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基礎知識

腎がんの治療
〜最適な治療を選択するために〜

2016.10.31

文:じんラボスタッフ

監修:東京女子医科大学病院 泌尿器科 腎 臓病総合医療センター 近藤 恒徳 先生

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腎がんの治療戦略

  • 腎がんの治療は手術による切除を中心に進めるのが基本
  • 治療方針は腎がんの病期(ステージ)と全身状態などを総合的に考慮して決定する

腎がんの治療は、病期(ステージ)や全身状態などを総合的に見た上で進めます。治療の中心は手術ですが、薬物療法などを組み合わせて行うこともあります。

腎がんの病期(ステージ)は、がんの大きさと広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無で決まります。「腎がんの基礎知識(後編)〜がんの種類、病状、がんのステージ〜」の「腎がんの病状」で示したTNM分類と腎がんのステージをおさらいしましょう。
かんたんにまとめると以下の表の通りです。

図1:腎がんの病期(ステージ)(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ)
▼ 転移の程度と有無 ▼
N0 N1 M1
▼ がんの大きさと広がり ▼ リンパ節転移なし リンパ節に転移あり 遠隔転移あり
T1a 腎臓にとどまっている 直径が4cm以下
T1b 直径が4cm以上7cm以下
T2a 直径が7cm以上で10cm以下
T2b 直径が10cm以上
T3a 腎臓から広がる 副腎または周辺脂肪組織に広がる
T3b 横隔膜より下の大静脈内に広がる
T3c 横隔膜より上の静脈または大静脈に広がる
T4 ゲロタ筋膜を超える ゲロタ筋膜を越えて広がる

腎臓にあるがんのそのものは、放射線治療や薬物療法での根治は難しいとされています。そのため、腫瘍を除去する手術などの外科的治療が中心となります。病期(ステージ)が進行するにつれて薬物療法が中心となりますが、転移がある場合でも可能な限り手術などの外科的治療も検討します。原発巣の摘除、つまり最初にがんが発生した腎臓を取り除いたり、転移した部分の腫瘍の切除を組み合わせたりと、可能な限り切除が推奨されています。ただし、切除ができない場合もあります。

図2:腎がんのステージと治療選択の手順

図2:腎がんのステージと治療選択の手順

メジカルビュー社『腎癌のすべて 基礎から実地診療まで』改訂第2版より作成


ステージⅠ

リンパ節転移や遠隔転移のないこのステージでの治療は、根治を目指して手術を行います。 がんが小さい場合や、腎臓が1つしかない場合、腎臓が2つあっても反対側の機能が低下している場合は、腎部分切除を行ない、可能な限り腎臓の機能を温存します。腎部分切除は、がんの腎臓をまるごと摘出する根治的腎摘除に比べて手術後の慢性腎臓病(以下術後CKD)への進展が予防されるのではないか、と言われています。


ステージⅡ・Ⅲ

このステージでもⅠと同じく根治を目指した手術を行いますが、腎部分切除が難しい場合が多く、根治的腎摘除が推奨されています。しかし、このステージでも慢性腎臓病(CKD)の観点から可能な限り腎部分切除も検討します。 リンパ節に転移がある場合はリンパ節を切除することもあります。


ステージⅣ

がんが広がっていても原発巣を摘出することで経過の改善が期待できるため、可能な限り根治的腎摘除を行います。転移がある場合の原発巣の摘出を腫瘍減量腎摘除(CN)といいます。
リンパ節に転移がある場合のリンパ節の切除(リンパ節郭清)や、大静脈内の腫瘍の摘除、遠隔転移がある場合は転移巣切除、または薬物療法など、患者さんの状態などを考慮し慎重に治療の組み合わせを決定します。

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腎がんの手術(外科的治療)

  • 手術は腎部分切除と根治的腎摘除の2種類の術式がある
  • ステージⅠでは可能な限り腎部分切除で腎臓の機能を温存し、術後CKDへの進展を防ぐ
  • 手術法(アプローチ)は腹腔鏡下手術とロボット支援手術が負担が少ない
  • 手術する医師を支援する機械「ダヴィンチ」を用いたロボット支援手術が腎部分切除に対し保険適用となり、手術法の主流となる可能性大

腎部分切除と根治的腎摘除

腎部分切除は、がんとその周囲の腎実質を一部切除する手術です。がんが小さい場合は標準的な手術ですが、腎臓の機能の観点からステージⅢまで可能な限り検討します。
根治的腎摘除は、がんのある腎臓を周囲の脂肪とともにまるごと摘出する手術です。全身状態が良好、反対側の腎機能が正常で、腫瘍径が大きく腎部分切除術を行えない場合に行われます。

図3:腎部分切除と根治的腎摘除

図3:腎部分切除と根治的腎摘除


腎部分切除と根治的腎摘除の手術後の腎機能

画像診断がまだ不十分な時代には、腎臓の周囲の脂肪や副腎などもあわせて片腎を摘出する根治的腎摘除が標準でした。しかし近年では、腎臓の機能の観点から可能な限り腎部分切除を検討します。
腎臓の多くが温存される腎部分切除に比べると、根治的腎摘除は術後CKDになる患者さんが多く、その結果として心不全・脳血管疾患・心筋梗塞などの心血管系合併症が増え生存率が少々低下するということが報告されています。しかしまだ現状では、術式の違いと術後CKDの関係は臨床試験ではっきりと確認されていません。

