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食生活研究室

腎臓病・透析をしている方にも知っていただきたい、視覚障害と食について
【第4回】視覚障害者とコミュニケーション

2023.1.10

文:ミーナ

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視覚障害のある方の食にまつわる本連載は主に視覚障害者の方の話が中心ですが、腎臓に関する話も時折織り込まれています。

透析をしている方は腎性網膜症や糖尿病性網膜症などによって視力が低下する人が少なくありません。この連載では視覚障害のある人がどのような食問題に陥りやすいのか、またどのように対応していくのかについてもお伝えするほか、病気と向き合って生きていく心構えなどもたくさんお話しいただいていますので、視覚障害の有無に関わらず自分に置き換えて読んでいただけると嬉しいです。

第4回はミーナさんの知り合いの話や聞いた話を基にした、視覚障害とコミュニケーションに関するエピソードです。なお、本連載に登場する人物の名前はすべて仮名、背景情報も個人が特定されないように配慮しています。

(じんラボスタッフ:s.yuri)

弱視の敏則さんの、メニューを暗記している行き慣れたお店の新メニューへの対応

40代男性で弱視の敏則さん(仮名)は、いつも決まったお店でランチを食べますが、特段そのお店を気に入っているわけではありません。若い時から通い慣れているお店で、店内の様子やメニューがすべて頭に入っているため店内で迷うことはありませんし、メニューを見なくても注文できるからです。

しかし、いつも同じお店の同じようなランチでは正直飽きてきてしまいますね。やはり敏則さんも「たまには違う店で食べたいなぁ」と思いつつも、目が悪いと自分で新しいお店を見つけるのは難しいので、結局いつもの店になってしまうのです。

そんな行きつけの定食屋さんで、新しい定食メニューができました。
立て看板にはA定食・B定食・C定食という文字と、それぞれのメニュー写真がありましたが、目の悪い敏則さんは写真を見ても何があるのかよくわかりません。
ひとまずお店に入ってみて店員さんに聞いてみると、A定食はフライ、B定食はハンバーグ、C定食は魚料理だとわかり、敏則さんはA定食を注文しました。

臆すことなく人に尋ねる勇気を持つ

敏則さんは店員さんに聞いて食べたいものを選べましたが、皆さんが同じような立場だったらどうでしょう。

「人に尋ねる」のは、精神的にかなりハードルが高いものです。行き慣れているお店である程度店員さんと顔見知りであれば聞きやすいかもしれませんが、初めて行くお店だったら緊張しますよね。加えて腎臓病の方には出てくるまで中身のわからない食べ物は、塩分やカリウムなどが気になり注文を躊躇してしまうことでしょう。

メガネやルーペ、スマートフォンの拡大鏡などで視力を補えない方はやはり人に聞くしかありません。「恥ずかしい」と思うかもしれませんが、正しい情報を得られた方が危険を回避でき、無用な労力を使わずにすむことが多くあります。

目が悪くなってきている場合は、勇気を出して「目が悪いので助けてほしい」と人に頼れるかどうかが重要です。また、より援助を受けやすくするために、弱視の人でも一定以上目が悪くなってきた時点で白杖を持って出歩くことも有効です。ある程度見える段階では人に聞いたり杖を持つことを躊躇する方が大半だと思いますが、本当に目が悪くなってくると「恥ずかしい」などと言ってられなくなります。

ちなみに私が小学生の頃、盲学校の歩行訓練の授業で指導員の先生に「目が悪くても、口と脚があればどこへでも行ける」と言われましたが、当時は何のために口が必要なのか理解できませんでした。しかし外出の訓練が始まると、買い物や通院などで見えづらくて困ることが多く、しかも当時はスマートフォンの文字拡大アプリはおろか携帯電話も普及していなかったため、困った場合は誰かに聞くしかありませんでした。

最初は人に聞くのが憂鬱で仕方なかったのですが、慣れるに従って少しずつうまく聞けるようになりました。先生が言っていた「口」というのは、コミュニケーション能力や社会性という意味だったのです。


自分の要望をうまく伝えられず…全盲の睦子さんの買い物代行での失敗例

買い物代行イメージ

睦子さん(仮名)は、50代の全盲の女性で一人暮らしをしています。
居宅介護の家事援助のヘルパーさんに週2回ほど入ってもらって、掃除や洗濯、調理や買い物などを手伝ってもらっています。そんな睦子さんは、少し優柔不断な性格です。

