じんラボリサーチ
【特別編】働き方の変化を8割が経験 透析を受けている人の「就労と暮らし向き」に関する調査
2026.9.16
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実施概要
調査目的
2026年春の財政制度等審議会の建議において、高額長期疾病(特定疾病)について「当該制度の効果検証や対象者の実態把握等も踏まえつつ、見直しの必要性を含め検討していくべきである」と記載されました。特定疾病の制度は、透析を受けている人にとって、治療を続けられるかどうかを左右する大切な制度です。
施設血液透析を受けている人は、週3回/1回4〜5時間という治療を生涯にわたって続けながら、仕事や暮らしを組み立てています。しかし「働き続けられない」「収入が不安定で将来が不安」「職場に理解されない」といった“こえ“は、じんラボにこれまでも数多く寄せられてきました。
そこで、透析を受けている人の「働くこと」と「暮らし」の実態を把握するため、2026年7月にWebアンケート調査を実施しました。全22問の結果を、いただいた自由記述とあわせてご紹介します。
- ※本調査はWebを通じた任意回答によるものであり、全国の透析患者を代表するものではありません。また回答者の年齢構成は全国平均より若く、就労世代が多く含まれている点にもご留意ください。
| 調査方法 | Webアンケート(Googleフォーム) |
|---|---|
| 調査エリア | 全国 |
| 調査対象 | 透析を受けている人 |
| 調査期間 | 2026年7月1日(水)〜7月27日(月) |
| 有効回答数 | 221名 |
| 設問数 | 全22問(属性・体調・就労・暮らし向き) |
調査対象詳細(Q1〜Q3)
| 性別(Q1) | ||
|---|---|---|
| 男性 | 144 | 65.2% |
| 女性 | 74 | 33.5% |
| その他・答えたくない | 3 | 1.4% |
| 年代(Q2) | ||
| 30〜39歳 | 11 | 5.0% |
| 40〜49歳 | 35 | 15.8% |
| 50〜59歳 | 88 | 39.8% |
| 60〜69歳 | 57 | 25.8% |
| 70〜79歳 | 26 | 11.8% |
| 80歳以上 | 4 | 1.8% |
| お住まいの都道府県(Q3)/回答上位5(41都道府県より回答あり) | ||
| 東京都 | 36 | 16.3% |
| 神奈川県 | 20 | 9.0% |
| 埼玉県 | 17 | 7.7% |
| 大阪府 | 14 | 6.3% |
| 愛知県 | 14 | 6.3% |
| その他の都道府県(36) | 120 | 54.3% |
50代が39.8%と最も多く、次いで60代25.8%、40代15.8%。日本透析医学会の統計では全国の透析患者の平均年齢は約70歳とされており、今回の回答者はそれと比べて相対的に若い層が多く回答した調査となっています。
回答者の属性(Q4〜Q6)
(Q4)あなたの現在の健康状態はいかがですか(n=221)
(Q5)腎不全(透析)の原因となった病気を教えてください(n=221)
- ※「その他」には慢性腎盂腎炎、IgA腎症、SLE、アルポート症候群などが含まれます。
(Q6)あなたが受けている透析の種類はどれですか(n=221)
透析治療が生活に占める時間(Q7〜Q9)
就労や暮らしを考える前提として、まず透析治療そのものが生活時間にどのように関わっているかを聞きました。ここからのQ7〜Q9は、施設血液透析を受けている207名(Q7は時間帯が特定できた206名)が対象です。
(Q7)普段の施設血液透析はいつ受けていますか(n=206)
(Q8)透析が終わってから普段の体調に戻る(回復する)まで、どのくらい時間がかかりますか(n=207)
2時間未満で回復する人が36.7%である一方、7時間以上を要する人も34.8%を占めており、治療当日の活動が制約される人が一定数いることがわかります。
(Q9)透析の後の体調について、次のようなことがどれくらいありますか(n=207/各項目「いつもある・よくある・ときどきある・ほとんどない・まったくない」の5段階)
「強い疲労感やだるさ」が「ときどきある」以上と答えた人は72.9%、うち「よくある」「いつもある」は44.9%にのぼりました。「疲労のため予定を入れないようにしている」も「ときどきある」以上は63.3%です。治療後の疲労は、多くの人にとって一時的な出来事ではなく、生活の前提となっていることがうかがえます。
就労の実態(Q10〜Q15)
(Q10)現在、収入をともなう仕事をしていますか(n=221)
年代別の就業率を全国平均(総務省「労働力調査」)と比べると、単純な比較が困難な60代・70代を除き、30代から50代で全国の水準を下回っていました。差が最も大きかったのは50代で、今回の調査では70.5%だったのに対し、全国は83.9〜87.0%と、13〜17ポイントほどの開きが見られました。
(Q11)あなたの働き方に最も近いものはどれですか(n=134(就労者))
(Q12)普段の一週間の勤務日数について、一番近いものを選んでください(n=134(就労者))
(Q13)普段の一週間の勤務時間について、一番近いものを選んでください(n=134(就労者))
週30時間以上働いている人が就労者の66.4%、週5日以上勤務している人は70.1%にのぼり、透析を続けながらもフルタイムに近い形で働いている人が少なくないことがうかがえます。
