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よしい家の食卓【第1回】
2014.11.4
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私、よしいなをきはこれまで食事管理や塩分管理はしっかりできているものと思い込んでいました。思い込みとは恐ろしいもので、時に本人だけでは気がつかないこともあります。
そこで、自分自身の食生活を見直すためにも『宿野部家の食卓』番外篇ということで、ちょっと趣向を変えた『よしい家の食卓』をお送ります。
実際にダメだった点や工夫した点などお役立ち情報を交えながら、「よしいなをきの食生活」の一部を紹介したいと思います。
夏が過ぎたというのに…
記念すべき第1回は「塩」の話です。下の写真で見るように塩の結晶はとても綺麗なのですが、これを摂りすぎると…。
夏が過ぎたというのに水分コントロールがあまりうまくいっていないようです。平日はそれほど問題無いのですが、やはり中2日空きの月曜日になると体が重いような、ダルいような感じがありました。前々から所長やカオリさんから「塩分を摂り過ぎているのでは? 」との指摘がありました。
まさかそんな…と、じんラボツールの『とうせきくん』(※「とうせきくん」は、血液検査の検査値などを入力しかんたんに管理・観察できる、血液透析を行っている方向けのWebアプリケーションです。ご利用には会員登録が必要です(無料)。)に入力したデータを見ると…。
…は、は、は(乾いた笑い)まさかどころではありません。2014年7月を省いてどの月も推定塩分摂取量は11g/日を超えていました。
「とうせきくん」での私の摂取量の目標値は10.5g/日以下なので、ほとんどの月でオーバーしていたことになります。6月など2g以上オーバーしていますから、油断すると大変なことになりそうです。
塩分の摂り過ぎは、左心室肥大という心臓の病気を悪化させ、動脈の柔軟性を損ない、高血圧の進行やナトリウム排泄に使われるカリウムの損失を招きます。
だから減塩は大切なんですね。それに普段から自分が何を食べ、塩分をどれくらい摂取しているか、しっかりと意識した方が良いようです。
※「とうせきくん」では推定塩分摂取量の目標値をドライウェイト(kg)×0.15g/日以下としています。
慢性腎不全(CKD)患者さんの塩分摂取量は3g/日以上6g/日未満が基準値であるとされていますが、小柄な方と大柄な方で1日に同じ量の塩分を摂取した場合、小柄な方の方が臓器に与える悪影響は大きくなるという調査結果も発表されています。
「じんラボ」は、基準値だけではなくその人の体重に合わせた目標値でのきめ細やかな管理が大切だと考えています。
さて、どうしたものか…
思い当たる原因は朝食で食べる納豆のタレをそのまま使っていることとか、比較的外食や持ち帰り弁当が多かったこともあるのかもしれません。お煎餅のつまみ食いも良くないですね。 保存期の時は蛋白質や塩分の制限と頑張っていましたが、このところ慣れが出てきたのかもしれません。まず、食事の摂り方から見直す必要があります。
そこでテーブルにこれを置くことにしてみました。
以下の2本を通信販売で入手しました。
どちらもスプレー式の調味料です。これらの商品は中身の液体を霧状にすることで、食べ物の表面に薄く広がるように吹きかけることができ、その効果で減塩を可能にしています。それぞれの商品の特徴を見てみましょう。
1)「昆布の水塩・海」
「水塩」というのはあまり馴染みの無い言葉かもしれませんが、最近は減塩の手法としてニュースなどでも取り上げられています。直接塩を振りかけるのではなく、水に溶いた塩水を料理に使うと少ない塩分で満遍なく素材に下味が付けられるというものです。
「昆布の水塩・海」は昆布の他に鰹節、干し椎茸、貝柱、干し海老などを加え塩分濃度を17%にした商品です。1回のスプレーに含まれる塩分は0.034gとのこと。仮に10回吹きかけても0.34gと1gを切る塩分量です。
煮込み料理の出汁として希釈して使うのはもちろん、蒸し野菜や焼き魚、肉料理など、料理の下味として調理前に吹きかけて使うことができます。試しに低カリウムレタスに3回程度吹きかけてみましたが、ほんのりとした塩味と各種出汁の香り・旨みが口の中に広がりました。
2)「スプレー醤油」
こちらはスプレー式の瓶に濃口醤油が入ったものです。減塩タイプの醤油ではありませんが、「昆布の水塩・海」同様、霧状に吹きかけることで減塩を実現しています。1回のスプレーに含まれる塩分は0.02gとのこと。仮に10回吹きかけても塩分は0.2gです。仮に朝、昼、夕食と3食でそれぞれ10回ずつ吹きかけたとしても0.6gですから、かなり塩分を抑えることができます。減らした分、他に1品くらいは普通の味付けで食べることができそうです。
朝食の目玉焼き、卵焼きや、夕食での焼き魚など、食べる直前に吹きかけて使うのが良いと思います。スプレー瓶はポケットやバッグに入れられるサイズですので、外出時に持ち歩いても良さそうです。
実際に使ってみました
よしい家の食卓では朝食のおかずに卵料理を出すことが多いのですが、目玉焼きに「スプレー醤油」を使ってみました。
