じんラボリサーチ
【第14回】腎臓病・透析を受けている方のカリウム制限に関する調査
2022.10.24
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実施概要
調査目的
カリウムは、細胞の浸透圧維持をはじめナトリウムの排出による塩分の調整や筋肉の収縮などに関わる必須ミネラルの一種ですが、腎臓の機能が低下するとカリウムの排出が困難になります。腎臓病・透析を受けている方がカリウムを多く摂りすぎると高カリウム血症を引き起こし、最悪の場合、不整脈による突然死を招く恐れがあります。そのため適切な食事療法による自己管理が欠かせません。
そこで今回はカリウム制限に関する悩みや管理方法などを調査し、今後のカリウム制限のあり方を検討するため、アンケート調査を実施しました。
調査方法 | WEBアンケート |
---|---|
調査エリア | 全国 |
調査対象 | 腎臓病の方 透析をしている方 男女年齢不問 |
調査期間 | 2022年7月29日(金)~8月5日(金) |
有効回答数 | 92名(内、透析をしている方77名) |
調査対象詳細
性別 | ||
---|---|---|
男性 | 60 | 65.2% |
女性 | 32 | 34.8% |
年代 | ||
〜29歳 | 2 | 2.2% |
30〜39歳 | 2 | 2.2% |
40〜49歳 | 19 | 20.7% |
50〜59歳 | 40 | 43.5% |
60〜69歳 | 20 | 21.7% |
70~79歳 | 7 | 7.6% |
80歳〜 | 2 | 2.2% |
腎臓病との関わり | ||
CKDステージG1〜G3 | 5 | 10.9% |
CKDステージG4(保存期腎不全) | 10 | 65.2% |
CKDステージG5(透析を受けている) | 77 | 83.7% |
透析歴 | ||
1年未満 | 6 | 7.8% |
1〜2年 | 8 | 10.4% |
3~5年 | 17 | 22.1% |
6~10年 | 13 | 16.9% |
11~20年 | 21 | 27.3% |
21~30年 | 7 | 9.1% |
31年以上 | 5 | 6.5% |
(Q1)主治医にカリウム制限が必要だと言われたことはありますか?(n=92)
(Q2)カリウム吸着剤などの服薬治療をしていますか?(n=77)
※カリウム制限が必要、かつて必要だった方が対象
(Q3)カリウム制限が辛いと思うこと(思ったこと)はありますか?
(n=67)
※Q1で主治医にカリウム制限が必要だと言われたことがある(「過去にあった」含む)と回答した方が対象
(Q4)特にカリウム制限が辛いと感じる(感じた)のはどのようなときですか?
(n=40:複数回答 回答数=68)
※Q3で「カリウム制限が辛いと感じる(感じた)」と回答された方が対象
1 | 生野菜や果物をたくさん食べたいとき | 34 | |
---|---|---|---|
2 | 茹でこぼしなどカリウムを減らすための調理が大変なとき | 17 | |
3 | カリウム含有量を計算するのが大変なとき | 7 | |
4 | カリウムを摂りすぎてしまい体調が悪くなったとき | 4 | |
5 | その他 | 6 |
※その他の詳細 |
---|
|
カリウム制限を必要とした方は全体の72.8%にあたる67人で、そのうち約6割にあたる40人がカリウム制限について「よく辛いと感じる」または「時々辛いと感じる」と回答しています。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病の予防を目的とした成人のカリウム摂取の目標値は男性3,000mg/日以上、女性2,600mg/日以上ですが、慢性腎臓病(CKD)のステージG3bの方と血液透析をしている方は2,000mg/日以下、G4~G5では1,500 mg/日以下が目標値です。
例えばCKDのステージG4~G5の男性の場合、普通の人の半分近くまで摂取量を減らすのが目標です。カリウムは作物をはじめほとんどの食物に含まれているため不足についての心配はほとんどなく、摂りすぎた場合、通常は腎臓で排出されます。その反面、カリウムを多く含む食品を把握し控えるのはなかなか難しく、制限に慣れたとしても「好きなものが食べられない」と悩む人は少なくないようです。
カリウムを多く含む食品やカリウム摂取量を減らすコツについては「慢性腎臓病(CKD)の方必見~カリウムの多い食品とカリウム摂取量を減らすための工夫」をご覧ください。
なお、Q1で「カリウム制限が辛いと感じない(または感じたことがない)」と回答された方(27名:うち透析を受けている方26名)が挙げた理由で最も多かったのは「透析でカリウムが十分抜けるため(17名)」で、次いで「カリウムを減らすための調理が特段手間に思わない(9名)」「カリウム吸着剤などの薬が合っているため(8名)」などでした。
(Q5)あなたが行っている(または行っていた)カリウム摂取量を減らすための対策を教えてください。
(n=40:複数回答 回答数=106)
1 | カリウムが多く含まれている食品はできるだけ摂らない | 27 | |
---|---|---|---|
2 | 野菜は生のまま食べずに、水にさらす・茹でこぼすなどの調理を加える | 27 | |
3 | 野菜ジュースや牛乳、青汁などカリウムの多い飲み物を避ける | 27 | |
4 | もやしや玉ねぎなどカリウムが比較的少ない別の食材を使う | 18 | |
5 | 低カリウム食品を活用している | 7 |
(Q6)カリウム対策で困っている(または困っていた)ことはありますか?
