお話しします。
肥満
肥満は腎がんだけではなく、あらゆる病気の危険因子であることは知られています。下のグラフは、腎がんと肥満に関する近年のコホート調査(集団を一定期間追跡する調査)の結果です。調査開始時の身長と体重から算出したBMI(肥満度)を男女別にグループ分けして、腎がんの発生率を比較しています。
図1: BMI別の腎がんの発生率
男性では、BMIが21未満のグループと27以上のグループで発生率が高くなる傾向にあります。BMIが23-24.9のグループと比較すると、約2倍のリスクです。
女性では、BMIが21未満のグループでは発生率には特に違いがみられませんでしたが、BMIが25以上のグループの発生率が約1.6倍高くなっています。
日本肥満学会の肥満度判定基準は、BMIが18.5〜25未満を標準体重、25以上を肥満としています。つまり、肥満であればあるほど腎がんのリスクは高く、特に男性に関しては “やせ”でもリスクが高いと言えます。 高脂肪食を長く摂り続けて肥満になると、血液がドロドロになり血液を濾過する働きがある腎臓に負担がかかります。その結果リスクが高まります。
喫煙
喫煙者と非喫煙者を比較した複数の研究を取りまとめた結果では、喫煙者の腎がんのリスクは1.4倍です。また、喫煙本数も関係し、1日20本以上の喫煙を続けているヘビースモーカーのリスクは1.5〜2.5倍と報告されています。
さらに、喫煙者はがんが進行した状態で見つかることが多いため、予後が悪いという報告もあります。
タバコには遺伝子を傷つける発がん物質が数十種類含まれています。これらが排出される経路で糸球体の近くにある尿細管で発がんを引き起こしていると言われています。
高血圧
高血圧による腎がんの発生のはっきりとした理由はわかっていませんが、動脈硬化などによって引き起こされる腎実質の炎症が関係するのではと考えられています。
高血圧の場合、正常な範囲の血圧の方に対して腎がんのリスクは1.4〜2.5倍と考えられています。また、収縮期血圧(最高血圧)が高いほどリスクが高くなるという報告もあります。
糖尿病
糖尿病によって引き起こされる高血圧や肥満は腎がんの原因となります。また、糖尿病の3大合併症の腎不全、透析による後天性多発嚢胞腎(ACDK)も高い発がん率であることは知られています。これらのことから、糖尿病は間接的ではありますが、腎がんの発病に関わりがあることは間違いありません。
近年の追跡調査の結果では、糖尿病にかかったことがある場合は、ない場合に比べて男性では約1.9倍、女性では約1.4倍という報告もあります。
その他
大腸がんの場合は高脂肪・高蛋白はリスクが高くなり、食物繊維を多く含む野菜や果物はリスクを下げると考えられています。腎がんと食生活の関係ははっきりとわかっていませんが、大腸がんと同じ傾向があるとしている研究もあります。
飲酒においては、適量のアルコールを摂取するとリスクが減るという報告もあります。つまりアルコールには腎がんの予防効果があると言えますが、飲酒に伴う多くの弊害を考えるとあまりおすすめはできません。
運動に関しては、運動不足自体が腎がんの原因だとははっきりしていません。しかし、肥満が強い危険因子であることを考えると、身体を動かすことは腎がんの予防として十分期待できると言えるでしょう。
図2:生活習慣と腎がん発症リスクの関係のまとめ
生活環境因子 | 相関 | リスク比 |
---|---|---|
肥満または“やせ” | 強い | 〜2倍(標準体重(BMIが18.5〜25)を超える肥満、男性の場合は“やせ”にも注意) |
喫煙 | 強い | 1.5〜2.5倍( > 20本/日) |
高血圧 | 強い | 1.4〜2.5倍(収縮期血圧 > 160mmHg) |
糖尿病 | 可能性あり | 1.1〜1.6倍 |
生活習慣の改善は、腎がんに限らずあらゆる病気の予防になります。
腎がんにならない・早期発見のために
「腎がんの原因」でもあげた通り、腎がんの原因は①日常の生活習慣、②職業的な有害物質への接触、③長期の透析、④遺伝因子などがあげられます。特に発がんは生活習慣と密接に関わっていることがこれまでのコホート研究(集団を一定期間追跡する研究)で明らかになっています。
生活習慣の中でも、肥満、喫煙、高血圧は発がんに強く関係します。
腎がんの原因をよく知り、早い段階で注意し、ご自身をコントロールすることが、腎がんの予防の第一歩として非常に重要です。
全ての方
- 肥満
- 太り過ぎ、痩せすぎに気をつけ、規則正しいバランスの取れた食生活を
- 喫煙
- 喫煙は腎がん以外の多くの疾患の原因でもあるため、健康のために禁煙を
- 高血圧
- 高血圧:正常な範囲に収まるように適切な血圧コントロールを
透析患者さん、VHL病の方または疑いがある方
超音波検査やCTなどの定期的な画像検診を心がける
画像検査によるスクリーニングは透析施設の半数という報告もありますが、透析患者さんには積極的に検査を受けていただきたいです!
参考
- 松本 一宏、大家 基嗣『疾患別からみた生活習慣とがん 腎がん』成人病と生活習慣病:日本成人病(生活習慣病)学会準機関誌 45(10), 1242-1247, 2015-10 東京医学社
- メジカルビュー社『腎癌のすべて 基礎から実地診療まで』改訂第2版 (2014/3/27)
- 日本泌尿器科学会『腎癌取扱い規約 第4版』金原出版 (2011/4/20)
- 『インフォームドコンセントのための図説シリーズ 腎がん 改訂版』医薬ジャーナル社 (2011/11)
参考サイト
- 国立がん研究センター 社会と健康研究センター「肥満度(BMI)と腎がんとの関係について」 (2016/7 アクセス)
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