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【前編】透析を受けながら授かった命
2022.5.23
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皆さん初めまして。この度じんラボで体験談を寄稿させていただくことになりました徹と申します。
私と妻は2人とも透析を受けており、2人で苦労や悩みを乗り越えつつ幸いにも子どもを授かることができました。この体験談では、透析を受けている方で妊娠や出産を考えられている方の参考になればと思い、当時の様子を前後編の2回に渡ってお話しします。
妻に突然現れた腎臓機能悪化のサイン
結婚して2年が過ぎたある日、妻が「視界が歪んで見える」と言い出しました。
当時は引っ越しをして間もない頃。「疲れが溜まったのだろう」そう軽く考えていました。
しかし、眼科を受診したものの、医師からは「眼の問題ではないから、至急大学病院を受診してください」と告げられました。
「どこが悪いのだろうか」と不安になり、急いで大学病院を受診。そして視界のゆがみは腎臓悪化のサインだったことが判明したのです。まさか腎臓機能が低下していただなんて想像もできず、妻はこの後わずか1年程度で透析を開始することとなりました。
それから6年後、今度は私が会社の健康診断で蛋白尿を指摘されました。会社の健康診断は入社以来、毎年欠かさず受診していましたが、蛋白尿を指摘されたのはこの時が初めてでした。以降、毎年会社の健康診断で蛋白尿を指摘されるようになり、数年後には妻に続いて私まで透析を受けることになってしまいました。
なんということでしょうか。夫婦二人とも透析を受けなければならないなんて、「こんなことってあるのだろうか…」と大きなショックを受けたのを覚えています。
ただ一つ良いことは、お互いに透析の辛さを身をもって理解できるという点でした。
そしてこのような状況でしたが、私は子どもをもうけることを諦めてはいませんでした。しかし妻は、自身が透析を受けることになった時点で子どもは諦めていたようでした。
妻は過去に一度流産した経験があり、「以前は健康体なのに出産できなかった。透析が必要となった今となっては出産はもう無理」と思っていたようです。
そのため、私が「子どもが欲しいね」と言うと、妻は決まって「二人で暮らしていけばいいじゃない」と言うのでした。
授かった新しい命
それから4年が過ぎた頃、妻のお腹が少しポッコリしてきました。
妻は「あら嫌だ。マッサージ、マッサージ」と毎日お腹をポンポンと、マッサージしていましたが、お腹は一向に引っ込みません。
そうしているうちに、「マッサージしてはダメ」と妻の体に知らせが出ました。不正出血が起きたのです。
慌てて、私も付き添って産婦人科のある病院へと向かい、検査を受けた妻は淡々と私に「妊娠4カ月だって」と告げました。
普通であれば、ここで「やったー!」と大喜びするところですが、私はこれから妻が妊娠と出産を抱えながら透析を続けるのかと思うと、素直に喜ぶことができませんでした。
もちろん子どもは諦めていませんでした。しかし、いざ新しい命を授かったという事実に直面すると、透析治療を受ける妻への負担や、子どもはちゃんと育ってくれるのかなど、次々と不安が押し寄せたのです。
ずっと望んでいた子どもを授かったのにまさか落ち込むなんて、この時までみじんも思いもしませんでした。妻も私の反応が予想と全く違っていたため、ショックを受けたようです。
透析を受けている病院の医師に妊娠の報告をしました。医師は「おめでとうございます」と言いながらも「今回あきらめても次がありますよ」などと意味の分からないことも言いました。
しかし、私達は“次”などはないと思い、出産を決意しました。
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