生き活きナビ(サポート情報)腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
出掛けよう!私たちの世界は広い。【第2回】
地中海に浮かぶ美しい島。マルタ共和国
〜マルタ透析レポ編〜
2016.6.13
緑の文字の用語をクリックすると用語解説ページに移動するよ。
じんラボ をフォローして最新情報をチェック!
- 【第1回】地中海に浮かぶ美しい島。マルタ共和国〜紹介編〜
- 【第3回】日常を抜け出そう〜透析患者さんの旅行準備編〜
- 【第4回】聖ミカエルの島へ 〜モンサンミッシェル編
- 【第5回】花の都 〜パリで旅行透析編
- 【第6回】おまけのドバイ編
前回は、「地中海に浮かぶ美しい島。マルタ共和国〜紹介編〜」として、私がマルタ共和国に焦がれた理由や実際のマルタがどんな場所だったかを少しお話させていただきました。第2回目となる今回は、マルタでの透析の様子やどんなスケジュールで旅をしたのかなどを詳しくお話したいと思います。
2016年3月17日、業務上いちばん支障の少ない時期を選び、3連休を挟んで有給も使って思い切って1週間の休暇を取りました。
いざ、憧れの地マルタへ。
ドバイ経由でほぼ24時間かけてやってきたここは、淡路島ほどの大きさの、聖ヨハネ騎士団の島国。
抜けるような青い空と地中海の深い蒼、はちみつ色の街並と豪奢なバロックの教会、そして石造の堅牢な要塞…ああ、胸が躍る。
(※マルタの美しい風景は第1回の「地中海に浮かぶ美しい島。マルタ共和国〜紹介編〜」をぜひご覧ください)
さて、ここからはマルタ透析レポです。
マルタでの臨時透析先はウェブサイトで検索して探しました。
旅先での臨時透析先を検索する際は「Holiday dialysis +地名」で検索すると、病院サイトや世界の透析ポータルみたいなものがヒットします。
病院が見つかったら、その後はメールでコンタクトを取ります。
ただし、今回はメールを送ってもなかなかレスポンスが無かったので、一度日本から国際電話をかけて臨時透析の相談をしたい旨を伝え、それからメールでやり取りとなりました。
ちなみに今回の旅程は、マルタ島内のサンジュリアンに連泊の4泊7日。
17(水)日本でオーバーナイト透析
18(木)仕事⇨深夜便にて出国
19(金)ドバイ(-5h)乗継、マルタ(-8h)着
20(土)ゴゾ島1日観光
21(日)イン・ガーディア(※)⇨【PM透析①】
22(月)ハーバークルーズ⇨【PM透析②】
23(火)午後便にてマルタ発
24(水)ドバイ乗継、関空着⇨日本でオーバーナイト透析
※中世の衣装に身を包んだマルタ騎士団が軍事演習を行う様子を再現したイベント
お気付きかと思いますが、がっつり中3日の暴挙です。(笑)
その代わり?と言ってはなんですが、現地で連続透析というスケジュールを組みました。
当初は土曜+月曜で予約したのですが、どうしてもゴゾ島に行きたかったのとイン・ガーディアが観たかったので、日曜+月曜に変更してもらったのです。
「中3日駄目ですか?」と訊いたら「君のことはある程度信用しているから良いでしょう。ただし充分に気をつけて」と快く許可してくださった主治医には本当に感謝です!
昔の私なら、現地透析1回で連続中3日とか平気でやっただろうな…でも、しっかり透析をして元気に過ごさせていただいている今、やっぱりそれは躊躇しました。
ただ、短い滞在の間に2回も半日潰さないといけないのは、やっぱりちょっと悲しかった…贅沢ですけどね。
さてマルタでの透析ですが、マルタ政府運営のマルタでいちばん大きな総合病院「Mater Dei Hospital」でお世話になりました。
マルタ島内にはもう一軒透析病院があったのですが、そちらにもコンタクトしたところ現在は透析から撤退してしまったとのことでした。
ゴゾ島にも6床だけの小さなクリニックはあるそうですが、マルタ島で透析ができる病院はここだけだったのです。
こちらは週7日間毎日、8:00〜12:00と14:00〜18:00の2クールに加え、月水金のみ準夜(Twilight shift)20:00〜24:00の3クール。
準夜があるのはかなり珍しいと思います。ちなみに「準夜にねじ込んで!お願い!」と頼んだけど、夜は満床で受け入れ不可でした。
でも日曜日も2クールやってくれるのはありがたいことです。
マルタの医療についても触れておくと、マルタ人は医療費が完全無料だそうです。もちろん透析も。
標準的な透析は、やはり週3回×4時間だそう。
ただ人によって、週4回や隔日の透析が処方される場合もあるため、日曜日も透析ができるとのこと。
更衣の習慣は無いようで、洋服のままリクライニングチェアで透析を受けます。
病院に着いたらまずは待合室へ。時間になると待合室にある体重計で順に体重を測り、穿刺順の記載されたチケットを貰います。臨時で自己穿刺なので1番にしてくれました。前体重が中3日でどえらい事になっていますがそこは突っ込み禁止です。(笑)