右の写真は4回スプレーしたものですが、目玉焼きでしたら4回のスプレーで満遍なく醤油が降りかかります。これで0.08gの塩分量です。食べてみるとちゃんとした醤油の香りが口の中に広がり、味もほんのりと醤油の味わいを感じます。ちなみに、ウチの息子(中学3年生)はこれまで使っていた減塩醤油から「スプレー醤油」に切り替えました。息子曰く「ドバッとかかる醤油さしよりスプレーの方が安心」とのことです。
下表に減塩醤油を使った場合との比較を整理してみました。
使用法 | 塩分量 | |
---|---|---|
スプレー醤油 | 4回のスプレーで満遍なくかかる | 0.08g |
減塩醤油 | 小さじ1/2程度を満遍なくかける | 0.23g |
よしい家の昼食
せっかくですので、これらの商品を使って昼食を作ってみました。在宅で仕事をしているので、あまり手間をかけずにあり合わせの食材でチャーハンを作ることにしました。
材料は冷やご飯250gと溶き卵1個分、市販のチャーシュー3切れ(細切れにしておきます)、冷凍のミックスベジタブル適量と、たまたま低カリウムのレタスがあったのでこれも使います(葉を1、2枚細かく刻みます)。調味料には「昆布の水塩・海」と「スプレー醤油」を使います。
市販のチャーシューには塩分が含まれますので、事前に使用する分の塩分量を計算しました。パッケージを見ると「本品130g中の塩分は3.2g」とあるので、これを計算すると1g中の塩分量は0.024gです。使用する分が21gなので計算すると約0.5gの塩分でした。
ごく普通にチャーハンを作ります。フライパンを熱して油を引きます。フライパンが熱くなったところに溶き卵と冷やご飯を入れ、混ぜながら炒めます。冷やご飯は事前に電子レンジで温めてほぐしておいた方がパラっとします。
チャーシューとミックスベジタブルを入れてかき混ぜながら炒めます。この時点でお塩の代わりに「昆布の水塩・海」を5回振りかけました。
刻んだ低カリウムレタスを入れて、軽く混ぜ合わせます。
出来上がったチャーハンをフライパンの隅に寄せるようにして形を整えます。盛り付ける形になったところで「スプレー醤油」を振りかけます。満遍なく振りかけるのに5回スプレーしました。
実食・そして気になる塩分量は…
食べてみると、お醤油の焦げた香ばしさが口に広がります。食べる直前にスプレーしたのが良かったのではないでしょうか。全体的には薄味ですがチャーシューに味が付いていることもあり、それがインパクトになってちゃんとした味わいが感じられます。また、出汁の旨みが出ているからか、ミックスベジタブルのコーンや人参の甘みが引き立てられ、自分で作って言うのもなんですが結構美味しくできました。お店で食べるチャーハンとまではいきませんが、家庭で作るチャーハンとしては上出来だと思います。
さて、今回作ったチャーハンの塩分量ですが下のようにまとめました。
材料 | 塩分量 |
---|---|
チャーシュー(21g) | 0.5g |
「昆布のみず塩・海」(5回スプレー) | 0.17g |
「スプレー醤油」(5回スプレー) | 0.1g |
合計 | 0.77g |
1食での塩分量が0.77gであれば、かなり抑えられたと言えるのではないでしょうか(ちなみに外食で食べるチャーハンの塩分量は2.5〜3.5gとのことです)。
参考までに、今回作ったチャーハンの蛋白質量も計算してみました。
材料 | 蛋白質量 |
---|---|
ご飯(250g) | 15.3g |
チャーシュー(21g) | 3.1g |
溶き卵(1個) | 6.6g |
ミックスベジタブル(13g) | 0.4g |
「昆布のみず塩・海」5回スプレー | 0.0005g |
「スプレー醤油」5回スプレー | 0.04g |
合計 | 25.44g |
保存期の方はご飯を低蛋白食のパックご飯に置き換えると、より蛋白質の量を減らすことができます。蛋白質0.75gのパックご飯(内容量150g)を使用した場合、1食あたり10.89gの蛋白質量になります。
次回は…
さて、そろそろ月の初めの血液検査が近づいています。次回は検査のタイミングに合わせて1週間の減塩にチャレンジしてみたいと思います。果たして検査結果では塩分量は下がるでしょうか? ひょっとしたら思わぬ失敗の原因が晒されるのか?
この記事はどうでしたか?
参考
- 貴堂明世(2014)『早わかりインデックス食材&料理カロリーブック』主婦の友社
透析と正しく向き合い、自立して元気に生きるための
「とうせきくん」は、定期日に行われる血液検査の検査値などを入力し、
かんたんに管理・観察できる、血液透析を行っている方向けの
透析管理マネージャーWebアプリケーションです。
自分の透析や疾患を十分に理解しておくことは、QOL(生活の質)の向上にも役立ちます。また、そんなあなたの心がまえによって、治療の安全性や効果で違いが出てきます。安定した透析治療生活を送るためにも、ぜひご利用ください。
2015年3月末まで無料としていましたが、以後ずっと無料でお使いいただけます!
監修の先生方の協力を得て作った「とうせきくん」ですが、みなさんのご意見・ご要望を受けて、今後さらに進化したサービスとしてご利用いただけるよう精進してまいります。ぜひ「患者」であるみなさんの感想を教えてください。
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