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【第4話】出産
2019.9.17
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結婚した翌年の7月頃妊娠がわかり、無理をしないためクリニックの仕事を辞めました。出産・育児の日々の始まりです。
妊娠高血圧症候群を気遣いながらの生活
妊娠してからの注意点として「くれぐれも太らないように、できれば4kg増くらいに抑えるように」と言われました。「4kg増」には驚きました。妊婦さんは普通に8kg〜10kgくらい増えると聞いていたからです。やはり腎臓の病気がある私達は、普通の妊婦さん以上に妊娠高血圧症候群(かつては「妊娠中毒症」と呼ばれていました)になりやすいようです。
十分に気をつけようと思ってはいたものの、つわりもほとんど無かった私はいつもよりも食欲があり、とてもお腹が空いていました。抑えているつもりでしたが、検診の度に体重が増えていきました。
これではマズイと思い、既に4kg増えていた時点から、頑張って低カロリー食にしたうえでコンニャクや海藻類やキノコ類などで空腹を満たしていました。その甲斐があり、最終的には何とか5kg強増くらいに抑えることができました。
その後、8ヶ月頃の検診時に「もう子宮口が開いてしまっているから、今日はこのまま入院してください」と言われました。
当時は、一時間半くらいかけて自分で車を運転して一人で通院していました。その日は入院の用意などしていなかったので、一旦帰ることにしました。この状況でも自分では大丈夫だという自信があったのですが、今考えると自分で車を運転して一人で移動するのはちょっと無謀だったかもしれません。
帰ってから入院の支度をして、翌日に夫に病院まで送ってもらいました。予定日までまだ2ヶ月あったので、1日でも長くお腹にいてもらうため、シャワー・トイレ以外はベッドで安静にしていなければなりません。そうして体調やデータを見ながらの出産を待つ日々を過ごしました。
全身麻酔による帝王切開で出産
そうこうしているうちに私の血圧とクレアチニン値は徐々に上がっていきました。クレアチニン値と子供の成長具合を見極めて、いつ帝王切開手術を行うかというところまできました。
移植者の出産は、確か私で30例目くらいだったと記憶していますが、それぞれの状況により自然分娩か帝王切開の選択が違うようでした。
私の場合は血圧も高めでクレアチニンも上昇し、妊娠高血圧症候群が出たので帝王切開になりました。しかも局所麻酔ではなく全身麻酔による手術になったのです。
クレアチニン値が3.0まで上がり、子供の体重も2,500gを越えたため、出産予定日の40日前の日に手術が決まりました。
手術後に目が覚めると病室に戻っていました。夫は傍らにいましたが、赤ちゃんはいません。私は産声も聞いていませんでした。
夫から、麻酔のせいで出産直後は産声をあげなかったが、すぐに泣き出したことを聞き安心しました。夫に抱っこされた赤ちゃんの写真も見せてもらいました。
間もなく看護師さんが赤ちゃんを連れてきてくれて初めましての対面となりました。2,550gの小さくておサルさんみたいな男の赤ちゃんでした。本当に可愛かったのですが、残念ながらその日はお世話が出来ませんでした。
母親としての願い
出産翌日から赤ちゃんのお世話が始まりました。痛みで歩くのもやっとでしたが、慣れないながらもミルクを飲ませて、ゲップをさせて、オムツを取り替える、日々変わっていく顔をみながら新米ママとして頑張りました。
私はたくさんの薬を服用していたので、母乳は一滴もあげられませんでした。すぐに母乳を止める薬も出されました。
一般的に、「赤ちゃんには初乳がとても大切」だとか、「母乳が出なくて苦しんだり悲しんだり罪悪感を持ったりした」という話をよく聞きますが、私にはそのような感情はありませんでした。最初から覚悟していたのもありますが、とにかく無事に生まれてきてくれたこと、もうその喜びと感謝だけしかありませんでした。確かに母乳は大切ですが、母乳かミルクかということよりも無事に生まれて健康に育って欲しい、ただそれだけを思っていました。
そんな願いが届いたのか、退院後も息子はしっかりミルクを飲んで順調に体重も増えて、良く眠り夜泣きも少なく、母親としては楽な乳児期だったと思います。
出産後はすぐにクレアチニンも正常値に戻り安心していたのですが、出産後3ヶ月を過ぎた頃から再び少しずつクレアチニンが上がってきました。腎臓移植の拒絶反応です。1週間ほど入院して早めに点滴治療を行いましたが、あまり効果はありませんでした。移植してから3年経っているため慢性拒絶反応になり、徐々にクレアチニンが上がって、何年後かはわからないけれどきっと移植腎は駄目になるだろうなと、うっすらと覚悟しました。 ただ、子育ては始まったばかり、出来るだけ長持ちして欲しいと、腎臓にお願いするしかありませんでした。
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