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慢性腎臓病(CKD)と食のリテラシー【第7回】
ミネラルとのおつきあい その⑤血をつくる微量ミネラル―鉄・亜鉛・銅
2025.11.17
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ミネラルという栄養素と腎臓との関係を掘り下げるミネラルとのおつきあいシリーズ、5回目は血液づくりに深く関わるミネラルを取り上げます。
血液をつくるには、赤血球をはじめさまざまな成分が必要です。中でも、ミネラルの鉄、亜鉛、銅は、赤血球の材料だったり酵素として働いたりと、血液づくりに深く関わっています。特に慢性腎臓病(CKD)をもつ方では、これらミネラルのバランスが崩れやすく、貧血や体のだるさ、免疫力低下などの原因ともなります。
必須ミネラル一覧
鉄(Fe)

鉄の主な特徴と働き
鉄は、赤血球の中のヘモグロビン(Hb)の重要な構成元素であり、酸素を肺から全身に運ぶ役割を担っています。鉄がなければ、酸素を運ぶ力が落ち、疲れやすさ・息切れなどの症状が出やすくなります。
食品に含まれる鉄は肉や魚などに含まれるヘム鉄と、ヘム鉄以外の非ヘム鉄に分類されます。非ヘム鉄は野菜や穀類、海藻、乳製品などに含まれており、日本人の鉄の摂取の多くは非ヘム鉄からです。ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収率は大きく異なり、ヘム鉄は非ヘム鉄の数倍高いことがわかっています。
特徴
- 成人の体内には3〜4gほどの鉄がある
- 体内の7割程度の鉄が血液に含まれている
- 鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄がある
- 大半が効率よくリサイクルされるしくみになっている
- 不足した場合に備えて肝臓・骨髄などに蓄えられる
- 基本的に排泄や月経などで失われた分を食事から摂る
働き
- ヘモグロビンの材料として酸素を運ぶ
- 筋肉中のミオグロビンの材料となって、筋肉に酸素を運んだり貯蔵する
- 酵素の構成元素として、細胞のエネルギー産生やDNA合成にも関わる
体内に入った鉄は...
小腸で吸収され血液中に運ばれます。体内余剰分はたんぱく質と結合して、フェリチンとして肝臓・骨髄などに蓄えられます。赤血球の中のヘモグロビンは、赤血球が寿命(約120日)を迎えると脾臓で壊され、ヘモグロビンから出た鉄はリサイクルされます。
CKDでの鉄代謝の変化
CKDになると、赤血球をつくるホルモン(エリスロポエチン)が減少し、貧血(腎性貧血)が起こります。さらに、腎臓の機能の低下に伴って鉄分をうまく吸収・利用できないことも、貧血を悪化させる原因となっています。
鉄の食事摂取量基準(mg/日)
左にスワイプすると表全体を見ることができます。
| 性別 | 男性 | |||
|---|---|---|---|---|
| 年齢等 | 推定 平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
| 0~5(月) | - | - | 0.5 | - |
| 6~11(月) | 3.5 | 4.5 | - | - |
| 1~2 | 3.0 | 4.0 | - | - |
| 3~5 | 3.5 | 5.0 | - | - |
| 6~7 | 4.5 | 6.0 | - | - |
| 8~9 | 5.5 | 7.5 | - | - |
| 10~11 | 6.5 | 9.5 | - | - |
| 12~14 | 7.5 | 9.0 | - | - |
| 15~17 | 7.5 | 9.0 | - | - |
| 18~29 | 5.5 | 7.0 | - | - |
| 30~49 | 6.0 | 7.5 | - | - |
| 50~64 | 6.0 | 7.0 | - | - |
| 65~74 | 5.5 | 7.0 | - | - |
