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慢性腎臓病(CKD)と食のリテラシー【第3回】
ミネラルとのおつきあい その①ミネラルことはじめ
2025.3.17
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腎臓病について調べると、食塩(塩化ナトリウム)は控えて、病気が進行したらカリウムに気をつけて、どうやら「骨ミネラル代謝異常」という合併症の心配もあるらしい...、などと、何かと「ミネラル」を見かけませんか?
ミネラルとは、体の中で大切な働きをする栄養素です。1日の推奨摂取量が約100mg以上のミネラルは「多量ミネラル」、100mg未満のものは「微量ミネラル」と分類されています。
- 多量ミネラル
- ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素
- 微量ミネラル
- 鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルト
そこで、私たちの体で不可欠な役割を担うミネラルについて、具体的な働き、足りなかったらどうなるかなど、ちょっと掘り下げてみます。
ミネラルは、慢性腎臓病(CKD)と関係が深い
以下の2点の図は、栄養素として口から摂取するもの、CKDに伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)という合併症による体の変化を示した図です。ミネラル、またはミネラルの名前が入った病状を強調してみました。
①CKDと特に関係の深いエネルギー・栄養素
厚生労働省『「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(4)慢性腎臓病(CKD)』より引用改変
②CKDによるリンおよびカルシウム調節系の破綻
日本腎臓学会 編集『CKD診療ガイド2024』より引用改変
③その他
CKDで顕著に尿の量が減ると高カリウム血症になるなど、さまざまな要因でカリウムの濃度異常が起きます。
低マグネシウム血症はCKDの人には多く見られ、マグネシウム不足はCKDの進行に関与する可能性も指摘されています。
腎臓が作るエリスロポエチンの量が低下して起こる合併症の腎性貧血に加えて、CKDでは鉄欠乏性貧血も併発することがあります。貧血は脳卒中など、さまざまな合併症のリスクを高めます。
亜鉛やセレンなどもCKDでは不足してしまいます。たんぱく質やリンを多く含む食品にはセレンも多く含まれているため、食事制限でセレンの摂取量も減ってしまうことなどが原因なんだそうです。
もちろん、CKDに限らず、ミネラルの過不足はいずれも私たちの健康に大きな影響を与えます。
たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルは五大栄養素といい、生命活動を維持するために必要な成分です。ミネラルを含むすべての栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
ミネラルとは
栄養素の種類と働き
体を作り、健康の維持に必要な5つの栄養素は、 それぞれが相互に関わり合っています。五大栄養素のうちの3つ、三大栄養素のたんぱく質、脂質、炭水化物はエネルギーを生み出す栄養素、残りのビタミンとミネラルは体の調子を整える栄養素です。
五関 正江 (監修)『ビタミン・ミネラルがよくわかる本』より引用改変
ミネラルとは体の調整に欠かせない栄養素
人間の体の約96%は主要な4元素で構成されており、多い順に酸素、炭素、水素、窒素です。残りの約4%の元素がミネラルで、無機質とも呼ばれています。
分類 | 名前 | 主な働き |
---|---|---|
多量 ミネラル | ナトリウム | 細胞内外の水分量や浸透圧の維持、神経伝達の維持 など |
カリウム | 細胞内外の水分量や浸透圧の維持、血圧の調整 など | |
カルシウム | 骨や歯の構成成分、神経の興奮を調整、筋肉の収縮に関与 など | |
マグネシウム | 骨や歯の構成成分、酵素の活性化、筋肉の収縮に関与 など | |
リン | 骨や歯の構成成分、細胞の構成成分、エネルギー代謝、pHの調節 など | |
硫黄 | ケラチンの構成成分 など | |
塩素 | 胃液の成分 など | |
微量 ミネラル | 鉄 | ヘモグロビンの材料、酵素の成分 など |
亜鉛 | たんぱく質の合成、味覚を正常に維持 など | |
銅 | 赤血球の合成、酵素の構成成分、コラーゲンの合成 など | |
マンガン | 骨の形成、酵素の構成成分 など | |
ヨウ素 | 甲状腺ホルモンの構成成分 など | |
セレン | 抗酸化作用、酵素の構成成分 など | |
クロム | インスリンの働きを助ける など | |
モリブデン | 酵素の構成成分 など | |
コバルト | ビタミンB12の成分 |
ミネラルとのおつきあい その②から、それぞれのミネラルの具体的な働きや特徴、過不足が招くことなどをご紹介します。
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参考
- 日本腎臓学会 編集『CKD診療ガイド2024』東京医学社 (2024/7/9)
- 加藤 明彦 (編集), 竹谷 豊 (編集), 脇野 修 (編集), 北島 幸枝 (編集)『腎臓栄養学』朝倉書店 (2024/4/18)
- 五関 正江 (監修)『ビタミン・ミネラルがよくわかる本』つちや書店 (2023/7/4)
- 厚生労働省『「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書』(2025/3 アクセス)
- 文部科学省『食品成分データベース』(2025/3 アクセス)
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