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じんラボリサーチ

【第6回】移植率わずか1%の献腎移植、
レシピエントとして命を受け継ぐ覚悟について考える

2017.7.24

文:じんラボスタッフ

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image 出典:公益社団法人日本臓器移植ネットワーク
脳死臓器移植の分析 平成28年(2016年)12月末現在
https://www.jotnw.or.jp/datafile/offer_brain.html (2017.6アクセス)

実施概要

調査目的

2010年7月の改正臓器移植法の全面施行により、15歳未満の子供も含め本人の臓器提供の意思が不明の場合、脳死でも家族の同意があれば臓器提供が可能になったことで、脳死下臓器提供数が大幅に増えると期待されていました。 しかし、臓器提供数は2010年をピークに増加がみられません。期待された脳死下臓器提供数は徐々に増えてきているものの、心停止後の提供が改正前と比較して減少していることから全体数が伸び悩んでいます。
日本の臓器提供数は世界と比較しても著しく低い状況です。
1999年に厚生労働省は、臓器移植の一層の定着・推進を図るため、また移植医療に対する理解と協力の普及啓発を行うことを目的に、毎年10月を「臓器移植普及推進月間」と定め、今年で18年目を迎えます。
今回はこの「臓器移植普及推進月間」をレシピエント側も臓器移植と向き合う期間と捉え、亡くなられた方から腎臓の提供を受ける「献腎移植」にテーマを絞り、腎臓病・透析患者さんの意識調査を行いました。

調査方法WEBアンケート
調査エリア全国(内東京在住者27名:24.8%)
調査対象腎臓病(ステージG4:保存期腎不全)・透析患者 男女年齢不問
調査期間2016年9月30日(金)〜10月7日(金)
有効回答数86名(内透析患者80名:93.0%)

調査対象詳細

性別
男性 50 58.1%
女性 36 41.9%
年代
〜30代 9 10.5%
40代 40 46.5%
50代 26 30.2%
60代 10 11.6%
70代 1 1.2%
80代〜 0 0.0%
腎臓病との関わり
CKDステージG4(保存期腎不全) 6 7.0%
CKDステージG5(透析を受けている) 80 93.0%
透析歴
1年未満 9 10.5%
1〜2年 4 4.6%
3〜5年 12 14.0%
6〜10年 20 23.2%
11〜20年 27 31.4%
21〜30年 7 8.1%
31年以上 1 1.2%
透析していない 6 7.0%

日本の臓器提供への意識

臓器移植できるのは心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸の6つの臓器と角膜です。
そのうち腎臓・膵臓・肝臓は、一部を摘出しても提供した人の生命を維持できるため、健康な親族からの提供による「生体移植」が可能です。腎臓移植にはこの「生体腎移植」と、亡くなられた人(脳死または心停止後)からの臓器提供による「献腎移植」があります。

公益社団法人日本臓器移植ネットワーク(以下 JOT)が行った「臓器提供の意思表示に関する意識調査(2016年)」によると、臓器提供の意思表示に関して「既に意思表示している」は13.6%、「意思表示をしてみたい」は27.0%です。一方、「意思表示したいと思わない」は24.4%、「わからない」は35.0%と、半分以上が現状で表示の意思がないという結果でした。
身近にレシピエントがいないと臓器提供を自分ごととして捉えることは難しいのかもしれません。また、例え本人が提供に対して前向きでも、残された身内の心情なども考えると意思表示をするまでには至らない、という方も決して少なくないのではないでしょうか。


献腎移植率はわずか1%

では、臓器移植を受ける側のレシピエントの意識はどうでしょうか。
日本における移植希望登録者数は全体で14,244人(2016年末「JOT」データ)でした。そのうち全体の90%以上を占める12,828人が腎臓移植希望者です。しかし透析を受けている腎臓病患者は国内に32万人以上おり、その5%にも満たない方しかレシピエント登録をしていないにも関わらず、献腎移植を受けられたのは年間で141人(膵腎同時、肝腎同時は含まず)、移植登録者に対する移植率は1.09%です。
これはドナー数が圧倒的に少ないことも大きく影響していますが、レシピエント側は「献腎移植」についてどのように感じているのでしょうか。

