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【第6話・最終回】再移植
2019.2.25
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順調な腹膜透析生活に突然訪れた、移植の話
移植から33年後に腎機能が低下したことにより腹膜透析を開始し、トラブルもなくとても順調にできていました。順調であるからこそ、次のステップに向かうことに躊躇がありました。
23歳の時の最初の生体腎移植は父からもらいました。その頃の血液透析は大変辛いものだったので生きることが苦痛でしかなく、腎移植の話は救いの手が差しのべられたと感じました。ですから、ためらいもなく父からの腎臓の提供を受けました。
そもそも最初の腎移植後、腎不全に至ってしまった頃の主治医から「2回目の腎移植のことは考えなくてもいい」と助言があったこともあり、私は「腹膜透析の次はもう血液透析を導入して生涯を閉じるしかないのだなぁ…」と漠然と思っていました。
ところが、それまでの主治医の転勤に伴い主治医が変わり、その主治医からは「移植はどうしますか?」と尋ねられました。衝撃的な言葉を投げかけられたと感じ、唐突に聞こえました。
2回目の腎移植のことは考えてもいなかったので、とても戸惑い、それが苦悶の悩みの始まりとました。
突然の夫の意思表明
娘が「私の腎臓をあげるよ」と言ってくれていました。有り難いけれどあり得ないことなので、それ以上腎移植の話は家族ともしていませんでした。もちろん夫との間にも腎移植の話題は上がりませんでした。
しかし新しい主治医から「移植はどうしますか?」と尋ねられたことをきっかけに、考えていなかった腎移植のことを少しだけ考えるようになりました。献腎移植の登録のため夫も一緒に病院に行ってもらい、説明を受けました。そしてそこから、大きく人生が旋回していきました。
献腎移植の登録が済み、担当医から「何か質問はありますか?」と問われ、私は「何にもないです」と答えました。次に夫が質問に答える時、「血縁関係はありませんが、私は腎臓の提供をできますか?」と夫は医師に思ってもいなかった事を話し始めていました。なんと、腎臓提供を提案したのです。
リスクを超えて2回目の生体腎移植
夫と生体腎移植の話はしてこなかったので、「突然何を言い出すの?」と私には本当に驚きしかありませんでした。
しかし夫の言葉を聞いた医師は次のステップに向かい始め、夫もその気になっていました。私は腎移植の方向へ話がトントン進むことが怖くて仕方がありませんでした。
でも、さまざまな人からのアドバイスや励ましがあったから、夫の想いを有り難く受け取る気持ちになり、決意することが出来ました。
医師からは、まず夫の腎臓が適合するかの検査が必要であることや、どんなに奥さんに腎臓をあげたくても、検査結果によっては駄目な場合もあることなどを夫に伝えていました。
しかも2回目の腎移植は免疫学的ハイリスクとのことでした。
さらに子供を出産していることもあり、抗体が出来ていて移植しても拒絶反応や血液透析をしながら移植腎の様子を見る場合もあるなどと諸説明もあり、入院期間は3ヶ月間と言われました。
手術前の免疫抑制剤の大量投与や、リツキサンの点滴、血漿交換などの治療をした後、2018年8月28日に夫婦間生体腎移植を行いました。
移植当日は、両親、私の弟妹夫妻、子供達が病院に駆けつけてくれました。
ドナーである夫は順調に予定時刻で手術が終わったようでしたが、レシピエントである私は、予定終了時刻よりだいぶ経ってから手術が終わったようです。原因は過去に何度も開腹して臓器が傷んでいたため、慎重に手術をしてくださったからだと後で知らされました。
多くの関係者の方々のお陰で大手術も大成功したと思っています。感謝でいっぱいです。
退院後、そしてこれから
3ヶ月と言われていた入院期間は、結局順調に過ごせたため1ヶ月で退院できました。
手術後は、貧血、ヘマトクリット値、アルブミンが低くて輸血や輸液も行いました。これは、免疫抑制剤(セルセプト)の副作用でもあったようでした。それでも腎機能(クリアチニン値)は0.6mg/dLと、とても良くて素晴らしい結果が出ました。
自宅に戻ってからは、失った体力を戻すことと感染症に注意しつつ、少しずつ体を動かしています。足の筋力の低下もありウォーキングもままなりませんが、日々頑張っています。
免疫抑制剤は、セルセプト250mgを朝晩、グラセプター 5mg 朝のみ、サーティカン 0.5mgを朝晩。ステロイドは、メドロールを2mg朝のみ服用しています。これらの薬の副作用は、高血圧、コレステロール値の上昇、下痢、脱毛があります。また、BKウイルス(腎炎を起こすウイルス)も発生していますが、今のところ腎機能に悪影響は及んでいないようです。
免疫抑制剤は減薬できないので補佐的な薬剤を処方してもらい、高血圧、コレストロール値、下痢症状は安定し始めています。
髪の毛は脱毛してかなり薄くなってしまいましたが髪型でカバーしている現状です。
2月でやっと術後6ヶ月を迎えます。まだまだ先は長いのでしっかりと薬の管理や体調管理、水分補給をしています。
ドナーである夫は術後6日で退院してより活動的に、元気に過ごしています。
最初こそパンツが傷に当たって痛いと言っていましたが、最近は傷も目立たなくなったのを見て、1回目の移植での父の時と違って傷も小さくなったと感じています。
これからの人生は、夫婦でお互いに声かけあって元気に過ごせるよう願っています。
思ってもいなかった2回目の生体腎移植ができたことの福運に感謝しつつ、毎日を過ごして行きたいと思っています。
夫婦二人三脚、共に歩んでいきます。
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