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多発性嚢胞腎体験記

【第4話】闘病 — 感染症を含む合併症編

2016.1.21

文:関矢武明

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今年2016年でくも膜下出血から17年、透析開始から11年が経ちました。世の中には30年、40年透析している人が多数いる中で、たかだか11年しか透析経験の無い自分が寄稿するのはおこがましいですが、常染色体優位性多発性嚢胞腎(ADPKD)患者の視点から見た透析について書いたつもりです。大目に見ていただけると助かります。


血液透析によって起きる症状

血液透析により起きる可能性がある合併症は下記になります。

  • 血圧低下
  • 血圧上昇
  • 溶血
  • 不正脈、胸痛
  • 吐き気、嘔吐、頭痛
  • 筋痙攣
  • 低血糖
  • 回路凝固
  • 穿刺(せんし) 部血管痛

基本的に土日の競馬の検討会&祝勝会がやめられず、体重増加が抑えられない不良透析患者の私には、透析中に過剰除水で下記の症状が多々発生します。

血圧低下

私の場合普段の血圧の上が110mmHgです。透析で多く除水すると血圧低下が起こり、血圧の上が80mmHgを切ることもありますが、痙攣はほとんどしません。上が70mmHgを切っても痙攣もなく普通にしているので、看護師さんたちを困らせています。

回路凝固

ADPKD患者はエリスロポエチンを使用しなくてもヘマトクリット値(一定量の血中に含まれる赤血球の割合)が維持される傾向があります。ちなみに私のヘマトクリット値は透析前42%、後は54%で多血症と言われており、経過観察をしながら透析しています。祝勝会で体重増加が多い月曜日は過剰除水のために回路凝固が起きそうになるので、時々返血できずに瀉血(しゃけつ:人体の血液を外部に排出させることで症状の改善を求める治療法)しています。

ちなみに多血症なのでシャントトラブルが多いと思われがちですが、最初の年に脱水で詰まりかけた後の10年間はシャントは一度も作り直していません。看護師さんには、体重増加が多くても少なくても心胸比が変わらないことと並んで、シャントのトラブルがないことは奇跡と言われています。

上記の血圧低下と回路凝固に関しては日頃節制をしていれば発生しないので、不良透析患者の経験を反面教師と思っていただけると助かります。


透析生活で起こり得る合併症

一般的に透析生活での合併症は下記になります。

  • 高カリウム血症
  • 貧血
  • 低血圧
  • 高血圧
  • 心不全、肺水腫
  • 不正脈
  • かゆみ
  • 動脈硬化
  • 消化器系の障害
  • 感染症
  • 骨障害
  • 透析アミロイドーシス
  • 体力の低下

私の場合は不節制でリンが高いことは別として、 動脈硬化 骨障害、 透析アミロイドーシスに気を付けて闘病しています。

リンが高いと「かゆみ」が出ると言われますが、私の場合はアレルギー体質なのでアレルギーで痒いのか、蛋白質の過剰摂取で痒いのか分かっていません。原因ははっきりしませんが「かゆみ」の対策を現在行っています。

ADPKDと感染症

透析生活していると上記のようなさまざまな合併症が起きますが、私が過去10年で入院した合併症は「細菌性胃腸炎」と「嚢胞感染」でした。共に原因不明ですが、透析をしていると感染症にかかった場合健常者と比べ重篤になります。
特に嚢胞感染は私の保存期にとどめを刺した疾患です。全身投与した抗菌薬は嚢胞内には到達しにくく、一旦感染すると難治化・重症化しやすく、通常の抗菌薬治療に反応しない場合もあります。私は2度目の嚢胞感染の時CRPが34mg/dLまで上がり、再び棺桶に片足を入れるくらい重篤になりました。 ADPKD患者として一番困っている合併症はやはり感染症であり、感染症対策として手洗いなどの衛生面には細心の注意を払っていますが、嚢胞感染は未だに完璧には防げていません。

透析の合併症のまとめ

日々の自己管理がしっかりできていれば、透析中の血圧低下と回路凝固の合併症は発生しません。それは分かっているのですが、競馬仲間との楽しい時間を無くすことは医療面のQOLは上がるかも知れませんが、自分の人生のQOLを著しく下げることになります。現在は土日の飲み会を2週間に1度に減らし、飲み会のある前後の平日に水分と蛋白質の制限をしっかりすることで帳尻を合わせていますが、それでもリンの値の増加が多く、骨の石灰化が始まっています。

主治医から色々と言われていましたが、くも膜下出血で一度死んだと思っているので競馬の検討会&祝勝会をやめてまで長生きはしなくてよいと申し上げて、自己責任で自分なりのリンと水分制限をしています。ありがたいことにカリウムの制限は皆無なので助かっています。


最後になりますが嚢胞感染は透析患者に限らず、保存期の患者の方でも嚢胞感染によって腎機能を著しく低下させ、最悪は自分と同じように透析導入になりますので日頃から衛生管理には気を付けた生活をしてください。

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関矢武明

関矢武明
1999年3月21日の春分の日にくも膜下出血の一次破裂が分からず入院。精密検査で大騒ぎ中の腹部エコーで多発性嚢胞腎が発見されそれ以来闘病しています。多発性嚢胞腎は遺伝の場合が大多数ですが、私の周りの親族には多発性嚢胞腎患者が存在せず、くも膜下出血と多発性嚢胞腎が分かるのに時間がかかり、発見がもう1日遅かったら死んでいたと言われました。
多発性嚢胞腎の保存期は2005年の2月3日までの約6年間で、嚢胞感染のため腎機能が一気に低下し2005年2月4日より血液透析導入しました。
現在日中はサラリーマンをしていて、月水金の夜間透析をしながら闘病生活を送っています。

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