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多発性嚢胞腎体験記

【第3話】闘病 — 透析導入編

2015.11.5

文:関矢武明

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私の闘病生活は突然のくも膜下出血で始まりましたが、案の定透析導入の始まりも突然でした。今から約10年前の2005年1月26日に嚢胞感染による40℃の発熱で入院し、5日間高熱が続いたことで急激に腎機能が低下して透析になりました。

入院4日目の2005年1月30日にドクターから「2月4日から透析なので明日シャントを作りましょう」とサラリと言われました。ちなみに透析には血液透析(HD)と腹膜透析(PD)がありますが、腹膜透析は体格が良い私には向かないとのことで血液透析に即決しました。

私の利き手は左手ですが、くも膜下出血の影響でうまく使えません。昔から箸と鉛筆は右手なので、シャントは迷わず利き手の左腕にシャントを作りました。今から思い返せば嚢胞感染はかなり危ない状態だったらしく、棺桶に片足を入れていたようなものでした。そんな意識の薄れた状態で透析やシャントの説明を聞きましたが当然何も覚えておらず、後日透析が始まってから再度詳しく教えてもらいました。

透析は月、水、金の17時から18時の間にスタートする夜間透析でした。透析時間は月曜4時間半・水曜と金曜日は4時間でした。前後の準備や止血時間に30分かかり終了時間が21時半から22時半位になるとのことから、水曜の地方競馬の重賞ができなくなることが分かりめっちゃ凹みました。マイナス面ばかりが目立った透析導入でしたが、プラスの面に目を向けると、水分制限があるのでたくさんは飲めませんが、保存期には諦めていたモカエキスプレスで入れたエスプレッソをデミタスカップで1日3杯は飲める計算が成り立ち少し喜びました。


透析導入に伴う手続き

くも膜下出血と同様、急遽透析導入になったので右も左も分からず結構ドタバタしました。特に透析は医療費が高額(年間約600万円)と聞いていたので最初にお金の心配をしましたが、特定疾病療養受療書・更生医療などの医療保険の制度があり、多額のお金は必要ないことが分かり安心した記憶があります。

透析導入した10年前は、すでにインターネットに色々な情報が出ていて、医療保険制度のことや障害年金のことなどを調べたことを記憶しています。運が良いのか悪いのかは分かりませんが、導入時入院先の病院に社会福祉士さんが勤務していたので、特定疾病療養受療証・更生医療・身体障害者手帳・障害年金などの手続き方法をレクチャーしてもらい、ドタバタしましたが何とか手続きを済ますことができました。

10年前と現在では制度が変わっている可能性があります。また各都道府県で制度が異なる場合があるので透析導入の説明があったら社会福祉士さん等とよく相談して各種申請手続きを行うとよいでしょう。


透析生活の始まり

透析導入時はエスプレッソが飲めるようになり少し喜びましたが、透析を始めてみると保存期には無い闘病の苦労がありました。透析を始めるにあたり指導された主なことは①シャントの管理、②飲水を含めた食事管理(塩分、適切な蛋白摂取、リンカリウム摂取のコントロール)でした。

シャントの管理

シャントの手を上にして寝ない、重い物を持たない、時計をしないこと。ちなみに透析を始めて最初の夏に一度脱水症状を起こしてシャントを詰まらせ大騒ぎしましたが、めっちゃ強く揉んだら血栓が取れ(絶対に真似はしないでください)以来10年間トラブルはありません。これまで一度もシャントを作り直して無いことは、不良透析患者にしては奇跡だとスタッフから言われています。

食事管理

保存期から比べると蛋白質を摂取してもいい量が増え楽になりましたが、水分制限のための塩分制限は厳しくなり、また新たにカリウム摂取の制限が加わりました。

カリウム制限は、腎臓に障害があるとカリウムが体内に蓄積され、濃度が高くなりすぎると不整脈が起き心臓が止まることがあるために行います。リンの制限は、血中にリンが溜まると体はバランスを保つために骨からカルシウムを取り出し骨がもろくなるために行います。水分制限は、透析患者は尿が出ないので水分を取りすぎてしまうと体重が増加してしまい、透析の時にたくさん除水しなければならず透析後半で急激な血圧下降を起こしたり、心臓に負担がかかるために行います。

幸いなことに私の場合はカリウムが上がりにくい体質で、普通の透析患者では考えられないようなカリウム量を摂取しても問題が無いようです。また良かったのか悪かったのかは判断が難しいのですが、保存期よりは蛋白質がたくさん摂れることになり飲み会にも参加できるようになって、以前は禁止していた競馬の祝勝会と反省会が復活しました。

一応頭の中には水分と蛋白質の制限のことはありますが、酒の肴は塩分が多くまた蛋白質の固まりが多いので、自ずと体重も増えリンの数値もありえない位に上がります。競馬の祝勝会が生きがいの私は蛋白質(リン)と水分の制限が守れない不良透析患者なので、反面教師だと思っていただき、是非皆さまには飲み会での飲酒・飲食は細心の注意を払ってください。


透析導入のまとめ

透析をしている人には当たり前のことですが、ありがたいことに透析には多少の時間の変更はあれど盆暮れ正月無く基本週3回必ず行われます。ということは、透析をする時の体調は良い場合だけでなく悪い場合も多々あります。

不良透析患者の私でも、日々の生活では食事制限を含めた体調管理が大切なことは分かります。特に私の場合は油脂でのカロリー摂取が苦手で、蛋白質に気をつけるとカロリー不足になり、空腹に耐え切れず逆に間食が増加すると血液検査の数値が悪化します。蛋白質だけに気を取られないよう、蛋白質とカロリーの両方に気をつけると、今度は炭水化物の摂りすぎで中性脂肪が上がるといったことがあり、バランスよく食事を摂ることは今でも難しいです。

この10年間で私が体得したことは、食事制限は厳格すぎると長続きしないので適度に緩めたり、厳しくしたりしてメリハリをつけることが大切ということです。透析治療は長期戦です。生活に潤いを持たせることが長続きするコツと、不良患者の私は考えます。

次回は感染症を含む合併症について紹介したいと思います。

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関矢武明

関矢武明
1999年3月21日の春分の日にくも膜下出血の一次破裂が分からず入院。精密検査で大騒ぎ中の腹部エコーで多発性嚢胞腎が発見されそれ以来闘病しています。多発性嚢胞腎は遺伝の場合が大多数ですが、私の周りの親族には多発性嚢胞腎患者が存在せず、くも膜下出血と多発性嚢胞腎が分かるのに時間がかかり、発見がもう1日遅かったら死んでいたと言われました。
多発性嚢胞腎の保存期は2005年の2月3日までの約6年間で、嚢胞感染のため腎機能が一気に低下し2005年2月4日より血液透析導入しました。
現在日中はサラリーマンをしていて、月水金の夜間透析をしながら闘病生活を送っています。

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