| 75以上 | 5.5 | 6.5 | - | - |
| 性別 | 女性 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢等 | 推定 平均 必要量 (月経なし) |
推奨量 (月経なし) |
推定 平均 必要量 (月経あり) |
推奨量 (月経あり) |
目安量 | 耐容 上限量 |
| 0~5(月) | - | - | - | - | 0.5 | - |
| 6~11(月) | 3.0 | 4.5 | - | - | - | - |
| 1~2 | 3.0 | 4.0 | - | - | - | - |
| 3~5 | 3.5 | 5.0 | - | - | - | - |
| 6~7 | 4.5 | 6.0 | - | - | - | - |
| 8~9 | 6.0 | 8.0 | - | - | - | - |
| 10~11 | 6.5 | 9.0 | 8.5 | 12.5 | - | - |
| 12~14 | 6.5 | 8.0 | 9.0 | 12.5 | - | - |
| 15~17 | 5.5 | 6.5 | 7.5 | 11.0 | - | - |
| 18~29 | 5.0 | 6.0 | 7.0 | 10.0 | - | - |
| 30~49 | 5.0 | 6.0 | 7.5 | 10.5 | - | - |
| 50~64 | 5.0 | 6.0 | 7.5 | 10.5 | - | - |
| 65~74 | 5.0 | 6.0 | - | - | - | - |
| 75以上 | 4.5 | 5.5 | - | - | - | - |
| 妊婦 (付加量) 初期 |
+2.0 | +2.5 | - | - | - | - |
| 妊婦 (付加量) 中期・後期 |
+7.0 | +8.5 | - | - | - | - |
| 授乳婦(付加量) | +1.5 | +2.0 | - | - | - | - |
出典:厚生労働省『「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書』
欠乏した場合
鉄が不足すると、赤血球・ヘモグロビンが減ることで酸素運搬力が低下し、典型的には「疲れやすい」「めまい」「動悸」「顔色が青白い」などの症状が現れます。特にCKDをもつ方は、症状が軽くても貧血が進行しやすい傾向があります。
摂りすぎないためには
鉄は、通常の食事をしていれば摂りすぎることはありませんが、サプリメントなどで過剰に体に溜まると肝臓・心臓・腎臓に負担をかける可能性があります。特に腎臓の機能が低下している場合は排出がうまくいかず、体に蓄積することがあります。
さまざまな病気と鉄
鉄分が不足すると、特に若い女性では骨がもろくなる(骨粗鬆症)リスクを高めることがわかっていますが、これは普段から鉄分をしっかり摂ることで防げると考えられています。
CKDをもつ方には腎性貧血がよく見られます。この貧血が進行すると、腎臓や心臓の機能がさらに悪くなる原因となるため、貧血の適切な管理がとても重要です。血液検査の結果で鉄分が足りていないことが分かった場合、鉄剤を使って治療することが推奨されています。
鉄を多く含む食品
肉類:豚レバー、鶏レバー など
魚介類:しじみ、赤貝、まいわし、あさり など
その他:レンズ豆、いんげん豆(乾燥)、がんもどき、納豆、菜の花、小松菜 など
亜鉛(Zn)

亜鉛の主な特徴と働き
亜鉛は、酵素作用、たんぱく質合成、細胞分裂、免疫機能などに幅広く活躍するミネラルです。300種類以上の酵素に含まれており、体の機能を正常に保つ働きをしています。
特徴
- 成人の体内には約2gの亜鉛がある
- 鉄に次いで多い微量ミネラル
- 95%が細胞内にあり、幅広く分布している
- 胎児や乳児の発育や生命維持に重要な役割を果たしている
働き
- たんぱく質の合成に関わる
- インスリンの合成や分泌に関わる
- DNAの合成に関わる
- 味覚を正常に保つ
- 免疫機能に関わる
体内に入った亜鉛は...
