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基礎知識

病気の段階と治療

2013.4.1

文:じんラボスタッフ

11

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腎臓の機能が慢性的に低下する病気の総称、
慢性腎臓病(CKD)

CKDとは腎臓の機能が慢性的に低下していく腎臓病の総称です。腎臓病の原因、腎臓の機能、尿蛋白を総合的に評価し治療の方針を決定し、医師と二人三脚で治療に取り組みます。

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease、以下CKD)とは、一つの病名ではなく、腎臓の機能が慢性的に低下していく腎臓病の総称です(「腎臓病とは」参照)。
CKDの特徴は、原因となる疾患が何であっても、CKDの定義に当てはまる状態が続いていることを、簡単な検査で診断できることです。
CKDは、心血管疾患および末期腎不全などの発症の重要な危険因子です。

CKDの定義

①尿異常、画像診断、血液、病理で腎臓の障害の存在が明らか。特に0.15g/gCr以上の 蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要
②糸球体濾過値(GFR)が60ml/min/1.73m2未満
①、②のいずれか、または両方が3ヶ月以上持続する

『CKD診療ガイド2012』社団法人 日本腎臓学会 より引用して一部改変

CKDの重症度分類

原疾患 アルブミン尿ステージ A1 A2 A3
糖尿病 尿アルブミン定量
(mg/日)
正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿
尿アルブミン中クレアチニン比率(mg/gCR) 30未満 30〜299 300以上
高血圧
腎炎
多発性嚢胞腎
移植腎
不明
その他
尿蛋白定量
(g/日)
正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿
尿蛋白中クレアチニン比率(g/gCR) 0.15未満 0.15〜0.49 0.50以上
GFRステージ
(ml/min/
1.73m2
G1 90以上
G2 60〜89
G3a 45〜59
G3b 30〜44
G4 15〜29
G5 15未満

原疾患・GFR数値の区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価します。
CKDの重症度は死亡・末期腎不全・心血管死亡発症のリスクの段階を(緑)、(黄)、(朱)、(赤)の4段階で色別に表しています。ステージが進行するほどリスクも上がります。

『CKD診療ガイド2012』社団法人 日本腎臓学会 より引用して一部改変

以前CKDの診断基準は、糸球体濾過値(GFR: glomerular filtration rate、以下GFR)を基準に5つのステージにしていましたが、GFRだけで評価することに限界があり特にステージ3では腎臓の機能の経過が大きく異なる可能性がある集団が1つのステージに含まれてしまうなどの問題もあったため、2012年より日本の診療の実情にあわせてアルブミン尿と尿蛋白の区分を設定し、原疾患(cause:C)、GFR(G)、尿アルブミン(A)のCGA分類で包含して評価することになりました。
例えば、以前ステージ3とされていた原疾患が糖尿病性腎症でGFRが35で微量アルブミン尿の患者さんの場合、糖尿病性腎症G3bA2と詳細に表されるようになります。

日本人の糸球体濾過値(GFR)の推算式

18歳以上では、血清クレアチニン値、性別、年齢を用いたGFR推算式(eGFR)を用いてGFRを推定します。18歳以下の腎臓の機能の評価には小児用の評価法を用います。
腎臓の機能を評価する方法はいくつかありますが、この推算式は中でも簡単な方法です。

男性の場合:GFR=194×(血清クレアチニン値)-1.094×(年齢)-0.287
女性の場合:男性の数値に0.739を掛けたもの

実際の計算は非常に難しいので、下記ウェブサイトの利用をお勧めします。

血清クレアチニンによる推算式は「eGFRcreat」と言います。その他、「eGFRcys」という血清シスタチンC(血清クレアチニンと同様に腎臓から排泄される蛋白)を用いた推算式も加わりました。筋肉量が著しく低下した寝たきりの高齢者の患者さんなどには「eGFRcys」が適切であるとされています。

CKDが進行すると・・・

CKDのステージが進行し腎臓の機能がかなり低下していても自覚症状がほとんどないため、病院での検診・検査を受けて初めて診断されることが多く、またCKDと診断されても放置されてしまうこともあります。CKDが進行し高血圧や貧血などの自覚症状が現れてからの治療は非常に困難です。
また、ステージの進行に伴い心筋梗塞や心不全および脳卒中の発症および死亡率が高くなります。
さらに腎臓の機能が低下してステージが進行すると、腎臓の機能を代替する透析療法や腎臓移植が必要となり、日常生活に大きな影響を与えQOL(生活の質)が低下することになります。
定期的に健康診断を受けることで、CKDの予防と早期発見に努めることが重要です。


