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腎がんの基礎知識(後編)
〜がんの種類、病状、がんのステージ〜
2016.9.8
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もくじ
腎がんの種類
- 淡明細胞がんが全体の7割以上を占める
- がんの類型は治療と予後に影響を与える
腎がんはがん細胞を顕微鏡で見ることにより、いくつかの組織型に分類され、それぞれの治療と予後も異なります。最も多いのが「淡明細胞型腎細胞がん」で、腎がん全体の7割以上を占めています。 頻度が低いものの良性の腫瘍ができることもあります。良性であることが確実で、腫瘍が小さい場合は手術をせず経過観察することもできます。
図1:代表的な組織型の種類
悪性腎腫瘍 | 特徴 |
---|---|
淡明細胞型腎細胞がん | 腎がんの中で最も多く7割以上を占める |
多房嚢胞性腎細胞がん | 多数の嚢胞からなる構造の腫瘍、予後は比較的良好 |
乳頭状腎細胞がん | がん細胞の形状からtype1とtype 2と分類される、type 1はtype 2と比較して予後が良好 |
嫌色素性腎細胞がん | 淡明細胞がんに比べ予後が良い |
集合管がん(ベリニ管がん) | 腎がんの中では1%とまれな腫瘍、悪性度が高く予後不良 |
Xp11.2転座腎細胞がん | 小児、若年者の腎がんでは頻度が高く、リンパ節転移も多く、予後は一般的に不良 |
良性腎腫瘍 | 特徴 |
腎血管筋脂肪腫 | 脂肪の成分を多く含むことが多く、大きくなると出血することがある |
オンコサイトーマ | 境界がはっきりした暗赤色の腫瘍 |
腎がんの病状
- ほとんど症状がない状態で発見されることが多い
- 腎がんの3大病状は「血尿」「腹部のしこり」「わき腹の痛み」
腎がんは比較的ゆっくり進行するため、がんが小さなうちはほとんど自覚症状はありません。最近では早期発見が可能となり、病状がなく偶然見つかるケースが多くなりました。しかし、がんが大きくなると病状が現れます。腎がんの3大病状は「血尿」「腹部のしこり」「わき腹の痛み」とされています。
全身病状
腎がんによる全身病状は転移の有無にかかわらず現れることがあります。早期ではほとんど病状はありませんが、がんが進行するほど出現頻度が高くなります。発熱、全身の倦怠感、貧血、高血圧、体重減少などがあり、これらは腎がんに特徴的なものではありませんがしばしば認められます。全身病状を伴う場合は、予後が悪い傾向にあることがわかっています。
原発巣による局所的な病状
腎がんが進行して、尿の通路である腎盂や腎杯などにがんが広がってくると血尿が出ます。急に尿が真っ赤になったり、尿が止まったりすることもあります。血のかたまりが尿管につまると、わき腹の痛みが現れることもあります。
がんが大きくなると、おなかやわき腹、腰や背中などが痛くなります。
転移による病状
腎がんが特に転移をしやすい場所として、肺や骨、リンパ節があげられます。
肺に転移すると咳や血痰が出たり、呼吸困難などをきたすこともあります。骨に転移すると転移した場所の骨の痛みを伴います。また、転移によって骨がもろくなります。このような転移先の症状により偶然腎がんが発見されるケースもあります。
腎がんの病期(ステージ)
- 腎がんの病期(ステージ)は、腎がんの大きさと広がり、リンパ節への転移の程度、遠隔(他の臓器)転移の有無の3つの組み合わせで判定し、4段階に分類する
国際対がん連合(UICC:Union for International Cancer Control)に準じた分類、TNM分類が主に使われています。腎がんの大きさと広がり(T)、リンパ節への転移の程度(N)、遠隔(他の臓器)転移の有無(M)の3つで病期を分類し、その組み合わせでステージが決定されます。
この病期分類は予後と非常に強い関わりがあります。そのため治療方針だけではなく、治療後のフォローアップ(経過観察)方針にも判断材料として用いられます。
図2:腎がんの進行度(病期分類/TNM分類)
図3:腎がんの進行度(病期分類/TNM分類)の詳細
【T】腎がんの大きさと広がり | ||
---|---|---|
T1 | T1a | がんの直径が4cm以下で腎臓にとどまっている |
T1b | がんの直径が4〜7cm以下で腎臓にとどまっている | |
T2 | T2a | がんの直径が7cm以上で10cm以下、腎臓にとどまっている |
T2b | がんの直径が10cm以上で腎臓にとどまっている | |
T3 | T3a | がんが腎静脈または周囲の脂肪組織まで及んでいるが副腎には及ばずゲロタ筋膜※を越えない |
T3b | がんが横隔膜より下の大静脈内に広がっている | |
T3c | がんが横隔膜より上の静脈に広がっている、または大静脈に及んでいる | |
T4 | がんがゲロタ筋膜※を越えて広がっている | |
【N】リンパ節への転移の程度 | ||
N0 | リンパ節転移なし | |
N1 | リンパ節転移の数が 1個 | |
N2 | リンパ節転移の数が 2 個以上 | |
【M】遠隔(他の臓器)転移の有無 | ||
M0 | 遠隔転移なし | |
M1 | 遠隔転移(肺、肝臓、骨など)あり |
※ゲロタ筋膜:腎臓の周囲を包む外側の膜
図4:腎がんのステージ(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ)
T:Tumor | N:Lymph Node | M:Metastasis | |
---|---|---|---|
ステージⅠ | T1 | N0 | M0 |
ステージⅡ | T2 | N0 | M0 |
ステージⅢ | T3 | N0 | M0 |
T1〜3 | N1 | M0 | |
ステージⅣ | T4 | Nに関係なく | M0 |
Tに関係なく | N2 | M0 | |
T、Nに関係なく | M1 |
私の腎がん発見時は、T1a N0 M0、ステージⅠでした。
図5:【参考】腎がんの大きさと広がりイメージ
図6:【参考】転移の広がり方
がんは、リンパ系、血液を介して広がります | |
---|---|
リンパ系 | がんは発生した場所からリンパ系に侵入して広がります。リンパ管を介して体内の他の部分にさらに移動します |
血液 | がんが発生した場所から、がん細胞が血液に乗ってがん細胞が他の臓器に到着し、そこで大きくなってきます |
次回は、腎がんにならない・早期発見のために知っておきたい「腎がんの原因」です。腎がんの原因の多くは日常の生活習慣と深く関わっています。
参考
- メジカルビュー社『腎癌のすべて 基礎から実地診療まで』改訂第2版 (2014/3/27)
- 日本泌尿器科学会『腎癌取扱い規約 第4版』金原出版 (2011/4/20)
- 『インフォームドコンセントのための図説シリーズ 腎がん 改訂版』医薬ジャーナル社 (2011/11)
- 浜松医科大学医学部 泌尿器科学教室 教授 大園 誠一郎 先生 監修『 知っておきたい腎がんの話 〜腎がんと診断された方に〜』バイエル薬品株式会社
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