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わたしとの対話~わたしの道しるべ

【第4話】人生最大のどん底〜透析再導入

2022.3.2

文:もあぞう

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人生最大のどん底

ウソ、誰かウソだと言って…わたしに与えられた試練は透析再導入という現実だった―。

福井県に住んでいたが、中学1年生の冬に受けた献腎移植のフォローのため東京まで通うのは大変だということで地元の病院に通っていた。東京の病院にも年2回通っていたが、そこで問題になったのは福井と東京の医師による治療方針の違い、具体的には免疫抑制剤服用量の違いだった。2人の医師の間でどうしていいか分からず苦しんだ。

その時期は看護師の国家試験のラストスパートで、頭の中は体調のことと国家試験のことでいっぱいだったが、腎臓の機能が徐々に低下していき、本当にこのままではダメだと地元の医師に再度自分の想いを伝えた。しかし医師からは「患者は医者の言うことを聞いていればいいんだ」と言われ、わたしはそのまま診察室を出て東京の病院へ向かい、即入院となった。


再びあの場所へ

「今は腎毒性の状態。残念ながら将来、透析に戻らなければならない」と東京の先生は残念そうに伝えた。その翌年、移植して10年になる年に、わたしは透析再導入となった。

ショックだった。身体から力が抜けていった。
いままでの自分はいったい何だったんだろう?何のために移植をしたのか?

わたしが移植を受けたということは、不幸にも亡くなった方がいて、その深い悲しみの中、腎臓の提供を決意した家族がいるということ。
わたしは腎臓を、善意をムダにしてしまったのだと自分を責めた。

これから何のために生きるのだろう?こんな辛い想いをするためなのか?
またあの透析をしなければいけないなんて。週3回4~5時間の時間の拘束。太い痛い針を刺され、あの制限のある生活をまた送らなければならないなんて…。

しかし当時、既に看護師として働いていたためしっかり頑張らなければという想いがあった。
透析をしていても、わたしはひとりの人間なんだ。透析をしていても看護師はできると思っていた。


わたしは透明人間になった

働いていた病院に看護師として働き続ける意思があることを伝え、理解を求めた。
しかし、「病人には病人の生き方があるでしょ」「ここは病院で患者を雇うところではない」という耳を疑う言葉が返ってきた。同じ医療従事者として恥ずかしく思うと同時に、とても悔しい思いをした。

仕事をさせてもらえず、わたしの居場所はなくなった。精神的に参り、こんな想いをしてまでここにいる意味はないと思い職場を離れた。
わたしは全てを失った。健康も仕事もなく友達と逢うこともなく、誰からも必要とされず、わたしはここにいるのに誰も気づかず通り過ぎるようで、透明人間になった気分だった。その現実を受け入れるのに苦しんだ。わたしには生きている意味がない。誰も信じることができずどん底だった。わたしはひとりぼっちになった。

涙が溢れる夜もあった。たくさん泣いた。
教科書を見ても透析は延命治療と書かれ、わたしはただ命を延ばすために生きるのか?わたしはなぜ産まれ、なぜ生きるのか?誰のために生きるのか?息ができないくらい苦しかった。

もし、今この苦しみを誰かに話したら、きっとなぐさめ、励ましてくれるだろうと思った。だけどその瞬間一時的に楽になるかもしれないが、これから先また同じ問題にぶつかった時、また苦しむとも思った。
誰かに話すことは自分から逃げているようで、何の解決にもならないと思った。だったら今この問題に向き合おうと、答えは必ず自分の中にあるはずだと、自分に問いかけていた。

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もあぞう

もあぞう
小学3年生で透析導入し、中学1年で献腎移植を東京で受ける。移植後10年で透析再導入になり今年で25年。自分がされて嬉しかったことを患者さんにしてあげたいと看護師の資格を取得。
2002年詩集『ぞうに咲くひまわり』、2012年絵本『もあのきもち』、2014年詩集『ぞうの恩送り』書籍出版。看護師として働いたのち、現在会社員。余暇はペーパークイリング、自然を眺めたりしながら、創作活動に励んでいる。

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