図4:eGFR60mL未満を回避できる割合

図4:eGFR60mL未満を回避できる割合

eGFR(推算糸球体濾過値、腎臓の機能を表す値)がギリギリ正常とされる値が60mL

出展:メジカルビュー社『腎癌のすべて 基礎から実地診療まで』改訂第2版


より身体に負担の少ない手術への取り組み

手術の方法は開腹手術と腹腔鏡下手術、ロボット支援手術があり、一般的には腹腔鏡下手術とロボット支援手術が手術中の出血量や術後の痛みなどの面で患者さんへ負担が少ない手術とされています。腹腔鏡下手術での腎部分切除は、腫瘍の切除や切除した面の縫合に高度な技術が必要とされ、十分な経験のある施設でのみ選択されているのが実状です。

図5:術式の選択
術式 手術法
(アプローチ)
備考
ステージⅠ 第1選択:
腎部分切除
開腹手術 推奨術式
腹腔鏡下手術 経験が多い施設では選択可能
ロボット支援手術
第2選択:
根治的腎摘除
腹腔鏡下手術 腎部分切除が技術的に難しい場合、または術前合併症が多い場合に選択
ステージⅡ 第1選択:
根治的腎摘除
腹腔鏡下手術 推奨術式
開腹手術 推奨術式ではあるが腹腔鏡下手腹腔鏡下手術に比べ合併症が多い
第2選択:
腎部分切除
開腹手術 ごく限られた場合
ステージ
Ⅲ・Ⅳ
根治的腎摘除 開腹手術 多くの患者さんに推奨術式
腹腔鏡下手術 選択した患者さんにおいては有用

近藤恒徳『腎がんの手術療法 : 術式の選択 』
医学のあゆみ 特集:AYUMI ここまで進歩した腎がん診療 Vol257 No.9 2016.5.28
引用して一部改変

アメリカで開発された手術する医師を支援する機械「ダヴィンチ」を用いたロボット支援手術は、非常に細かい作業も可能となり安全かつ確実な手術が望めます。
患者さんの具体的なメリットとしては、傷口が小さく痕が目立たない、合併症が少ない、出血量が少ない、術後の痛みが少ない、傷あとがほとんど残らない、回復が早いなどといった点が挙げられます。
そのため、日本ではまず前立腺がんの前立腺摘出手術で2012年4月より保険の対象となりました。2016年4月より腎がんの腎部分切除手術に対しても保険適用となり、腎がんの手術の主流となる可能性が高いでしょう。

図6:ダヴィンチ サージカル システム

ダヴィンチ サージカル システム

© 2016 Intuitive Surgical, Inc.

かっこいい! ワクワクしますね。

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腎がんの薬物療法

  • 薬物療法が適応となる場合の多くは転移がある場合
  • 腎がんの薬物治療には「免疫療法」と「分子標的治療」がある
  • 薬の開発状況の進歩で薬物療法の転換が訪れている

腎がんの治療の中心は手術です。しかし、転移がある方や合併症などのため手術が難しい方の場合は、薬を使って行う全身的な治療、薬物療法を行います。また、転移がある方でも手術で原発巣を摘除して薬物療法を行うと、薬の効果が高くなるそうです。 薬物療法でがんを完全になくすことは難しいとされています。しかし、がんの大きさを小さくしたり、がんの進行を遅らせたりする効果が期待できます。

腎がんの薬物治療には「免疫療法」と「分子標的治療」があります。以前は免疫療法が標準的な治療でしたが、2008年以降は分子標的治療が中心です。しかし、近年新しいタイプの免疫療法の薬「免疫チェックポイント阻害薬」の登場で再び免疫療法の時代がやってきました。

免疫療法の時代


免疫療法①サイトカイン療法

ヒトの体に備わった免疫反応を利用した治療薬が免疫療法薬です。腎がんではインターフェロンとインターロイキンの薬剤を用います。
細胞から分泌される免疫反応や炎症などの強い生体反応をもたらす物質をまとめてサイトカインと言います。その中でもインターフェロンとインターロイキンは免疫細胞のはたらきを活性化させ、その免疫細胞が腫瘍を破壊すると考えられています。

標準的な治療はインターフェロン製剤を皮下注射する方法で、がんが縮小する効果が15%から20%の患者さんにみられます。
治療の中心が分子標的治療になってから敬遠される傾向もありますが、日本人には効果が高い可能性があるとの報告もあります。そのため、今後は他の薬との組み合わせや使用するタイミングで、サイトカイン療法を使いこなす工夫が期待されます。ただし、現状では治療の主流ではなく、ごく限られた症例に対しての使用となります。