食事で摂った亜鉛は小腸から吸収されて血液中に入り、体内の代謝に使われます。不足すると赤血球生成や免疫機能に影響します。亜鉛は尿ではほとんど排出されず、便や汗など体から剥がれ落ちるものと一緒に失われます。
CKDでの亜鉛代謝の変化
CKDをもっている方は、尿や血液中の亜鉛が不足しているとの報告があり、この亜鉛不足が腎臓の働きをさらに悪くするリスクがあると考えられています。病気の進行に伴って体の中の亜鉛が低下します。進行した場合は亜鉛欠乏症になりやすく、透析をしている方の半数以上が亜鉛欠乏症という報告があります。
亜鉛が不足すると、鉄や銅と同じように、貧血や免疫力の低下、栄養状態の悪化につながることも指摘されています。
亜鉛の食事摂取量基準(mg/日)
左にスワイプすると表全体を見ることができます。
| 性別 | 男性 | 女性 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢等 | 推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
| 0~5(月) | - | - | 1.5 | - | - | - | 1.5 | - |
| 6~11(月) | - | - | 2.0 | - | - | - | 2.0 | - |
| 1~2 | 2.5 | 3.5 | - | - | 2.0 | 3.0 | - | - |
| 3~5 | 3.0 | 4.0 | - | - | 2.5 | 3.5 | - | - |
| 6~7 | 3.5 | 5.0 | - | - | 3.0 | 4.5 | - | - |
| 8~9 | 4.0 | 5.5 | - | - | 4.0 | 5.5 | - | - |
| 10~11 | 5.5 | 8.0 | - | - | 5.5 | 7.5 | - | - |
| 12~14 | 7.0 | 8.5 | - | - | 6.5 | 8.5 | - | - |
| 15~17 | 8.5 | 10.0 | - | - | 6.0 | 8.0 | - | - |
| 18~29 | 7.5 | 9.0 | - | 40 | 6.0 | 7.5 | - | 35 |
| 30~49 | 8.0 | 9.5 | - | 45 | 6.5 | 8.0 | - | 35 |
| 50~64 | 8.0 | 9.5 | - | 45 | 6.5 | 8.0 | - | 35 |
| 65~74 | 7.5 | 9.0 | - | 45 | 6.5 | 7.5 | - | 35 |
| 75以上 | 7.5 | 9.0 | - | 40 | 6.0 | 7.0 | - | 35 |
| 妊婦(付加量)初期 | +0.0 | +0.0 | - | - | ||||
| 妊婦(付加量)中期・後期 | +2.0 | +2.0 | - | - | ||||
| 授乳婦(付加量) | +2.5 | +3.0 | - | - | ||||
出典:厚生労働省『「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書』
欠乏した場合
亜鉛が不足すると、味覚異常・免疫低下・傷の回復が遅れたり、赤血球をつくる力が弱まったりする可能性があります。
摂りすぎないためには
一般的には食品からの摂取で過剰になることは少ないですが、サプリメントなどで亜鉛を大量に摂ると、急性中毒を引き起こすことがあります。また、銅の吸収を妨げたり、鉄の吸収阻害で貧血になることもあります。
さまざまな病気と亜鉛
亜鉛摂取と生活習慣病予防の関係はデータが不足しており、予防のための目標量(下限値)は設定されていません。
CKDや糖尿病など、すでに病気をもっている場合は、亜鉛サプリメントが症状を改善する可能性が示されています。
亜鉛を多く含む食品
肉類:豚レバー、牛肩ロース など
豆類:レンズ豆、そら豆、高野豆腐、納豆、木綿豆腐 など
魚介類:牡蠣、うなぎ など
その他:卵、ご飯、パルメザンチーズ など
銅(Cu)

銅の主な特徴と働き
銅は体内に少量しか存在しませんが、エネルギーをつくる酵素や抗酸化酵素に含まれ、血液や神経・骨・免疫と幅広く関わる微量ミネラルです。
特徴
- 成人の体内には約80mgほどの銅がある
- 体内の65%程度の銅が筋肉と骨に含まれている
- 銅は小腸から吸収され、摂取量が少ないほど吸収力が高く、増えるほどに吸収力は低下する
- 亜鉛と同様に多くの酵素に含まれており、さまざまな働きをしている
働き
- 鉄とともに赤血球の合成に関わる
- 鉄を全身に届ける助けになる
- 抗酸化作用のある酵素の成分になる
- コラーゲンの合成に働きかけ、骨や皮膚、血管を強くする
体内に入った銅は...
