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基礎知識

腎臓の検査

2013.4.1

文:じんラボスタッフ

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腎臓は沈黙の臓器と呼ばれています。それは、腎臓の機能がかなり低下していても自覚症状がほとんどないためです。 また、自覚症状があったとしても腎臓病特有なものはそれほど多くないため、健康診断や検査の受診に結びつきにくいのが現状です。
健康診断などで異常が見つかったら、必ず再検査を受けましょう。
CKDと診断された方は、主治医の管理のもとで治療の有効性をチェックするために定期的な検査が必要です。

病気の段階と検査項目

腎臓の検査の目的は、腎臓病予備軍の方は早期発見のため、CKDの患者さんは腎臓の機能の低下を抑え心血管疾患を防ぐ治療の有効性を確認するためです。

まず早期発見のために、気になる症状がある場合や健康診断などで蛋白尿や血尿が陽性と判断された場合には、必ず再検査を受けてください。
CKDと診断された患者さんは、生活習慣の改善、食事療法および薬物療法の効果を見て、CKDの進行を抑えるための治療がうまくいっているかを確認するために、病気の段階に合わせて定期的に検査を受けます。

CKDの重症度 実施間隔 検査項目 血圧測定 胸部X線
/ECG
ステージG1〜G2 3〜6カ月ごと 蛋白尿定性または蛋白尿定量(g/gCr)、血尿、血清Cr、eGFR 毎診察時 適宜
ステージG3〜G5 1〜3カ月ごと 蛋白尿定性または蛋白尿定量(g/gCr)、血尿、血清Cr、eGFR、BUN、UA、
Alb、Na、K、Cl、Ca、P、Hb
FBS、HbA1c(糖尿病患者のみ)、尿アルブミン(3カ月ごと)
毎診察時 適宜
『CKD診療ガイド2012』社団法人 日本腎臓学会 より引用して一部改変

腎臓の検査

  • ある程度の診断が可能:問診
  • 早期発見のための基本的な検査:尿検査
  • CKDの性質と進行状況を確認する検査:血液検査
  • 腎臓の機能をさらに詳しく調べる検査:精密検査

ある程度の診断が可能:問診

  • 健康診断で異常が見つかったら必ず再検査を受ける
  • 受診の時は健康診断の検査結果やお薬手帳を持参する
  • 前もって頭の中を整理し、症状などのメモを持参する

さまざまな検査に先立って、まずは医師による問診が行われます。問診で病気の種類や重症度がある程度がわかるため、非常に大切な診察です。
問診の際に医師が知りたいことは以下のようなことです。

受診した理由

健康診断の結果で異常が見つかった、または自覚症状など、受診した理由をまず話しましょう。また、いつの健康診断で異常がわかったのか、いつから自覚症状があるのかなどを話しましょう。腎臓病が発症してからどれくらいなのかを知る目安になります。

腎臓病の家族歴

腎臓病には遺伝性のため家族内で多発するものと、遺伝性ではないものの2種類があります。遺伝性の腎臓病の可能性があるかどうかを知るために聞かれます。

他にかかっている/かかったことがある病気

今現在だけではなく、過去にかかったことがある病気も伝えましょう。高血圧や糖尿病などは腎臓病の原因となります。現在かかっている病気に関しては、いつからどのような治療を受けているのか話しましょう。

現在服用している薬

薬が原因で起きる腎臓の障害もあります。また、腎臓の機能が低下している場合には薬の分解がスムーズに進まなかったり、薬の成分の濃度が上昇したりして、弱っている腎臓がいっそう負担を強いられることにもなります。

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早期発見のための基本的な検査:尿検査

  • 蛋白が陽性の場合は腎臓病の可能性がある
  • 潜血反応が陽性の場合はなんらかの異常の可能性がある
  • 糖が陽性の場合は糖尿病の可能性がある
尿検査の基準値と陽性の場合疑われる病気
検査項目 基準値 陽性の場合疑われる病気
蛋白 - ±以上なら腎機能低下が起こる多くの腎臓病
- ±以上なら糖尿病、糖尿病性腎症
ビリルビン - ±以上なら胆石、肝炎、肝臓がんなど
ウロビリノーゲン ± +以上なら肝臓病や溶血など
-では胆道の閉塞
潜血反応 - ±以上なら腎炎、尿路結石
ケトン体 - ±以上なら糖尿病、糖尿病性腎症、下痢、脱水、嘔吐、つわり、飢餓状態など
出典:川村 哲也(監修)(2012)『図解でわかる腎臓病』主婦の友社

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CKDの性質と進行状況を確認する検査:血液検査

  • 赤血球の量や血中のさまざまな成分を調べる
  • 腎臓が老廃物を濾過し、排泄する能力があるかどうかを推測する
  • 免疫の異常が原因で起きる腎臓病かどうかを診断する

