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【第17話】私のオフシーズン
2014.8.18
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家族で自転車に乗ることは多いのですが…
以前「趣味の話・自転車」にも書きましたが、自転車に乗ってよく家族で出かけます。
写真は東京世田谷区にある等々力渓谷です。電車で行く場合は東急大井町線「等々力駅」から徒歩2分ですが、私の家からは自転車で1時間くらい、第二京浜から多摩川大橋で多摩川サイクリングロードに入り、二子玉川の少し手前まで走行すれば到着です。
この写真は2011年8月頃に撮ったもので、この時は等々力渓谷に到着するまではかなりの暑さでした。一応汗が乾きやすい綿のTシャツに半ズボンという服装で出かけましたが、強い日差しの中、全身汗まみれになるほどの猛暑でした。
ところが等々力渓谷の中に入ると一変して涼しくなります。写真の通り自然も多く、水辺の景色がとても奇麗な、都内でも数少ない納涼スポットです。不動の滝から流れ落ちる水音を聞きながら、木々に囲まれた小道を散策していると自然に汗が引き、心地よい風の通りを体に感じることができます。
こうした涼しげな場所を訪れたり、季節の良い時期のサイクリングは本当に気持ちがいいのですが、猛暑の時期にひたすら自転車走行を続けるのはかなり危険です。
夏場の激しい運動は危険
以前の私は季節に関係なく、ひたすら自転車で走行していました。
風を感じる爽快感。そして全身汗まみれになりながらも走り切ったときの達成感。足が強ばってもうこれ以上ペダルを踏むことができないというギリギリまで走り込み、帰宅後、ガチガチになった体を畳の部屋に投げ出したときの解放感。どれをとっても気持ちが良かったのです。特に夏の暑い日の自転車走行はやめられないとも思いました。
爽快感や達成感の他に自転車走行がやめられない理由に、大量に汗をかくということもありました。もちろん水分補給をしながら走りますが、夏は飲む量以上に汗をかくのです。透析を受ける前に測定した体重がドライウェイトとほぼ同じということもありました。その時は「体重が増えなくてラッキー」くらいに私は思っていましたが、思わぬしっぺ返しを食うことになります。シャントが閉塞してしまったのです。
おそらく体の水分が急激に抜け、血液がドロドロになって固まりやすかったのでしょう。元々シャント血管が細かったということもありましたが、次第に脱血が悪くなっていきました。途中で血流量を180mL/minまで下げたりしましたが、最後には完全にシャントに血液が流れなくなりました。この時、初めて経皮的シャント拡張術(PTA:Percutaneous Transluminal Angioplasty)を受けました。それ以来、シャントの作り直しをするまで年に3回はPTAを受けていました。
透析患者にとって熱中症は大敵
シャントの閉塞の危険のみならず、夏の暑さは我々透析患者にとっても大敵です。
夏に起こる熱中症の原因は、暑さで脳の視床下部の機能がうまく働かなくなり、汗が止まってしまうことにあるそうです。人間の体は汗をかき、その汗が蒸発するときの気化熱によって体温を下げるようになっていますが、今年の夏も多くの人が熱中症にかかり救急車で搬送されるというニュースが流れました。透析患者さんで汗をかかなくなる人は多いと思いますが、汗が出ないことで体に熱がこもってしまい、健康な人よりも熱中症にかかりやすいのではないかと思います。
かくいう私も、今では家でおとなしくしていることが多いです。最近は幸いにもシャントが閉塞することは無くなりましたが、外を少し歩いても本当に暑いですね。
時々外出が続いた時など、体に熱がこもったようになることがあります。このようなときはアイスバックという氷嚢を使っています。アイスバックは激しい運動をした時、熱のこもった筋肉を冷やしてその炎症を和らげるためのものですが、体に熱がこもってだるくなってしまった時は首の回りなど血流の多いところに当てています。そうすると全身に冷やされた血液が流れるので体温がうまく下がってくれるようです。
秋の訪れを待ちわびる
まだまだ暑い日が続きます。まぶしい日差しが降り注ぎ、あまり風も吹かないとモワっとした空気が全身を包みます。アスファルトの地面からの太陽の光の反射も容赦なく体を焼いていきます。
こうなると自然に家に居る時間が増え、クーラーは付けっぱなし。自宅で原稿を書いていると座りっぱなしの時間が多く、体が冷やされて体調を崩してしまいそうです。そのように家でじっとしていると、今度は体が激しく動きたい、どこか遠くまで走りたいと要求してきます。
ですがもう、この暑い季節の自転車走行は諦めました。有酸素運動を続ければコレステロール値や血圧など改善することは自分の体で分かっていますが、普通に健康な人でさえもこの猛暑の中で倒れたりするのです。野球にオフシーズンがあるのと同じように、私はもうこの季節は自分にとってのオフシーズンだと決めました。
今はただ暑い夏が遠ざかり、穏やかな秋の訪れを待ちわびているところです。涼しい季節が訪れたら、かつて家族で訪れた等々力渓谷にまた遊びに出かけたいと思います。
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