摂取された銅は約6〜7割が腸で吸収され、骨や細胞内に運ばれます。銅の血中濃度の調整は肝臓が担っており、ホルモンの働きで血液中の銅濃度を調節しています。
CKDでの銅代謝の変化
CKDをもつ方は亜鉛が不足しやすく、亜鉛補充療法で貧血が改善するという報告があります。しかし、亜鉛が過剰になると銅の欠乏を誘発します。
銅の食事摂取量基準(mg/日)
| 性別 | 男性 | 女性 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢等 | 推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
| 0~5(月) | - | - | 0.3 | - | - | - | 0.3 | - |
| 6~11(月) | - | - | 0.4 | - | - | - | 0.4 | - |
| 1~2 | 0.3 | 0.3 | - | - | 0.2 | 0.3 | - | - |
| 3~5 | 0.3 | 0.4 | - | - | 0.3 | 0.3 | - | - |
| 6~7 | 0.4 | 0.4 | - | - | 0.4 | 0.4 | - | - |
| 8~9 | 0.4 | 0.5 | - | - | 0.4 | 0.5 | - | - |
| 10~11 | 0.5 | 0.6 | - | - | 0.5 | 0.6 | - | - |
| 12~14 | 0.7 | 0.8 | - | - | 0.6 | 0.8 | - | - |
| 15~17 | 0.8 | 0.9 | - | - | 0.6 | 0.7 | - | - |
| 18~29 | 0.7 | 0.8 | - | 40 | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
| 30~49 | 0.8 | 0.9 | - | 45 | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
| 50~64 | 0.7 | 0.9 | - | 45 | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
| 65~74 | 0.7 | 0.8 | - | 45 | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
| 75以上 | 0.7 | 0.8 | - | 40 | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
| 妊婦(付加量) | +0.1 | 0.1 | - | - | ||||
| 授乳婦(付加量) | +0.5 | +0.6 | - | - | ||||
出典:厚生労働省『「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書』
欠乏した場合
一般的には食品からの摂取で欠乏することは少ないですが、不足すると鉄の利用障害・貧血・骨の異常・免疫低下・神経症状などが出ることがあります。
摂りすぎないためには
銅は、通常の食事をしていれば摂りすぎることはありませんが、サプリメントなどで過剰に蓄積すると肝臓・腎臓・神経に毒性を及ぼす可能性があります。
さまざまな病気と銅
不足している場合で、適切な量を摂れば高血圧の発症リスクは減少しますが、摂取量が増えてくると高血圧のリスクは上がります。摂りすぎは健康に悪影響を与える可能性があります。
銅を多く含む食品
肉類:牛レバー、豚レバー、鶏レバー など
豆類:納豆、木綿豆腐 など
魚介類:牡蠣、いか、たこ など
種実類:カシューナッツ、アーモンド など
その他:そば、ご飯、ココア など
「ミネラルとのおつきあい」シリーズ
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参考
- 五関 正江 (監修)『ビタミン・ミネラルがよくわかる本』つちや書店 (2023/7/4)
- 厚生労働省『「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書』(2025/8 アクセス)
- 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント』(2025/8 アクセス)
- 加藤 明彦 (編集), 竹谷 豊 (編集), 脇野 修 (編集), 北島 幸枝 (編集)『腎臓栄養学』朝倉書店 (2024/4/18)
- 北島 幸枝 (編集, 著)『イラストで楽しくまなぶ 転ばぬ先の生化学:栄養治療に役立つ!栄養素のはたらきがわかる! (ニュートリションケア2023年冬季増刊)』メディカ出版 (2023/12/19)
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