血液検査は、尿検査で腎臓に異常が起きている可能性が高い場合に行われます。問診や診察で異常が疑われる場合は、尿検査と同時に行うこともあります。

血清クレアチニン

クレアチニンとは、血中に存在する老廃物の一種です。血清クレアチニン値、性別、年齢を用いた糸球体濾過値(GFR: glomerular filtration rate、以下GFR)推算式(eGFR)で腎臓の機能を評価します。
腎臓の機能の低下リスクが高まるのは、一般的にはGFR50mL/min/1.73m2未満、70歳以上ではGFR40mL/min/1.73m2未満です。この値は主治医から腎臓専門医への紹介の基準となっています。

血清シスタチンC

ステージ3a(GFRが45〜59mL/min/1.73m2)では、血清クレアチニンの変動や誤差でステージ3aと診断されることもあります。
血清クレアチニンによる推算式は「eGFRcreat」と言いますが、血清シスタチンC(血清クレアチニンと同じ腎臓から排泄される老廃物)を用いた推算式「eGFRcys」がより正確とされています。そのため正確な診断が必要な場合や、腎臓移植の際の検査や尿蛋白が陰性で精密検査が必要な場合や、筋肉量が著しく低下した寝たきりの高齢者の患者さんなどには「eGFRcys」が適切であるとされています。

尿酸

血中の尿酸値が高くなると通風を起こしやすくなったり、腎臓にも障害が起きたりします。また、通風ではなくても尿酸が高い状態である高尿酸血症(7.0mL/dL以上)が持続している場合は、CKDが進行する原因となります。尿酸の値は飲酒やストレス、過労、睡眠不足、運動不足などの生活習慣と密接な関係があります。

脂質

血中のLDLコレステロール中性脂肪が高い状態、または動脈硬化を抑えるHDLコレステロールが低い状態を脂質異常症といいます。高血圧、糖尿病、喫煙と並んで、動脈硬化を進行させる原因となる脂質異常症かどうかを脂質の値で見ます。

血清総蛋白、血清アルブミン

血清総蛋白とは、血清中の蛋白の総称で主な成分はアルブミンとグロブリンです。これらの成分を測定することによって、尿に大量の蛋白質が持続して排泄されるネフローゼ症候群や、悪性腫瘍、健康的に生きるために必要な量の蛋白質とエネルギーがとれていない低栄養状態である蛋白エネルギー栄養障害(PEM:protein energy malnutrition)かどうかがわかります。

電解質

電解質とは水に溶けて電気を通すミネラルイオンです。腎臓の機能に関係が深い電解質はナトリウムカリウム、カルシウム、リンなどです。
腎臓の機能が低下すると高血圧やむくみが現れますが、これは腎臓でナトリウムの量を調節できなくなっているためです。
腎臓がカリウムを排出できなくなる高カリウム血症や、血中のカルシウム濃度が低下する低カルシウム血症、 腎不全によるリンの尿への排泄の低下などがわかります。

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腎臓の機能をさらに詳しく調べる検査:精密検査

  • 尿検査、血液検査などで腎臓病が疑われた場合、より専門的に腎臓の機能や状態を検査する
  • 効率的な治療を可能にするために行う
クレアチニン・クリアランス

血中に存在する老廃物の一種であるクレアチニンを含む血漿が、1分間に腎臓からどれくらい排出されるかを調べます。つまり、腎臓の糸球体が老廃物などを除去する力がわかります。糸球体の働きが正常であればきれいにできる血漿の量が多いので値は大きくなり、機能が低下していれば値は小さくなります。

画像検査

超音波検査、CT検査、MRI検査、X線検査、腎血管造影などさまざまな検査があり、それぞれの検査から得られる情報も違います。必要に応じて組み合わせて行います。
はじめは簡単な超音波検査を行い、腎臓の形状や大きさを見ます。CT検査は、超音波検査で腎臓の腫瘍や結石などが発見された場合に行う腎臓の画像を写す検査です。MRI検査はCT検査よりも正確に腎臓内の変化をとらえます。X線検査は超音波検査と同様に腎臓の基本的な画像検査ですが、この検査では腎臓から膀胱までの広範囲を撮影します。腎血管造影は腎臓の動脈を観察するための検査で、腎血管性高血圧症や腎臓腫瘍などの診断に役立ちます。

腎生検

背中から細い針を腎臓に刺し腎臓の組織の一部を採取して、顕微鏡で調べて評価を行う検査です。この検査はすでに糸球体腎炎やネフローゼ症候群、糖尿病性腎炎、腎不全などと診断されている場合に行われます。より正確な診断を下し、適切な治療法を決定するために必要とされる場合に行われます。
画像検査ではわからない糸球体尿細管などの状態がわかります。

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参考

  • 山谷 秀喜,横山 仁『CKDの外来治療(特集 CKD(慢性腎臓病)の外来診療 : up to date) 成人病と生活習慣病 : 日本成人病(生活習慣病)学会準機関誌 / 成人病と生活習慣病編集委員会 編 43(1) (通号 497) 2013-01 p.37-40』
  • 社団法人 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2012』
  • 中尾 俊之(監修)(2010)『患者のための最新医学 腎臓病』高橋書店

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