免疫療法②免疫チェックポイント阻害薬

ヒトは本来備わった免疫力でがん細胞を壊します。がん細胞を攻撃するT細胞が、免疫反応を制御するPD-1という蛋白質を作っています。がんが進行すると、がん細胞はこのPD-1に結合するPD-L1という蛋白質を作り、T細胞のはたらきを止めてしまうことがわかったのです。
つまり、PD-1とPD-L1が結合しないようにすれば、がん細胞に対してストップがかかっていた免疫が再び起きる、ということになります。この仮説をもとに2014年に日本で、患者さん自身の力でがんの進行を止める「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」という薬が実用化されました。

国内では昨年から販売・保険承認され、既に皮膚がんの一種や肺がんの治療現場で利用されています。腎がんにおいては、2016年8月26日、「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」に対して保険適用となりました。

図7:免疫チェックポイント阻害薬のしくみ

図7:免疫チェックポイント阻害薬のしくみ

新しい画期的ながんの薬として注目を集める「オプジーボ(ニボルマブ)」ですが、体重60kgの患者が1年使うと1700万円程かかると言われている非常に高価な薬です。保険適応の場合の患者負担の差額は、国民が負担した医療保険料と税金から賄われます。そのため、国の負担が大きくなりすぎることを危惧する声もあがっています。

2017年2月1日に適用された薬価の引き下げ後の価格です。それまでは3500万円かかると言われていました。また、「オプジーボ」の競合品の登場で本格的な市場競争に突入しつつあります(2017年3月追記)。


分子標的治療

分子標的治療薬は、がん細胞の増殖や進行に関わる分子(遺伝子や蛋白質)のはたらきを抑えることにより、がんの性質を抑えようというものです。従来の抗がん剤が、がんの細胞だけではなく正常な細胞にもダメージを与えるのに対し、がんの特異的な性質を分子レベルでとらえることで、それを標的としてピンポイントに効率よく作用します。

図8:抗がん剤の進歩

図8:抗がん剤の進歩

がん細胞にもさまざまな種類があり、それぞれ特有の因子、遺伝子や蛋白質にも違いがあります。そのため、分子標的治療薬もそれぞれの因子に向けた薬が開発されています。その作用によって大まかに以下の2種類に分類されます。

チロシンキナーゼ阻害薬
がん細胞は、自身が増殖するため栄養や酸素を補給するための血管を作ります。この現象を「血管新生」と言います。
血管を新しく作る信号の伝達に重要な役割を果たす酵素にチロシンキナーゼというものがあります。チロシンキナーゼの働きを阻害して血管新生を抑え、がん細胞の増殖を阻止する作用がある薬です。
mTOE阻害剤
mTORは蛋白質の合成に関わる酵素で,細胞の成長や増殖などの調節を行っています。がん細胞のmTORを阻害することによって,がんの成長を抑制する薬です。

免疫チェックポイント阻害薬だけでなく、分子標的治療薬も高薬価です。保険適応で少ない自己負担で使う場合は、国民全体に支えられてこそ可能な治療を受けていることを忘れてはいけません。

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監修の近藤先生にお聞きしました
「腎がんの治療のこれから」

じんラボの「腎がんシリーズ」を監修いただいている近藤先生に、腎がんの治療に関しての今後の期待や展望をお聞きしました。

  • まだ腎がんでは転移すると根治する可能性は低く、根治にもっていける可能性の高い薬物の開発、あるいは既存の薬物の併用による治療効果の改善
  • より副作用の少ない薬物の開発、とくに腎機能の保護や改善などの作用がある薬
  • 手術後の再発を抑える可能性のある薬物の発見(今のところはない)
  • 現状では腎部分切除に対して保険適用のロボット支援手術が、より他の術式にも適応拡大できること
  • 転移性透析腎がんに対する薬物療法の進歩

医療・医学の世界は日進月歩です。これらのことが可能になれば、より良い治療結果を得られたり、治療をあきめなくてもよい方が増えるかもしれません。腎がん治療のこれからに期待しましょう。

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参考

  • メジカルビュー社『腎癌のすべて 基礎から実地診療まで』改訂第2版 (2014/3/27)
  • 日本泌尿器科学会『腎癌取扱い規約 第4版』金原出版 (2011/4/20)
  • 近藤恒徳『腎がんの手術療法 : 術式の選択 』医学のあゆみ 特集:AYUMI ここまで進歩した腎がん診療 Vol257 No.9 2016.5.28
  • 木村 剛『進行性腎がんに対する免疫チェックポイント阻害薬 』医学のあゆみ 特集:AYUMI ここまで進歩した腎がん診療 Vol257 No.9 2016.5.28
  • 金 容壱『腎がん (特集 いまさら聞けない!泌尿器がん化学療法の理論と実践) -- (疾患別がん化学療法の理論と実践)』臨床泌尿器科 69(12), 1036-1040, 2015-11. 医学書院
  • 藤井靖久『免疫療法(サイトカイン療法)』泌尿器ケア2013 vol.18 no.7 メディカ出版
  • 小原 航『分子標的治療薬(1)VEGFR阻害薬』泌尿器ケア2013 vol.18 no.7 メディカ出版
  • 大家基嗣『久分子標的治療薬(2)mTOR阻害薬』泌尿器ケア2013 vol.18 no.7 メディカ出版

参考サイト

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