(n=40:複数回答 回答数=92)
1 | 食べられる野菜や果物が限られる | 30 | |
---|---|---|---|
2 | 低カリウム食品の種類が少ない | 16 | |
3 | 低カリウム食品が割高に感じる | 13 | |
4 | 外食やテイクアウトする際にカリウム量の表示がない | 26 | |
5 | 低カリウム食品を購入できる場所や方法がわからない | 6 | |
6 | 困っていることは特にない | 0 | |
7 | その他 | 1 |
※その他の詳細 |
---|
|
最も多い回答は「食べられる野菜や果物が限られる」、次いで「外食やテイクアウトする際にカリウム量の表示がない」でした。
食品表示法により、予め包装された加工食品、生鮮食品及び添加物には原則として栄養成分表示が義務付けられていますが、表示が義務付けられているのは熱量、蛋白質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量に換算したものを表示)のみで、カリウムは含まれていません。
外食でもカリウム表示のない店舗は多く、回答の中には「とにかく成分表にカリウムを必須にしてほしい。『アレルギー成分=命に関わる』と同様、『カリウム=命に関わる』のに重要視されてないのではないでしょうか」という意見も寄せられました。
また、レタスや水菜、小松菜、メロンなどに低カリウムのものがありますが、通常の野菜のようにスーパーで広く販売されておらず、取り扱い商品も限られています。値段は割高で、通販では一度に食べ切れない量で販売されているケースが少なくないことから、手を出しにくいという人もいるようです。
(Q7)あったらいいなと思うカリウム制限に役立つ商品アイディアがあったらを教えてください。
(n=16 自由記述回答)
寄せられたアイディアをざっくり分けると「カリウム量が分かるアプリ」「カリウム量を減らせる便利アイテム」「低カリウム食品」「カリウム管理ソフトやアプリ」の4つでした。
もっと気楽にカリウム制限に取り組めるような便利グッズの開発を望む声が多く挙がりました。
回答のうちいくつかをご紹介します。
カリウム量が分かるアプリ
- 外食チェーンの主要メニューのカリウム量がわかるスマホアプリ
- スマホのカメラで果物や野菜を撮ると、カリウム量や調理法が表示されるアプリ
カリウムを減らせる便利アイテム
- かけると味を変えずにカリウムを減らせる水みたいな液体
- 野菜のカリウムが減る電子レンジのようなもの。茹でこぼす必要がなくなるから調理が楽になる上、水を使わないからエコ
低カリウム食品
- もう少し低カリウムの野菜や果物の種類が欲しい。低価格にして欲しい
- 茹でたり水にさらしてあったりして、そのまますぐに食べられる半調理済の野菜
カリウム管理系ソフトやアプリ
- 血液検査のカリウムデータと過去の食事の内容を照合し、今後の食事内容を調整できるもの
- 食事管理系のアプリで腎臓病の人向けのものが出来ると嬉しいです。食品の選択画面の時点でカリウムやリンや塩分などの成分が分かると助かります
日本に腎臓病の方は約1330万人(成人のおよそ8人に1人)いると推計されており、新たな国民病だといわれています。2020年末時点で透析を受けている方は34万7000人以上おり、近年は鈍化しているものの年々増加傾向にあります。
中には「カリウム制限はさほど厳しく感じない」という方もいますが、多くの方がカリウム制限を必要とし、困難を感じている現状にあります。栄養成分表示へのカリウム量の記載や、低カリウム食品の開発・流通の推進などによって、カリウム制限に関するハードルを下げる環境づくりが重要なのではないでしょうか。
ご回答くださった皆さま、この度はご協力ありがとうございました。
今回のリサーチで、腎臓病・透析を受けている方にとってカリウム管理を続けることがいかに困難であるかが改めて明らかになりました。
しかしながら現状では低カリウム食品の提供やカリウム管理を行う環境整備は十分とは言えず、個々人の努力への依存が高い状況にあります。じんラボは、この課題を重く受け止め、食品業界や医療業界に向けて今後も情報発信や提案を行ってまいります。
カリウム制限でお悩みの方は、管理栄養士などの医療者にも相談しながら無理のない管理方法を学び、カリウムと上手に付き合っていきましょう。
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