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自分の病気を人にうまく伝える方法 ~「弱視者いろはカルタ」をご存じですか?
2023.12.25
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自分の病気や症状を人に伝える時、苦労した経験はありませんか? 分かりやすくまとまっているウェブサイトを探したり、簡単な表現に置き換えたり、分かってもらえるだろうかと悩んだり……いろいろな苦労があると思います。
今回は、日本弱視者ネットワーク(旧:弱視者問題研究会)という団体によるカルタ作りの取り組みから、自分の病気を人にうまく伝える方法について考えたいと思います。
腎臓病の方は腎性網膜症や糖尿病性網膜症などによって視力が低下する人が少なくありません。
今回のミーナさんの記事は、カルタを用いて弱視者の状況や困難を伝える取り組みを、病気に対する理解啓発の方法のひとつとしてご紹介いただいています。視覚障害の有無に関わらず読んでいただけると嬉しいです。
(じんラボスタッフ)
当事者の川柳で作られた「弱視者いろはカルタ」
皆さん、「弱視者いろはカルタ」をご存じですか?
普通のカルタと同じように5・7・5の川柳が絵札と文字札で44組あり、これらの川柳は全国の弱視者の会員から募ったものがもとになっています。
なぜこのようなものが作られたのでしょうか? 主な目的は、「弱視者の理解啓発」です。
視覚障害者の約7~8割は「弱視者」ですが、視覚障害というと一般的に「盲目」のイメージが強く、全盲者への理解や支援はある程度進んでいても、弱視者への理解や支援はまだ進んでいません。そんな環境で生きづらさを感じている弱視者の「自分たちの存在をもっと世間に知ってもらいたい」という思いから作られています。
このカルタは、目が悪い人もそうでない人も一緒に遊べるように絵札も文字札も普通のカルタより大きめになっており、札サイズは約15cm×9cm、ハガキくらいの大きさです。そして、ここが肝心なところで、カルタに使われている川柳は弱視者の見え方や感じていること、日常で困っていることを伝える内容となっており、弱視の人が自分の状況を説明するときに引用したり、逆に健常者が弱視者のことを理解するのに役立つように考えられています。
読み札の川柳の内容をいくつかご紹介しますね。
お大きな文字 市民権を 広めたい
街中で点字を見かけることは多くても、大きな文字で表示されている案内板や掲示板はまだまだ少ないですよね。点字を読める視覚障害者は、視覚障害者全体の1割程度に留まり、点字よりも大きな文字の方が助かる弱視者の方が多いのですが、世間にはそのことはあまり知られていません。
きキスをして はじめてわかる 君の顔
弱視者は普段からものを良く見ようとして顔を近づける癖がついている人が多く、これはその一例です。キスをするほど近づかないとあなたの顔がよくわからないということは、弱視者が何かを見る時はべっとりと張り付かないとよく見えないという話です。
そソースかと 間違えかけた 醤油味
ソースと醤油…、これらのように見た目のよく似ているものは間違いやすいという話です。ちなみに私は歯磨き粉と洗顔フォームを間違えてしまい、洗顔フォームを口に入れてしまったことがあります。
ちちくわから 覗いたような 視野狭窄
私が弱視だった時、自分の目の見え方を人に説明する際によく引用した川柳です(笑)。
「目が悪い」というと、すぐに「視力が悪い」とイメージする人が多いかと思いますが、視力がそれほど悪くなくても、視野狭窄があると行動に結構不自由が出てきます。子供の頃、弱視でも視力はそれほど悪くはなく、症状が視野狭窄から始まった私は、本も読めて遠くのものもある程度見えているのに、どうしてあちこちぶつかったり転んだりするのかとよく他人に不思議がられていました。
視野狭窄が起こる主な目の病気は緑内障や網膜色素変性症ですが、糖尿病網膜症の方も、網膜剥離や眼底出血を繰り返していると網膜が壊れ、その壊れた部分に相当する視野がなくなってしまい、視野狭窄が出てくることがあります。
な流し目は したくないのに 中心暗点
視野異常のもう一つの形態に「暗点」があります。「狭窄」とは違い、視界の中に見えない部分が島のように出てくるものです。このカルタに書かれている「中心暗点」は、視界のちょうど真ん中が見えないため、ものを見るときにはわざと視線を外さなければならない、という状況を表しています。それが他人から見ると、流し目をしているように見えたり、そっぽを向いているようにも見えるので、色々と誤解されてしまう大変さがあるのです。
中心暗点が起こる主な目の病気は、中高年から高齢者に多い加齢黄斑変性が有名ですが、糖尿病網膜症の方も網膜の中心部分が壊れると中心暗点が出てきて、このカルタのように視線を外さないとものが見えなくなることがあります。
さて、こんな風に川柳で紹介してみると、わかりやすく、それでいて、おもしろみもあると思いませんか?
この他に、精神障害の方が通う作業所で精神疾患への理解啓発カルタを作る取り組みというのも、テレビ番組で見たことがあります。当事者たちが作ることで、精神障害の人たちのリアルな状況が浮かび上がってくるのです。
伝え方の選択肢のひとつとして
病気の理解啓発というと冊子やポスターなどが一般的かもしれませんが、冊子は文字が多くて読むのが大変だったり、ポスターの場合も伝えられることは限られてしまいます。そうした意味では、カルタなら遊びながら学べるし、読み札の川柳もテンポの良い短い文言ですので、人に説明するときにも引用しやすいですよね。
腎臓病や透析、自分の症状や分かってほしいことについて、すべてを文章で伝えようとすると大変ですが、生活の中のワンシーンや日々感じていることを5・7・5の川柳で表してみると、他の人にも親しみやすく気軽に伝えることができるかもしれません。
遊び心やユーモアの力を活かして自分の病気を人にうまく伝える取り組み「弱視者いろはカルタ」のご紹介でした。
今回ご紹介した日本弱視者ネットワーク(略称:弱視者ネット、旧称:弱視者問題研究会)は、弱視者にも暮らしやすい社会を実現するために、弱視者自身の手でできることからやってみようという思いで、1977年に結成された団体です。
団体のウェブサイトにはカルタの他にも、弱視者の普段の生活を詳しく紹介する説明コーナーや、弱視者の見え方を疑似体験できるスマホアプリ「見え方紹介アプリ」など、さまざまなコンテンツがあります。ぜひ覗いてみてください。
■カルタの購入はこちらから→ 日本弱視者ネットワーク「『弱視者いろはカルタ』のご紹介」
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