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腎がんの基礎知識(前編)
〜病気の全体像〜
2016.8.22
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はじめに:高齢化を背景に増え続ける“がん”
2016年7月、国立がん研究センターは「2016年に新たにがんと診断される人は101万200人」「同じく2016年にがんで亡くなる人は37万4000人」と予測結果を発表しました。いずれも過去最高となり、実際の統計でもがんの患者数は1970年代から一貫して増え続けています。腎臓がんはがん罹患全体の約2%と言われていますが、腎がんも例外ではありません。 病気の全体像をよく知り、予防と早期発見に努めましょう。
腎がんはどんな病気?
- 患者数は増えているものの、検診の普及と進歩で早い段階での発見が増えたことも患者数増加の一因
- 腎臓の外側全体の尿を作る部分「腎実質」にできる「腎細胞がん」が一般で言う“腎がん
- 病状のない腎がん(偶発腎がん)が増加している、多くは早期のがんであるため予後が良い
腎がんは症状が現れにくく、定期検診や人間ドッグなどの画像検査でたまたま見つかるケースが多いがんです。かつては発見されたときには進行している場合が多かったのですが、検診の進歩と普及で早期発見が可能となりました。腎がんには早期発見の指標となる腫瘍マーカーはありません。血液検査で見つけることはできないため、超音波検査やCTなどの画像検査での発見が基本です。
腎がんができる場所
腎臓は、外側全体の尿を作る部分「腎実質」と、中心の「腎盂」に大別されます。「腎実質」にできる「腎細胞がん」が腎臓にできるがんの8〜9割を占め、これが一般で言う“腎がん”です。腎細胞がんは尿細管の細胞ががん化したものです。
図1:腎実質に発生する腎細胞がん
偶然見つかる腎がんは病状が軽く予後が良い
たまたま見つかる腎がん(偶発腎がん)は病状がなく、最近では発見されるすべての腎がんの1995年以降は7〜8割以上と、何らかの病状を示すことで発見されるがん(症候腎がん)より多くなっています。
図2:腎がんの初発時の病状の有無の推移(東京女子医科大学病院)
また、偶発腎がんの大部分は病期(ステージ)Ⅰ、つまりがんが小さく、悪性度も低い傾向にあります。このことから、病状がない状態での早期発見がいかに重要かがわかります。
図3:腎がん発見時の病期(ステージ)の割合
偶発腎がんの多くは早期のがんであるため、できるだけ腎臓の機能の残すための手術が考慮されます。そのため予後は良好で、手術後の5年生存率は9割以上です。
図4:偶発腎がんと症候腎がんの術後の生存率(東京女子医科大学病院)
腎がんの手術は、がんの腎臓をまるごと摘出する方法と部分切除の2種類がありますが、小さい腫瘍に関しては部分切除が標準的になってきました。術後の慢性腎臓病(CKD)の予防にも有効だと考えられています。
腎がんの患者数
- 男性は女性の2倍程度の頻度で腎がんになりやすい
- ここ20年ほどで患者数は約3倍に増加
- 増加の原因は生活習慣の変化や高齢化の他に、検診の進歩と普及も影響していると考えられる
腎がんに限らずがんになる頻度は一般的に高齢になるほど高くなります。
わが国で腎がんと診断されている人(罹患数)は、腎盂がんを含めて2012年時点で約23万人です。約2:1で男性に多く、男性は女性の2倍程度の頻度で腎がんになりやすいことがわかります。
日本では欧米に比べて腎がんは少ないとされていましたが、1980年代以降増加の一途をたどり、ここ20年ほどで患者数は約3倍に増えました。この背景には食生活の欧米化や生活習慣の変化、高齢化などが関係しているようです。また、検診の進歩と普及で偶然見つかるケースが増えたことも増加の原因と考えられます。
図5:腎がん(腎盂を含む)になった人の推移
(1975〜2012年)
図6:腎がん(腎盂を含む)になった人の年齢別の割合
(1975〜2012年)
次回後編は「がんの種類、病状、がんのステージ」です。
参考
- メジカルビュー社『腎癌のすべて 基礎から実地診療まで』改訂第2版 (2014/3/27)
- 日本泌尿器科学会『腎癌取扱い規約 第4版』金原出版 (2011/4/20)
- 日本泌尿器科学会 『腎癌診療ガイドライン 2011年版』金原出版
- 柄川 昭彦『腎がんの基礎知識 手術で治癒が目指せる腎がん。新薬も続々 腎がんの病気と治療を確認しよう』がんサポート 12(1)=136:2014.1 エビデンス社
参考サイト
- 国立がん研究センターがん情報サービス がん登録・統計[がん情報サービス](2016/7 アクセス)
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