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【第21話】透析室スタッフさんのこと
2015.6.1
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透析中スタッフの方に私から話しかけるのは、業務中ということもあって遠慮するようにしているのですが、どういうわけだかよく話しかけられるのです。普段の体調の確認ということであればそれは当然ですが、雑談としても私はよく話しかけられる方だと思います。
以前通っていたクリニックでは年齢の近いAさんから「まるちゃん(私の本名からのニックネーム)」と、よく声をかけられていました。当時は透析室にDVDプレイヤーと映画のソフトを持ち込んでいたことから、好きな映画の話題などで話すことが多かったです。お互い映画俳優だとか監督の名前を覚えるくらいの映画マニアで、透析が終わって止血している間などに「ロバート・デ・ニーロの『タクシードライバー』は観た?」とか「『レナードの朝』は良いよ」とか、よく話していました。それからお互いに歳の近い子供がいたということもあって、ゴールデンウィークや夏休みの前になると「今度は家族をどこに連れて行く? 」といった相談もしていました。
当時私のシャント血管はとても細くて穿刺しにくい血管でした。もう誰が悪いとかではなくて、本当に刺しにくい血管だったのです。成功する数よりも失敗する数の方が多い程でした。そんな状況でもAさんは穿刺が手早く、また失敗したとしてもそのリカバリーも早かったのです。痛いのは本当に瞬時で、神業のように針の位置をシャント血管に収めました。そのとき必ず申し訳なさそうな表情で「ごめんね」と言ってくれました。そんな彼なので、私は打ち解けていろいろな話ができたのだと思います。
仲良くなったスタッフの方でもう1人思い出すのは、男性看護師のBさんです。iPadで自分が撮影した写真を眺めていたときに「まるさんって、もしかしてカメラのこととか詳しいですか? 」と話しかけられました。
彼は透析施設で働きながら、休日などを利用して音楽活動しています。自主制作で音楽CDを出すのだが、ジャケットの撮影をしてくれる人を探していると言うのです。なかなか面白い相談だと思いカメラマンを引き受けました。
有楽町と新橋の間のJRガード下や東京駅周辺のビジネス街、上野駅の周辺と、丸1日ロケ地を彼に引き回されてシャッターを切りました。朝から晩まで屋外での撮影を連続して行うのは初めてのことでした。この時は刻々と光の加減が変わっていくのでカメラの調整が難しい部分もありましたが、夕刻の街明かりの影響からなかなか感じの良い写真を撮ることができました。「音楽のイメージに合う」と言って彼は随分とその写真を気に入ってくれたようです。
後日透析中の私にそっと近づいてきたBさんは、出来上がったCDを手渡してくれました。写真は単にジャケットとして使われていただけではなく、ミニフォトブックの体裁できちんと製本されたものでした。ジャケットの裏側には「Photography by:Naoki Yoshii」と書かれているのを見た時はとても嬉しかったです。
最近では、私から「時間のある時にでも読んでみてください」とじんラボの記事をコピーしてスタッフの方に渡すことがよくあります。その感想を伝えていただけることもあるし、「できたら『よしい家の食卓』の内容を患者さんに話して欲しい」と頼まれたりします。
前回の『入院の心構え』でも少し触れていますが、今の透析室のスタッフさんたちとは、看護師長さんを初め、本当に仲良くさせていただいています。
特に仲が良いのは看護師のCさんと臨床工学技士のDさん。二人とも大のマンガ好きで、私が透析室に持ち込むマンガの単行本をきっかけによく話をするようになりました。
「あ、このマンガの作者の○○という作品がすごく好きです」とか「実は家に置けなくなるくらいマンガがあって…。最近はもっぱらタブレットで読んでいます」という話をします。
勤務中にこんなに盛り上がっても大丈夫かなと(かなりマニアックすぎる話題なのです)、できるだけ週末の終わりのゆとりのある時間に話すようにはしていますが、最近これは「透析マンガ部」に誘った方がいいかなと感じています(「透析マンガ部」についてはまた後日改めて…)。
私は割と転院を繰り返している方なのですが(もちろんトラブルということではなく)、どの施設、クリニックに行ってもスタッフの方に仲良くしてもらえるのは本当にありがたいと思います。私が透析をあまり苦痛に感じないのは、こうした医療スタッフの方々が家族のように接してくれるからだと思います。直接伝えるのは少し照れるし、今日はこの場をお借りして…いつも本当にありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いいたします。
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