CKDの治療

CKDの治療の目的は、透析療法や腎臓移植が必要な末期腎不全への進行を抑えることと、心血管疾患になるのを防ぐことです。

腎臓の機能が低下してしまうと正常な状態には回復しませんが、生活習慣の改善やさまざまな治療法の組み合わせで進行を遅らせることができます。

CKDの治療は、生活習慣の改善食事療法血圧の管理血糖値の管理(糖尿病の治療)、脂質の管理貧血の治療骨・ミネラル代謝異常の治療尿毒症の対策などを総合的に行います。

生活習慣の改善

肥満・喫煙、度を超えた飲酒は腎臓機能の低下・悪化を招きます。そのため全ステージの方共通でBMI<25以下を目標にダイエット指導が行われます。 疲れすぎない程度の運動をそれぞれの状態に合わせて調整します。
禁煙し、指導された適正飲酒を守ります。

食事療法

全ステージの方の減塩を基本として、肥満の方・糖尿病患者さんにはカロリー制限、カリウムの値が高めであればカリウム制限が加わります。ステージG3a以降で必要となる蛋白質の制限に関しては腎臓の専門医や管理栄養士と連携して指導されます。
腎臓の機能が低下している際の極端な水分制限は腎臓の障害を増長するため、排尿に問題がない場合は適切な水分摂取が必要です。
日常的に体重を測定して、短期間に体重が増加した場合は塩分の摂り過ぎか高血糖がないかを見ます。

血圧の管理

全ステージの方共通で130/80mmHg以下を目指します。CKD一歩手前のハイリスク群の方を除いて、RAS阻害薬(ACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)が第一選択肢として処方されます。
ただし、蛋白尿が陰性(-)で糖尿病性ではないCKD患者さんにはRAS阻害薬は効果が確認されていないため、患者さんの病態に合わせた降圧薬を使います。
高齢の患者さんにおいては140/90mmHg以下をとりあえず目指し、徐々に130/80mmHg以下を目指します。

血糖値の管理

日本糖尿医学会による「糖尿病治療ガイド」を参考として治療にあたります。血糖の管理は糖尿病が原疾患となる腎臓病の予防と病気の進行を抑える点で効果がありますが、ステージG3a以降の患者さんに関しては、糖尿病治療薬による低血糖のリスクが高いためそれぞれの状態に適した血糖管理目標の設定が必要となります。
基本的な治療は食事療法と運動療法です。

脂質の管理

全ステージの方共通でLDLコレステロール(以下 LDL-C)の値が120mg/dL未満を目指します。基本的な治療は食事療法と運動療法ですが、目標値に改善されない場合は薬物治療を考慮します。

貧血の治療

ステージG2までの患者さんの貧血は、腎臓の機能からみて腎性貧血は考えにくいため腎性貧血以外の原因を探ります。
ステージG3以降の患者さんはヘモグロビン(Hb)濃度10〜12g/dLを管理目標とします。腎性貧血の可能性が大きいと考えられますが、他の要因を探る必要があります。
ヘモグロビン(Hb)の濃度が10g/dLを下回ったらエリスロポエチン製剤による治療を開始します。

骨・ミネラル代謝異常の治療

CKDに伴う骨ミネラル代謝異常は、CKD-mineral and bone disorder(以下 CKD-MBD)といいます。
CKD-MBDで高リン血症低カルシウム血症が明らかになるのはステージG4以降です。この時期は補正カルシウム濃度で評価しながら管理します。
治療には優先順位があり、ステージG3aより、リン、カルシウム、副甲状腺ホルモンの順番で管理します。
高リン血症には食事療法とリン吸着薬、低カルシウム血症には活性型ビタミンD製剤を使用して治療にあたります。

