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慢性腎臓病(CKD)と食のリテラシー【第1回】
最近目にするさまざまな用語 その①超加工食品や代替食品ってどうなの?
2024.11.25
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パンデミックきっかけの健康に対する意識の増長とともに、食への関心も高まっていますね。以前は目にしなかった用語もあまた見かけるようになりました。
私は非常に食い意地がはっているので食の話題は好きですが、最近は情報が多すぎてなかなか追いつきません。
そこで、食べ物や栄養が良くも悪くも健康や病気に与える影響を過大に評価してしまう「フードファディズム」を取り上げたシリーズの続編として、この「慢性腎臓病(CKD)と食のリテラシー」でそれらの用語を解説しつつ、腎臓病との関係などを整理してみようと思いますので、ぜひおつきあいください。
今回は「加工食品」から「超加工食品(UPF)」、「代替食品」などを取り上げます。
「健康食品」については慢性腎臓病(CKD)とフードファディズム【第3回】気になる「健康食品」と健康のための食品選びの知恵をご覧ください。
加工食品=悪、なの? そもそも加工食品ってなに?
腎臓病の食事療法に関してインターネットで検索したり本で調べたりすると、数多くの媒体で「加工食品はなるべく避けましょう」と記載されていますよね。
ここで質問です、「加工食品」とは一体何なのか正確に言えますか?
加工食品とは
私たちが毎日の食事で利用している食品は、天然の物のみならず、これらに加工・調理を施した物も多く利用されています。食品の多くは長期間保存できません。そのため食品の品質保存・有効利用・安定供給を目的として、いろいろな手段や方法を用いて食品を調味や加熱等したものが加工食品です。近年では栄養素量を改善したり、色・香り・味などの嗜好性を高めるだけではなく、簡便性、調理の短縮化を図ることなども目的とされています。
加工食品の種類
加工食品の種類は、水産練り製品・肉加工品・乳加工品・野菜加工品・果実加工品・油脂食品・嗜好食品・調味料・菓子類・冷凍食品・レトルト食品・缶詰食品・びん詰め食品・インスタント食品等、多岐にわたります。
なんとなく私たちに不安を抱かせる「加工」された「食品」という言葉は、しっかりと調べるとこのように非常に広範囲です。そのため、「加工食品はなるべく避けましょう」を見かけるたびにぼんやりするんです。
例えばスーパーで売っているパン、乾麺、醸造された調味料やビール、たんぱく質調整米だって加工食品です。このように、体に悪いわけではなさそうな食品も数多くあるわけですから。
このように広義な「加工食品」を悪者扱いしないためにも、「塩分や食品添加物を多く含んだ食品」、「リンを多く含んだ水産練り製品」、「ハム・ソーセージ・ベーコン類などの肉加工品」と、努めて食品を具体的に示すほうが良いんだろうな、と思いました。
「肉加工品」は肉惣菜も含むので、果たしてどこまで具体的にすればいいんでしょうね。肉そのものに含まれる有機リンと食品添加物の無機リンのお話、亜硝酸ナトリウムなどの発色剤を用いない「無塩せき」の件など、掘り下げていくと大変なことになりそうです。
超加工食品(UPF)ってなに?
前段で加工食品を取り上げたのも、2010年台後半からよく目にする大型新人(ダークヒーロー?)、「超加工食品(Ultra-processed foods:UPF)」についてお話ししたかったからなんです。
超加工食品という用語は、ブラジルの栄養学者によって2009年に発明されました。栄養などではなく加工度合いで食品を4分類する新しい分類法「NOVA食品分類システム」を発表し、その4番目の最も加工度合いが高いものを超加工食品と定義する、としたのです。
「NOVA食品分類システム」に関しては曖昧な部分も多いため取り上げませんが、ファーストフードやインスタント食品、清涼飲料水やスナック菓子などが超加工食品にあたると考えてください。
超加工食品について検索すると、多く食べる人は心血管疾患による死亡リスクが高い、飽和脂肪酸が多く食物繊維やビタミンの摂取量が少なく食事の質に問題がある、認知症、うつ、大腸がんや早期死亡のリスクが高まる、たばこ並みの依存性がある ― などと恐ろしい報告のオンパレードです。
しかし、これらの情報は出どころが不明なこと、私たちの不安と危機感を煽るような刺激的な内容のものが多く、鵜呑みにしない方が良さそうです。
そうは言っても、ファーストフードやインスタント食品、清涼飲料水やスナック菓子などは食品添加物が多めの食品であることに間違いありません。そしてその数、製品の種類および消費量は確実に増えています。頻繁に利用している自覚がある方は、少し減らしてみることから始めてみましょう。
日本で「超加工食品」が注目され始めたのは、2019年のある週刊誌の記事です。焚きつけるような刺激的な言説、根拠が薄いにもかかわらず「食べてはいけない」「〇〇に効く」などと強く言い切っているものは、私は一歩引いて見るようにしています。
代替食品ってなに?