(Q1)あなたは献腎移植をしたいと思いますか(n=86)

1 したい 32 (37.2%)
2 したくない 26 (30.2%)
3 分からない 28 (32.6%)

(Q2)あなたは日本臓器移植ネットワーク(JOT)に登録していますか(n=86)

1 毎年登録している 23 (26.8%)
2 以前は登録していたが今はしていない 11 (12.8%)
3 献腎移植の希望はないので登録したことがない 34 (39.5%)
4 JOTのことを知らないため登録したことがない 18 (20.9%)

内訳をみると、Q1の「献腎移植をしたいと思う」32名(37.2%)のうち、約半数の15名の方がQ2では「今まで移植希望の登録をしたことがない」との回答でした。また、Q2の「JOTに移植希望登録し更新している」23名(26.7%)のうち6名の方は「献腎移植を受けたいのかわからない」と回答しており、その答えは必ずしも一貫しておらず献腎移植対する迷いや矛盾した感情が交錯している様子がうかがえました。

さらにQ2の「JOTに移植希望登録し更新している」23名(26.7%)のうち、5名の方はQ4では「今日移植候補者として連絡があっても今回は見送る」と回答しており、Q5の見送る理由については「心の準備が出来ていない」や「急に仕事を休めない」などの回答がありました。

(Q3)JOTに登録している、または登録していたことがある方:
移植候補者として、今までに連絡を受けたことがありますか(n=34)

1 連絡を受けたことがある 4 (11.8%)
2 登録しているが連絡を受けたことはない 30 (88.2%)

(Q4)JOTに登録している、または登録の意思がある方:
もし今日突然、移植候補者として意思確認連絡があったら受けますか(n=54)

1 受ける 41 (75.9%)
2 今回は見送る 13 (24.1%)

(Q5)(Q4)で「今回は見送る」と回答した方はその理由をお答えください(n=13、回答数38)

1 現在の透析がうまくいって体調が安定している 10
2 心の準備が出来ていない 8
3 急に仕事を休めない 6
4 急には家族の協力が得られない 4
5 手術が怖い 2
6 体調が整っていない(風邪をひいている等) 2
7 その他 6

献腎移植を受けてどう生きるのか、命を受け継ぐ覚悟

献腎移植を受けるためには、まず透析施設からの紹介をうけ、移植施設での移植適合性検査の後、JOTに移植希望登録(新規登録料3万円)が可能です。登録後も年に1度の更新手続きが必要です。 現在の献腎数では移植候補者として選ばれるまでの待機期間は平均約15年と言われており、選ばれないまま生涯を終える可能性もあります。それでもなお移植を受けたいと思うのはなぜでしょうか。

例えば、移植を希望する人に受けたい理由を聞いた場合、多くは「透析にかかる時間から解放されたい」「食事や水分の制約のない生活がしたい」「穿刺が痛くてつらい」など、透析から解放されたいという理由が挙がるのではないでしょうか。

献腎移植は「臓器提供の意思表示」という善意の心で命をつないでもらう医療だということを、強く心に留めておきましょう。

そうすれば、理由はおのずと「バリバリ働きたい」「妊娠・出産をしたい」「パートナーと出会って家庭を築きたい」など、移植後“どう生きたいのか”という目的に変わってくるはずです。透析から解放されることは移植のメリットではありますが、目的ではありません。

移植を受けることがゴールではなくその先にどんな人生を歩みたいのか。目指したいこと、やりたいこと、そんな未来図を想い描くことが、正しい知識の習得、移植を受けるための心と体の準備を整えることにつながり、レシピエントとして命を受け継ぐ覚悟が出来た、と言えるのではないでしょうか。

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