透析患者•よしいなをきの日常生活腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
【第1話】リンが上がった!
2013.4.1
緑の文字の用語をクリックすると用語解説ページに移動するよ。
じんラボ をフォローして最新情報をチェック!
我々透析患者は、合併症を避けるため定期的な血液検査を行っています。血液検査によって一番コントロールしなければならないのが食事だと思うのですが、カリウムの食事制限は、タンパク質の制限よりは難しくはないと思います。保存期が長いとタンパク質の制限が厳しく、これに合わせて、ついでにリン、カリウムの制限を行うという感じでしょうか。私は、どちらかと言えばリン、カリウムの制限はそれほど難しいとは思っていませんでした。…実際に、上がってみるまでは。
突然、血液検査でリンが上がっていると言われました。数値もこれまでに比べるとかなり高く間違いなく異常値です。医者は常套句のようにこんなことを言います。
「リンは口から以外に入ってくることはない」
つまり、自分の口以外から入ることはないのだから食事の仕方に問題がある。何かリンの高い食べ物をどこか食べたのだから、口にしないように気を付けるようにと。
ところが、私の場合、身に覚えがないのです。これまで保存期の時にタンパク質と共に、リンやカリウムの制限も長くしてきました。リンだったら、小魚だとか肉の内臓部分などリンの高い食品というのは頭に入っています。カリウムでしたら生野菜は口にしません。湯通ししたものと決めています。それに加えて、怪しい、と思われるものは口にしないのです。食生活を変えないということも食事の制限を続ける重要な要素だと思っています。急に食べるものを変えたり、目新しいものを口にするときは少し警戒しながら口にします。リンがどれくらい含まれているのかはっきりわからないときは、口にしないということもしています。なので、なぜリンが急に上昇したのか分からなかったのです。
しかし、医師が言うとおり、「リンは口以外から入ることはない」ということは事実なのでしょう。そこで、食事の記録を一週間つけることにしました。その際、医師から言われたことは、加工食品は口にしないということでした。
リンを摂取しないためには加工食品を避けるというのは、よく言われることです。ですが、現代の生活において、自然食品のみから調理を行い、これを食するというのは非常に現実味のないお話です。確かに、ベーコンやかまぼこ、練り物などの加工食品は、形を維持するために固形剤としてリンを使っています。これらにリンが高く含まれているということは理解できます。ですが、スーパーなどに行けば一目瞭然ですが、加工食品と加工されていない食品とでは売り場面積を比較すればどちらが多いのかすぐにわかります。また、お惣菜というは江戸時代のころからあるとのことです。働く人たちは、古くからこうして作られた食材を食べていました。ですから、現代において加工食品を口にしないというのは非常に現実味のない話なのです。
とはいえ、一週間だけチャレンジしてみました。朝、昼、晩と加工食品は口にしません。材料を事前にそろえ、休日に調理を半分すませ、これを冷凍庫で保存し、食べる前に火を通して食べました。これはかなりの手間です。まずお弁当がかなり大変でした。お弁当のおかずというのは冷凍食品を使うのが当たり前です。時間に制約がある中、冷凍食品が無かったら本当に厳しいのです。なので先に書いたように、冷凍食品を作ったんですね。こういうものを事前に作っておかなくては、加工食品を口にしないということは実現できないのです。
鳥、豚、牛、魚と材料を用意し、これらを簡単に味付けしてジップロックにしまっておき、冷凍庫で保存しました。後は卵を焼いてみたり、野菜を煮込んだものを入れてみたりしました。一週間続けるだけでも相当の労力です。
さて、1週間の努力の後、検査はどうだったのかというとリンの値は下がりませんでした。原因ははっきりしません。医師からは、もう一週間、同じ食事を続けるように言われました。合わせて、リンの吸着剤も増やすことにしました。
次の1週間後、リンの値は変わりませんでした。原因は食事以外にあるのではないかと、私は思うようになります。そういえば、リンの値が上昇する直前、何か薬品の量を変えたりしなかっただろうかと思い立ち、そこを医師に話をすると、確かにその時期に、副甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬の量を増やしていました。実はこの薬、人によってはリンが増えてしまうことがあるみたいなのです。早急に薬の量を元に戻したところ、リンの値は正常値に戻ったのです。
確かに、肉の食べ過ぎや、おでんを食べてしまったとか、豆腐料理、ピザ、チーズフォンデュなどリンの多いものを一時的に沢山食べたことで、検査の結果に影響が出ることはあると思います。原因がすぐに特定され、これを改めてすぐに改善してくればいいのですが、私のように原因が分かりにくい場合もあります。今回は透析器を通じて投与する薬だったこともあり、すぐには気が付くことができませんでしたが、経口薬と同様に、薬の副作用など患者側でもきちんと理解しておく必要があるのかもしれません。
この記事はどうでしたか?
- 【第24話】透析を受けるようになって大変だったこと、良かったこと
- 【第23話】息子が親の透析をどう受け止めてきたのか振り返る
- 【第22話】よしい家の事情
- 【第21話】透析室スタッフさんのこと
- 【第20話】入院の心構え
- 【第19話】患者スピーカーとして講演しました
- 【第18話】自分にとって大切なものを見つける
- 【第17話】私のオフシーズン
- 【第16話】ボクの保存期〜今、CKDに生きる人たちに・6(最終回)
- 【第15話】ボクの保存期〜今、CKDを生きるひとたちに・5
- 【第14話】ボクの保存期〜今、CKDを生きるひとたちに・4
- 【第13話】水分管理について
- 【第12話】ボクの保存期〜今、CKDを生きるひとたちに・3
- 【第11話】ボクの保存期〜今、CKDを生きるひとたちに・2
- 【第10話】ボクの保存期〜今、CKDを生きるひとたちに・1
- 【第9話】趣味のはなし・小旅行
- 【第8話】趣味の話し・文章を書く
- 【第7話】趣味の話し・写真
- 【第6話】趣味の話し・自転車
- 【第5話】人工透析で生きるということ
- 【第4話】家族がいてくれたこと
- 【第3話】安心して食べられるということ
- 【第2話】Y先生のこと
- 【第1話】リンが上がった!
ご意見をお寄せください