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透析患者•よしいなをきの日常生活

【第9話】趣味のはなし・小旅行

2013.12.20

文:よしいなをき

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透析を受けている方には、積極的に旅行に行かれる方と、引っ込み思案になってしまって旅行を敬遠される方がいらっしゃるというはなしを聞きました。旅行は中2日を利用して行く方法と、旅行先で透析を受ける施設を事前に予約して行く方法の2つがあり、後者の場合ですと事前に準備が必要となり、手間がかかるという印象があるかもしれません。

旅行の魅力は、見知らぬ土地を訪ねたり、自然に触れたりすることで普段のストレスを解消し、日常を離れて気持ちをリフレッシュすることができることだと思います。また、私、よしいなおきは好きな作家の小説舞台となった土地を訪ね、作者の心象描写の原点に触れるということをすることがあります。旅行の楽しみ方はさまざまですね。

今回、提案するのは中2日を利用した小旅行です。日帰りでもできる手軽な旅行を通して透析患者の方が旅行中、どういうことに注意すればいいかを触れていこうと思います。手軽な小旅行を体験して、この先、遠くの旅行へと続くステップアップになればと思います。

【出かける前の大事な確認】
これだけは忘れないでください。交通などのアクシデントで滞在がのびないとも限りません。いざという時は旅先で透析ができるようにしておきます。

  • 旅行期間中に飲む薬(少し多めに持っていく)
  • 健康保険証
  • 特定疾病療養受療証
  • 身体障害者手帳
  • 人工透析緊急カード(透析条件などが書かれたもの)
  • おくすり手帳

中2日を利用しての小旅行ですので、手軽に行ける場所を探してみましょう。私が住む場所の最寄り駅は京浜急行の平和島駅です。通称「赤い電車」の京浜急行は品川から神奈川県沿岸部へとのびており、横浜や横須賀、三浦海岸などへ手軽に出かけることができます。 私は透析を始めてから毎年、年に数回はこの手短に行ける場所へ奥さんと長男のハヤトの3人で小旅行をしています。人工透析で長い時間、拘束されていることの反動なのかもしれません。

品川から京浜本線快特でおよそ50分、堀ノ内で一度乗り換えて浦賀で降ります。ここからバスで少し移動したところに観音崎自然公園があります。のんびりと海の景色を見ながら、石畳の道が続く散策コースを歩いてみましょう。

この写真は、先月11月に行ったときに撮った写真です。

観音崎自然公園

冬の海だからでしょうか。とても東京湾の海の色とは思えないような青い色です。幸い風も無く、日差しもぽかぽかと気持ちのいい天気でした。意外にも近場でもこんなにも綺麗な海が見られるとは思いませんでした。写真は「たたら浜」という名前の浜辺で、初代ゴジラが上陸した場所とのことです。

たたら浜に隣接して観音崎自然博物館があります。ここは、観音崎周辺に生息する生物や植物などを展示しています。古くからある博物館で展示品は手作り感があふれます。この施設内の庭園から東京港を一望することができ、行き交う数多くの船を見つけることができます。ここから見える、天気がいい日の海と空の景色は最高ですね。また、ここの館長さんは大のコオロギ好き。毎年コオロギ相撲の大会を開催していて、コオロギを飼うための特別なカゴや、コオロギ観賞用ケースなど、ちょっと珍しい展示が見られます。

観音崎自然博物館

博物館の隣にはレストラン・マテリアがあり、ここへ来る時は必ずお昼の時間に間に合うように調整したいところです。肉、魚の料理、パスタなど洋食からランチメニューを選べ、量は透析患者にも適量くらい。塩味控えめで味は抜群です。休日のお昼時は結構混むので、お昼少し前に来て、東京湾の景色を見ながら美味しく食べるのがベストです。

【旅先での食事について】
旅先での食事はリンカリウムの摂取に気をつけたいところです。朝、昼、夕の3食トータルでどれくらいになるか気をつける必要があります。特に海産物が美味しい土地ではリンの摂取に気をつけます。一度、千葉の鴨川に行ったときの旅館で「舟盛り」が出たときは焦りました。こういうときは家族にできるだけ食べてもらうようにしたり、必要があれば事前に量を少なくしてもらうよう、旅館の方に伝えた方が良いかもしれません。

自然博物館を後にして散策コースを進みます。途中、小さなトンネルを通っていきますが、トンネルの表面が途中から荒々しく削られたものになっていきます。ここは人力によって彫られた素彫りのトンネルです。

散策コース館

戦時中に作られ、物資運搬に使った比較的に新しいものですが、この観音崎周辺には古くから作られたトンネルが数多く存在しています。

海辺の景色を見ながらしばらく石畳の道をのんびりと歩きます。途中、海を背にして山の方へ入っていくと観音崎灯台があります。ここへはやはり快晴の時に来たいものです。灯台の高さから見える眺望は素晴らしく、雲のない時には千葉側の房総半島までを観ることができます。位置的には木更津の辺りでしょうか。

観音崎灯台

【ペース配分について】
旅行となると気分も楽しくなってしまい、無理をして体調を壊すということもあると思います(私は鴨川シーワールドではしゃぎすぎて気持ちが悪くなり、シーワールド事務所の休憩所を借りるという失態をしてしまいました)。自分の体力に合わせて無理のない行程を検討しておくと安心です。今回紹介しているのは散策コースとなっているので、途中、休憩場所などは事前に決めておくことができます。また、夏場の暑い時などは水分補給などしっかりできるように準備しておく必要があります。

さらに海岸線を歩いていくと、途中からボードウォークと言って木の板を並べた道が続きます。乾いて固まった砂を踏みしだき、海風を感じながら歩いていきます。

散策コースの終わりは横須賀美術館へ到着です。「環境全体が美術館」というコンセプトで、一面ガラス張りの建物が見えてきます。主に日本画の展示が多く、静かな落ち着いた雰囲気を味わえます。展示会のカタログや絵はがきなど、ミュージアムショップではお土産を買うことができます。

横須賀美術館から少し行くと、観音崎京急ホテルの入浴施設「SPASSO」があり、ここでは眺望露天風呂のサービスがあります。海を観ながら疲れた身体を癒すのに最適です。

【入浴の注意事項】
大風呂を利用する場合は、シャント感染の危険を避けるため、入浴後は石けんでよく身体を洗いシャワーで洗い流しましょう。

小旅行のポイントは、自分の体力やコンディションに合わせたペース配分だと思います。透析があるから旅行は無理だとは考えずに、日帰りくらいの気楽さで行ける場所をどこか見つけておくのがいいですね。近場であっても、色々な場所に数行く楽しみというものもあります。行ったことの無い土地は無数にありますから、ちょっと足をのばすつもりで出かけてみてはどうでしょうか。きっと新しい発見があると思います。でも、出かるときは安全には気をつけて、小旅行、楽しんでみてください。

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よしいなをき

よしいなをき
透析はしていますが普段はスポーツ自転車に乗って 体を鍛えています。
仕事は、平凡なサラリーマンですが、透析の時間を利用して、ブログを書いたり、小説を書いたりしています。

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