明日へつながるチャレンジ〜あきこの体験記〜腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
【第2話】ひきこもり生活から社会復帰まで
2018.1.15
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3年半におよぶ引きこもりからの社会に戻るまで
糖尿病からくる網膜症と腎症の治療のための半年の入院を経て、自宅のアパートに帰ってからは心も身体も閉ざすようになり、介助による通院以外全く外出しなくなりました。
実際自分自身が障害者となり、この先どのように視覚障害と向き合って生活していけばいいのか分からない、どこに何を相談していいのかも分からない。ただただ毎日窓から入る光の明るさと暗さで昼と夜を感じるだけの何も見えない日々と、ごろごろ寝てばかりの孤独で会話のない生活が続きました。
目が見えなくなってから音やにおいや味に敏感となり、安易な糖尿病への知識から私は食べることに恐怖をいだき、身体が食べものを受けつけなくなる時期もありました。
そんな社会生活から遠のいた引きこもりを3年ほど続けた後、「同行援護(※1)」という市の障害福祉サービスを利用し、風景が全く分からなくてもガイドヘルパーさんの誘導で近所をお散歩できるようになりました。
以前スーパーのお仕事をしていた私は、元々人と接することが大好きでしたので、1週間に1回、たった1時間でもお散歩に出ることで自然の音や人の声、そよふく風、太陽の光や暖かさなどを肌で感じることがとても気持ちよく、お散歩が楽しみになってきました。
その後、自分と同じ視覚障害の人たちが集まり、見えなくても何とか頑張ってできる袋詰めや紙折りなどの作業所、就労支援B型事業所に知人を通じて通うこととなりました。それは私が再び社会の中に戻っていくターニングポイントとなり、歩行訓練士の黒瀬先生との運命の出会いにつながりました。
社会の中で生きていると実感することができるように
まず1人で外を歩くために、目の代わりとなる白杖を持っての歩行訓練が始まりました。何も見えない家の中での3年半もの引きこもり生活の間、ろくに着替えることもせず、全く外に出ようとしてこなかった私は「この杖1本で本当に外を歩くことができるの?」と不安と恐怖を覚えました。でも、黒瀬先生の上手な指導に背中を押され、近所の住宅街を歩くだけでなく、バスや電車を使って繁華街までも1人で移動できるようになりました。
黒瀬先生からは白杖の使い方の技術はもちろん、勇気を持って1歩外に出ることで、生きていくための可能性が見えてくる、広がってくることも教えてもらいました。
健常者では当たり前のことかもしれませんが、自分で選択して意思決定できること、社会の中で生きている実感も与えてもらいました。具体的には、目が見えなくても、頑張れば誰かにお願いすることなく好きな時に1人で外を歩くことができるという楽しさや、人が自分に会いに来るのを受け身になって待っているだけではなく、自分から積極的に会いたい人のところに会いに行ける喜びなどです。
IT機器や家電の音声機能を自己管理や社会生活に活かす
人は情報の約80%を目から入手します。歩行訓練の次は、視覚障害者が情報障害のバリアを無くすために、iPhoneなどの音声IT機器や家電製品の音声機能を利用した日常生活の改善と機器の使い方の訓練を受けました。その結果、現在は体重や血圧、水分の測定も家電の読み上げ機能を使って音声で自己管理しています。
なにより私の生活から手放せなくなったものといえば、音声で画面を読み上げてくれるiPhoneです。画面が見えなくても音声入力で健常者のお友達と普通にLINEやメールのやりとりができます。調べたいことがあれば自分でインターネットを検索して情報やニュースを拾えます。行きたい場所があれば音声方位磁石や音声ナビで方向や距離を確認しながら、より安全に移動できるようになりました。
視覚障害の私は、在宅での衛生管理が大切な腹膜透析を行うことは普通に考えると難しいです。しかし黒瀬先生の訓練を受け、いろいろな音声機器やロービジョンケア(※2)を活用して腹膜透析を私自身の手で行えるようになりました。
次回はその在宅治療における具体的な工夫とサポートについて少し触れたいと思います。
※1:視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。(障害者自立支援法 障害者自立支援法 第5条4)
引用:同行援護について - 厚生労働省 (2017/12アクセス)
※2:視覚に障害があるため生活に何らかの支障を来している人に対する医療的、教育的、職業的、社会的、福祉的、心理的等すべての支援の総称。
引用:日本ロービジョン学会 (2017/12アクセス)
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