(Q14)透析を受けていることを、職場でどの程度伝えていますか(n=134(就労者))
(Q15)透析を続ける中で、あなたの仕事や働き方について、次のような経験はありましたか(当てはまるものすべて)(n=219(回答が矛盾する2名を除外)/複数回答 回答数=351)
「影響は特にない」以外の選択肢を1つ以上選んだ人は219名中177名、80.8%にのぼりました。透析を続けながら働くことが、多くの人にとって働き方や仕事上の選択に何らかの調整が必要になる経験になっていることがわかります。
暮らし向きと世帯の状況(Q16〜Q22)
(Q16)ここ5年間で、あなたの世帯の暮らし向き(経済状況)はどう変化しましたか(n=221)
「非常に苦しくなった」と「やや苦しくなった」を合わせ、52.9%がこの5年間で暮らし向きが苦しくなったと回答しています。
(Q17)現在、あなたの世帯の暮らし向き(経済状況)について、一番近いものを選んでください(n=221)
現在の暮らし向きについても48.9%が「苦しい」(非常に+やや)と回答しています。
(Q18)現在、仕事以外の収入はありますか(当てはまるものすべて)(n=221/複数回答 回答数=253)
(Q19)透析を受けていることについて、次のような経験や気持ちはありますか。あてはまるものを全て選んでください(n=221/複数回答 回答数=405)
「採用や仕事の場面で不利だと感じる」は、実際に就労している人に限ると51.5%と、働いていない人(33.3%)より高い割合でした。実際に働いている人ほど、不利益を実感しやすいのかもしれません。
(Q20)あなたを含めて、何人で暮らしていますか(n=221)
(Q21)あなたには配偶者(妻あるいは夫)がいますか(n=221)
年代別に見ると、30〜50代の有配偶率はいずれも全国平均(令和2年国勢調査)を大きく下回っていました(例:50代 本調査42.0%/全国68.1%)。有配偶率のみから世帯の孤立状況を判断することはできませんが、就労世代において、家庭内で負担を分かち合う相手を持たない人が全国平均より多い可能性が示唆されます。
(Q22)あなたを含めた同居家族全体の、去年一年間の収入総額はいくらですか(給与、年金、財産収入、贈与等全て含む額)(n=221)
世帯年収400万円以下が53.8%と過半数を占めました。配偶者がいない人では69.0%、ひとり暮らしの人では75.0%が世帯年収400万円以下となっており、世帯の収入源が限られることが、経済的な余裕の乏しさにつながっていると考えられます。
自由記述に見る当事者の“こえ“
設問の自由記述欄には、選択肢では捉えきれない状況が記されていました。一部を抜粋して、原文のまま紹介します。
- 透析導入後、仕事が続けられず今春退職した。年金受給は来年なので、現在収入は無い。預貯金を切り崩している(Q18)
- 透析のために、現在の職場内で希望の職種につけない。表立って言われたことはないが、お客様とのやり取りや責任がある立場には就かせてもらえない。理由としては、体調面で急な休みや緊急の場面での対応ができないのではないか?ということだが、正直健常者よりも出社率や勤務状況も良いと思う(Q19)
- 透析だけでなく、腎臓疾患がある時点で、就職時なりたい職業に就職出来なかった(Q19)
- 体調が悪くてしんどい時、何もしてないのになんでそんなに疲れてるの?みたいなことを言われることがある(Q19)
- 障害者雇用でないことを理由に合理的配慮を受けられない(Q19)
- 実際は遺伝性の難病で人工透析を受けているけど、自分の不摂生な生活で慢性腎不全になったと思われること(Q19)
まとめ
今回の調査から、治療の時間的な拘束や、周囲の理解不足、経済的な基盤の弱さといった壁に直面しながらも、多くの人が透析を続けながら仕事や暮らしを支えている実態が見えてきました。夕方以降に透析を受けられる環境や、勤務時間・日数を柔軟に調整できる働き方は、就労を続けるための大切な条件です。同時に、透析後の疲労への理解や、後ろめたさを感じさせない職場の雰囲気づくりも欠かせません。
本調査はWebを通じた任意回答によるものであり、全国の透析患者を代表するものではなく、また回答者の年齢構成は全国平均より若く、就労世代が多く含まれている点にも留意が必要です。しかし、透析を受けながら働き・暮らしている人の実態は、これまで十分に可視化されてこなかった分野でもあります。当事者の生の“こえ“を積み重ね、国や社会に届けていくことは、社会保障制度のみならず、治療と仕事の両立を支える制度や職場環境の改善につながると考えています。
ご協力いただいた221名の皆さま、貴重な経験をお寄せいただき、誠にありがとうございました。いただいた“こえ”は複数の国会議員に届けており、今後も関係省庁へ伝えてまいります。
「しゃべルーム」で、経験や気持ちを話してみませんか
じんラボの会員コミュニティ「しゃべルーム」に、本調査に関するトピックを立てました。透析をしている人の就労と暮らし向きについて、ご自身の経験や気持ち、この記事を読んで感じたことなど、引き続き“こえ”をお聞かせください。
- ※本記事は「透析を受けている人の就労と暮らし向きに関する調査報告書」(一般社団法人ピーペック、2026年9月)をもとに、全設問の集計結果を掲載して作成しました。
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参考
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