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出掛けよう!私たちの世界は広い。【第4回】
聖ミカエルの島へ 〜モンサンミッシェル編
2018.3.26
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- 【第2回】地中海に浮かぶ美しい島。マルタ共和国〜マルタ透析レポ編〜
- 【第3回】日常を抜け出そう〜透析患者さんの旅行準備編〜
- 【第5回】花の都 〜パリで旅行透析編
- 【第6回】おまけのドバイ編
前回は「旅行準備編」として旅行商品の選び方などを少しお話しさせていただきました。
続く今回は、私の直近の旅のお話をしてみたいと思います。
憧れの未知の場所…モンサンミッシェル
この連載の第1・2回では3連休に年休を足してマルタ島へ出掛けた時のことをお話ししましたね。だけど今は、シャントのメンテナンスの為に毎月年休を取得して手術通院しているため、年休が余っていません(笑)。
そこで年末年始の冬季休暇、2017〜2018年では8連休(内数日は指定年休だけど)が取得できることになったので、そこで! と目論みました。
行先は、憧れの未知の場所…モンサンミッシェル!
マルタでもそう言ってたよねって? まだこのあんよで踏んでいない憧れの場所はいっぱいあるんです。だってこの世界には、私が知らない場所やものやコトの方がずっとずっと、多いんだもの。
此処を選んだ理由は、勿論ずっといつか行きたいと憧れていたこともあるけれど、パリを拠点にして日程を組むことで透析手配ができるであろうことも大きいかな。
パリからは日帰り( ! )で訪れる観光客も多いのだとか。だけど私は今回、モンサンミッシェルの島内で一泊する事にしました。
月灯りの下、静寂に包まれる聖地も肌で感じてみたかったから。
パリからモンサンミッシェルへは、パリ発ツアーの観光バスだと片道約5時間程だそう。私は今回フランスの新幹線TGVと路線バスで。
パリ・モンパルナス駅発のTGVでレンヌへ約1時間半、レンヌからモンサンミッシェル対岸までの路線バスが約1時間10分、そして対岸から島内へはシャトルバスを利用。
大きなスーツケースはパリのホテルに預けて、一泊分だけの小さな荷物で小旅行です。
海に浮かぶ巡礼の島
満潮時には完全に孤島となることから、一時は監獄としても使われていた彼の巡礼の島は、かつては干潮時に歩いて渡るしか術がなかった。19世紀には地続きの道路が造られ潮に関係なく渡れるようになったものの、その堤防が潮流を堰き止めてしまい陸地化が急速に進んだため、かつての姿を取り戻すべく潮の流れにできるだけ干渉しない橋脚を持つ橋が架けられたのが2014年のこと。
いまも島の間際まで潮が上がるのは年に数回の大潮の時だけだそうで、海に浮かぶ孤島の威容と水面に映るリフレクションには出会えなかったんだけれど。
でも、聖ミカエルの降り立つ修道院と要塞の聳える姿は、美しかったのです。言葉を失う程に。
西洋の驚異 ― そう称される景観。ああ、辿り着いた。巡礼の地に。
数奇な歴史を物語るモンサンミッシェル修道院
モンサンミッシェル島内ではメインストリート、グランド・リュにある三ツ星のちいさなオーベルジュ(食事のできる宿泊施設)に宿泊することに。とっても可愛らしいお部屋でバスタブ付、ホテル内から直接モンサンミッシェルの城壁にも出られて、モンサンミッシェルの全容を望む橋からも近い好立地。
まずはチェックインを済ませ、ふらっと入ったレストランでムール貝のマリネと仔羊のグリルでお腹を満たしたら、狭い坂道を登って修道院へ。
岩山の上に幾層にも建造を重ねられた修道院と軍事施設。
主にゴシック様式の建築だけれど、中世のさまざまな建築様式が折り重なるような内部は数奇な歴史を物語るよう。
かつて此処に「この岩山に聖堂を建てよ」との聖ミカエルのお告げで礼拝堂が造られたのが8世紀初頭。10世紀にベネディクト会の修道院が造られ、増改築を繰り返して13世紀頃にほぼ今のような形となり、カトリックの聖地、巡礼地に。14世紀には英仏百年戦争の間は要塞となり、18世紀末のフランス革命後は監獄として使用されどんどん荒廃していった ― それがナポレオンⅢ世により修道院の機能を回復されたのが19世紀半ば。
つまり此処は、祈りの場所であり、多くの血を吸った場所でもあり。潮の干満が激しい独特の地形から、人の信仰を集めながら諍いの舞台ともなってしまった。その永い時間と、平和な顔をして観光にやってくる私たちのいまを、聖ミカエルはどんな気持ちで見ているんだろう…尖塔の上の大きな翼を見上げて少し考えました。
島内1泊ならではの美しい時間
修道院を出ると、暮れ始めた町はお昼の喧騒が嘘のように静か。あんなに溢れていた人はみんなきっとパリへ帰ったのね。ちいさな教会やお土産屋さんを眺めながら坂を下りて、宿泊先のオーベルジュに戻ります。
お昼に割としっかり食べたので夜は軽めに、お魚のスープと名物のオムレツを。ふわっふわで大きくて、不思議な食感のザ・卵。
そして夜。帳の下りた静かな町から城壁を出て聖ミカエルを振り返ると、まっくろな空に浮かび上がる光の要塞の荘厳さ。クリスマスシーズンの電飾で少しだけ派手な、いまだけの夜景。
昼、此処に辿り着いた時に仰ぎ見たモンサンミッシェルの威容と、宵闇にライトアップされた聖ミカエルの姿、そして静かに明ける蒼い朝。
島の中で一夜を越えないと観られない時の移ろい。夜のライトアップを観たい、というのも一泊した動機だったけれど、早朝の風の中で城壁の上をお散歩した時に見た景色が忘れられずにいます。
うみねこだけがみゃあみゃあ哭く青い世界の中、干潟に映る蒼と空の境界を遠くに探し、動き始める町を見下ろして、静かに聳える聖ミカエルを仰ぎ見て。
それはとても美しい時間でした。
美味しいチーズとクレープ、ブリオッシュの朝ごはんを戴いたらお別れの時間。また路線バスとTGVでパリへ戻ります。
緯度が高いから冬の朝は遅くて、明け切らない空もなんだか別れを惜しんでくれているよう。
有難う、聖ミカエル。夢のようないちにちだったよ。
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