尿毒症の対策、その他

ステージG4以降では尿毒症の改善を目的とした治療が必要になります。
その他ステージG3aより高カリウム血症、代謝性アシドーシスに対する定期的な検査を行います。

参考:CKDの治療のまとめ

その①
ステージ 治療の方針 生活習慣の改善 食事療法 血圧の管理
全ステージ共通 禁煙BMI<25
ハイリスク群
  • 生活習慣によるリスク因子の軽減
高血圧があれば減塩6 g/日未満 高血圧治療ガイドラインに従う
G1 A2
G1 A3
  • 専門医と協力して治療(一般医>専門医)
  • 腎障害の原因精査
  • 腎障害を軽減させるための積極的治療
上同じ 130/80mmHg以下
原則的にRAS阻害薬を処方
G2 A2
G2 A3
  • 専門医と協力して治療(一般医>専門医)
  • 腎障害の原因精査
  • 腎障害を軽減させるための積極的治療
上同じ 上同じ
G3a A1
G3a A2
G3a A3
  • 専門医と協力して治療(一般医>専門医)
  • 腎機能低下の原因精査
  • 腎機能低下を抑制するために集学的治療
減塩6 g/日未満
たんぱく質制限食*1(0.8〜1.0 g/kg体重/日)
上同じ
G3b A1
G3b A2
G3b A3
  • 専門医と協力して治療(専門医>一般医)
  • 腎機能低下の原因精査
  • 腎機能低下を抑制するために集学的治療
上同じ 上同じ
G4 A1
G4 A2
G4 A3
  • 原則として専門医での治療
  • 腎機能低下の原因精査
  • 腎機能低下を抑制するために集学的治療
  • 透析などの腎代替療法の準備
  • 腎不全合併症の検査と治療(心血管疾患対策を含む)
減塩6 g/日未満
たんぱく質制限食*1(0.6〜0.8 g/kg体重/日)
高カリウム血症があれば摂取制限
上同じ
G5 A1
G5 A2
G5 A3
  • 専門医による治療
  • 腎機能低下の原因精査
  • 腎機能低下を抑制するために集学的治療
  • 透析などの腎代替療法の準備
  • 腎不全合併症の検査と治療(心血管疾患対策を含む)
上同じ 上同じ
その②
ステージ 血糖値の管理 脂質の管理 貧血の治療 骨・ミネラル代謝異常の治療 尿毒症の対策 その他
全ステージ共通 HbA1cは6.9%(NGSP 値)未満
ハイリスク群 腎性貧血以外の原因検索(腎機能的に腎性貧血は考えにくい)
G1 A2
G1 A3
食事療法・運動療法
LDL-C 120mg/dL未満
上同じ ステロイド薬治療中や原発性副甲状腺機能亢進症では通常治療
G2 A2
G2 A3
上同じ
  • 腎性貧血以外の原因検索
  • 鉄欠乏対策*3
  • 腎性貧血は赤血球造血刺激因子製剤(ESA)*4でHb10〜12g/dL
上同じ
G3a A1
G3a A2
G3a A3
インスリンおよびSU薬による低血糖の危険性 薬物による横紋筋融解症への注意 上同じ
  • P、Ca、PTH:基準値内
  • 低アルブミン血症では補正Caで評価
  • リン制限食
腎排泄性薬剤の投与量・間隔の調整
G3b A1
G3b A2
G3b A3
  • インスリンおよびSU薬による低血糖の危険性
  • ビグアナイド薬*2は禁忌
上同じ 上同じ 上同じ 上同じ
G4 A1
G4 A2
G4 A3
  • インスリンによる低血糖の危険性
  • ビグアナイド薬、チアゾリジン薬、SU薬は禁忌
  • 薬物による横紋筋融解症への注意
  • フィブラート系はクリノフィブラート以外は禁忌
上同じ
  • P、Ca、PTH:基準値内
  • 低アルブミン血症では補正Caで評価
  • 高リン血症ではCaCO3などのリン吸着薬
  • PTHが基準値を超える際は活性型ビタミンD*5
球形吸着炭*6 上同じ
G5 A1
G5 A2
G5 A3
上同じ 上同じ 上同じ 上同じ 上同じ 上同じ

*1 エネルギー必要量は健常人と同程度(25〜35kcal/kg 体重/日)
*2 メトグルコ®に関してはCcr(クレアチニンクリアランス)<45は慎重投与、Ccr<30は禁忌
*3 鉄欠乏があれば鉄剤投与を検討、特にESAを使用していれば、フェリチン≧100ng/mL、鉄飽和度≧20%
*4 ESA使用は腎臓専門医に相談
*5 活性型ビタミンDの投与量に注意
*6 球形吸着炭はほかの薬剤と同時に服用しない。便秘や食欲不振などの消化器系合併症に注意

『CKD診療ガイド2012』社団法人 日本腎臓学会 より引用して一部改変

参考

  • 社団法人 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2012』
  • 山谷 秀喜,横山 仁『CKDの外来治療(特集 CKD(慢性腎臓病)の外来診療 : up to date) — 成人病と生活習慣病 : 日本成人病(生活習慣病)学会準機関誌 / 成人病と生活習慣病編集委員会 編 43(1) (通号 497) 2013-01 p.37-40』
  • 佐藤久光, 日野佐智子 編,加藤ふみ 監修(2011)『患者さんの「知りたい!」に答えるCKD(慢性腎臓病)のギモン222:どうなるの?蛋白尿から腎不全どうしよう?腎移植か透析か』メディカ出版

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