最近、大豆ミートやグルテンミート、豆乳ヨーグルトなどをよく見かけるようになりました。
それらの食品は「代替食品」と言われるもので、別の原材料を使って特定の食品の味や見た目などに似せて作られた加工食品です。
ちなみに私はガゼイン(牛乳や乳製品に含まれるたんぱく質の一種)をなるべく避けるために、ヨーグルトは豆乳で作られたものを購入しています。
ここで代替食品を取り上げたのには理由があります。代替食品の多くは加工度合いが高い加工食品、「超加工食品」ということになってしまわないか? と考えたからです。
例えば、インポッシブル・フーズ社が手掛ける「インポッシブル・バーガー」だ。大豆タンパク質やポテトタンパク質、ココナツオイル、ひまわり油でできた画期的な人工肉で、本物そっくりに肉汁まで滴る。とはいえ、カロリーと飽和脂肪酸含有量はマクドナルドのハンバーガー「クォーターパウンダー」並み。ナトリウム含有量は6倍に上る。
メーガン・マギー「代替肉バーガーはより健康的? それは誤解です」『ニューズウィーク日本版 2/1号 特集 あぶない超加工食品』株式会社CCCメディアハウス (2022/1/25) p.25
多くの人が、植物性原料から作られる代替肉は本物の肉より健康面で勝っているというイメージを持っていると思います。製品によりますが高たんぱく・低カロリー、コレステロールが少ないなどの点では健康的ですし、そんな売り文句でスーパーなどに並んでいますよね。しかし、代替肉にはナトリウムが多く含まれているという調査結果もあり、普通の肉から切り替えた場合のシミュレーションでは、多くの微量栄養素(ビタミンやミネラル)が不足する可能性があるとのことです。
とは言え、ヴィーガンやベジタリアンの方にとって代替肉は必要なものですし、地球環境への負荷、サステナブルな社会を目指すため、などという点でも有効です。
肉以外で言えばノンアルコールビールもグルテンフリーな米粉パンなども代替食品です。これらも必要なものであることは言うまでもありません。
日本に古くから伝わる精進料理はそもそも代替食品の元祖ですし、肉の代わりの「雁もどき」の工程の複雑さを思えば「超加工」されていますが、比較的ヘルシーな食品ですよね。
加工食品や代替食品とのおつきあい、どうすればいいの?
加工食品と代替食品は「なんとなくヘルシー(アンヘルシー)」という印象だけで取り入たり避けたりせずに、目的を持って選ぶと良さそうです。
カリウムが気になるので果物を食べたいときには缶詰を選ぶ、などという考え方の延長線上に、加工食品や代替食品と上手につきあうヒントがあるような気がします。
- 食事の準備が大きな負担となる場合は冷凍食品を利用する
- 乳製品でおなかを壊すので大豆から作られているものを選ぶ
- 卵アレルギーがあるので代替卵を使う
- アルコールを控えたいのでノンアルコールビールで置き換える
もちろん、代替食品に頼りすぎると良くないこともありますし、「超加工食品」と呼ばれているものは食べないに越したことはありません。代替食品を使う場合、例えばノンアルコールビールの中には人工甘味料が使用されているものもあるため、原材料や栄養成分表示もチェックしながら、QOL(生活の質)と体調とのバランスを取りながら、上手につきあってください。
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参考
- クリス・ヴァン・トゥレケン (著), 梅田 智世 (翻訳)『不自然な食卓: 超加工食品が人体を蝕む』早川書房 (2024/9/19)
- ニューズウィーク日本版 Newsweek Japan 2022年2/1号「特集:あぶない超加工食品」CCCメディアハウス
- e-ヘルスネット(厚生労働省)「加工食品」(2024/11 アクセス)
- 消費者庁「プラントベース食品関連情報」(2024/11 アクセス)
- 朝日新聞SDGs ACTION!「代替肉とは? 注目の理由やメリット、具体的事例、今後の展望を解説」(2024/11 アクセス)
- Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)「代替肉商品の食塩含有量 一部は海水以上という驚きの調査結果に」(2024/11 アクセス)
- スポーツ栄養Web(一般社団法人日本スポーツ栄養協会 公式情報サイト)「代替肉・代替牛乳の消費が拡大すると、ビタミンB12、亜鉛などの不足が増える可能性」(2024/11 アクセス)
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