自己穿刺はやはり珍しいようで、2回ともすごい勢いで囲まれました(笑)
みんな手技や針に興味津々の様子。
「普段は在宅なの?」と訊かれ、「もうすぐ始める予定でトレーニングしたのだ」と話すと納得していました。
また、「日本では今オーバーナイトで深夜8時間の透析を受けている」と話すと、とても驚いていました。
思えば、在宅血液透析やオーバーナイト透析は海外発とはいえ、維持透析の手段として(入院対応ではなく)施設においてオーバーナイト透析が提供されているのは世界的にもとても珍しいことなのかも知れません。
これは住宅事情や移植率の低さなど日本独特の事情も関係しているのでしょうか。まだまだ数は少ないですが、ありがたいことです。しかし日本でも現状は施設側の努力のみで実現しているものなので、制度面でのフォローが待たれます。
透析中、サンドイッチとお茶のサービスが!サンドイッチは食パンにチーズを挟んだだけのシンプルなものだけど、妙に美味しかったです( ^ω^ )
2日目のコンソールはGAMBRO社製
おっと2日目はダイアライザが1.0m2の極小に…回し始めてかなり経ってから気付きました。しまった。体格も小さいし、連日透析なので「透析過多は駄目だから!」とのこと…余裕なのに。
連日透析で透析過多を危惧するくらいなので、長時間透析・頻回透析の考え方はまだまだ無いのでしょう。事実、海外の透析医療関係者の方とお話していて「自営業でなく普通にフルタイムで働いている」と話すとひどく驚かれることもあります。
かつて腎臓の病は死を意味したものが、現在はそうではない。定期的に透析をすることで生きられる。だけどそれが社会的な死を意味する場合がままあるのも事実…。
「しっかり透析」をすることさえできれば、そしてその時間が生活を侵食しない方法があるならば、完全な社会復帰が可能なのがこの治療の素晴しいところだと思うのに。
こちらの病院で止血に使う道具が面白くて写真を撮ってきたはずが、間違えて削除したのか見つからないので絵に描いてみました。(笑)
これちょっとかさ張るけど、血管に優しくて便利なんです。どっか作ってくれないかな…。
マルタでは長時間透析の供給は無いようで、標準的透析効率ターゲットはKt/v1.3とのこと。
私のアベレージはKt/v4.7だというと驚愕されました。(笑)
そして、臨時透析の料金は1回245ユーロ(約31,000円)程でした。
が、しかし!支払の際にトラブルが発生しました!
マルタの患者さんは医療が完全無料なので、ロビーに会計は設置されておらず、オフィス棟内の会計事務所で精算します。
事前にカード使用可能な旨と料金(@245ユーロ×2回)を聞いていたのに、請求書を見て吃驚。
なんと838ユーロと記載されていたのです!!!
ちょっと待って聞いていたのと違う!と明細を出してもらうと、「Day case attendance」という名目で@174ユーロ×2回も加えて請求されていました。
会計事務所の方に訊くと、外国人が病院を使えば1日毎に必ず掛かってくるものだと頑として聞いてもらえず…。仕方無く一旦請求通りにカードを切ったものの、腑に落ちないしヨーロッパの他の国でもこれ程高い額の請求はされたことが無い(※)と透析スタッフに話すと、調べてくれてやはり間違いだと判明したのです。
※聞いていたのと違ったので抗議しましたが、実際は国や町や病院により、透析の値段はまちまちです。実際、私の経験だけでもヨーロッパ圏内で1回あたり180ユーロ〜500ユーロくらいの幅がありました。他人の経験談ではそれ以上かかったという話も聞いたことがあります。
透析の料金に加えて請求されていたのは、診察料にあたる費用でした。外国人が病院に来れば、まず必ず何らかの診察を受けるため、透析について知識の無い会計担当者が誤ったということです。
診察なしで処置だけを受ける透析というのは、やはり特殊な治療なんだなぁと改めて実感。しかし、危なかった。
結局、@245×2=490ユーロ程だったのだけれど、危うく838ユーロ払わされるとこでした。これにはさすがにドキドキしました。カードは一旦838ユーロ決済したので、差額リファンドでマイナス決済してもらったのでした。本当に良かった。
ということで、事故も怪我もなく無事に帰国致しました!
帰国後は夜通しのトリートメントです。
生きていると色々あるけれど、やっぱり人生は素晴しい。
さあ、また頑張ろう。
最後に。
この同じ空の下、どこかで駄文を読んで下さっている(たぶん私と同じ病を抱える)みなさんが、明日いつもよりちょっとだけ広い世界を確かめに出掛ける気分になってくれたなら嬉しいです。
あなたの明日が素敵な一日になりますように。
この記事はどうでしたか?
生き活きナビ内検索
- 腎臓病全般
- ご家族の方