生ものを自分で管理するのが難しいため、ヘルパーさんが来てくれる時にお刺身の買い物を頼みました。しかし、要望をうまく伝えられず、ヘルパーさんは睦子さんが欲しかったものとまったく違うものを買ってきてしまいました。

誰かにものを頼む際は自分の要望をしっかり伝える

ただ「お刺身が食べたい」と言われても、スーパーにはさまざまな種類のお刺身があります。どんな種類の魚がよいのか、大きさや値段はどのくらいがよいのか、欲しい商品がなかったらどうしたいのか…、などの要望が無いとお願いされた方は迷ってしまいますね。

視覚障害者は細かいところまで自分の目で見ての判断が難しく、さまざまな場面で店員さんや家族、友人などの目を借りて選ばなければなりません。自分がどうしたいのかを上手に伝えられないと、不満が残る結果となってしまいます。

商品名を覚えるのが難しい人は、前に買った時のパッケージを取っておいて「これと同じものが欲しい」と伝えるケースもありますし、外食ではインターネットであらかじめお店の情報を調べてから出かける人も多いです。

なお、塩分量などを気にする必要がある腎臓病の方は単に「○○が欲しい」という要望に加えて「減塩商品があれば、そちらをお願いします」と伝えたり、量などにも配慮して選んでもらうようにしなくてはいけません。

“人の目”を借りて選ぶ際の伝え方一例

よい例 ダメな例
買い物:お菓子 明治のミルクチョコレートが食べたい 甘いものが食べたい
買い物:お惣菜や弁当 サラダ巻きで、一口ずつ切れているものが欲しい お寿司が食べたい
買い物:日用品 (空になった歯磨き粉のチューブを見せながら)これと同じ歯磨き粉が欲しい 歯磨き粉が欲しい
買い物:洋服 透析室で着られるような着心地がよく、汚れても洗いやすいシャツが欲しい シャツが欲しい
外食の注文(ファミレスを想定) ハンバーグランチが食べたい 何でもよいので何か食べたい

買い物や注文において「何でもよい」と言うのは、頼まれた方が困るのでやめましょう。外食の場合、先ほど紹介した敏則さんのように行きつけのお店であれば、大体どんなものが置いてあるかはよくわかりますが、初めて行くお店などは何があるかよくわからないですよね。
メニューを読みづらい方は同伴者や店員さんにメニューを読んでもらう必要があります。しかし、ページの最初から最後まで読ませるのは相手の負担が大きいので、ある程度はどのようなものを食べたいか決めておいて始めに伝えましょう。

私の場合、お昼時であればランチメニューだけ読んでもらったり、今月のおすすめなどを読んでもらったりする程度にしています。もし「ハンバーグが食べたい」「揚げ物が食べたい」といったように、食べたいものがある程度決まっていれば、その種類の部分を読んでもらいます。

外食での注文や買い物代行に限らず、どのような場面でも「自分はどうしたいのか」と主体性を持ち、社会性を持ってコミュニケーションをうまく取りつつ生活することは、とても重要なことなのです。


「目立つ障害」と「わかりにくい病気や内部障害」の違いについて考えてみる

今回は自分の希望や困っていることを「人にうまく伝える」というコミュニケーションのお話をしましたが、皆さんは腎臓病や透析をしていることを周囲の人にどのくらい話していますか?
家族や友人など親しい人にだけ話しているという方、会社や学校などでもオープンにしているという方、はたまた皆に心配をかけたくないからとあまり人に話していないという方までさまざまでしょう。

これには模範解答はなく、一人ひとりの価値観で決めることなのかなぁと思います。
視覚障害のようにぱっと見でわかる、つまり良くも悪くもかなり目立つ障害の場合、周りの人から援助を受けやすい反面からかいの標的にもなりやすいです。
逆に腎臓病のように一見わからない病気や内部障害の場合は、病気が理由でいじめられたりからかわれたりすることは少ないでしょうが、周囲の人の理解を得て助けてもらうのは難しいのではないでしょうか。
そういう意味では、コミュニケーション能力というものは、目が悪くなくても必要なのだと思います。

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ミーナ

ミーナ
1990年9月生まれです。生まれつき、先天性緑内障という目の病を持っており、幼い頃から弱視で現在はほとんど見えていません。腎臓は2017年に急な体調不良から緊急透析導入となり、今に至ります。原因は不明です。視覚と腎臓の重複障害ですが、日々楽しく生活しています。
趣味は読書で、4時間の透析中に1〜3冊くらいは読んでしまうかなりヘビーな読書家です。

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