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わたしとの対話~わたしの道しるべ

【第3話】わたしはひとりの人間なんだと気づかせてくれたドクターとの出逢い

2021.12.20

文:もあぞう

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背中を押してくれたK先生

中学3年生になり、進路を決める時期となったわたしは、看護師になりたいと考えていた。物心ついた時から病院に通い、多くの医師や看護師にお世話になってきたため、自分がしてもらって嬉しかったことを、次はわたしが誰かにしてあげたいと思っていたから。
たくさんの人に助けられて、いまこうして生きている。その恩返しがしたかった。

一方で、看護師はとても大変な仕事だというのは見ていてよく知っていたし、自分にできるのだろうかとも思った。そのようなわたしに「やりたいことをやればいい。じゃないと移植した意味がないでしょ」と背中を押してくれたのが、献腎移植手術を担当してくれたK先生だった。

K先生は、わたしがひとりの人間であるということを気づかせてくれた人だった。

小さい頃から入退院を繰り返し、学校に行きながら透析していたため、「自分はみんなとは違う存在」「違う生き物だ」と思っていた。みんなができることをわたしができないのは病気だから仕方ない。あれもダメこれもダメ。何もしなくていい、何もできない、なぜなら病気だから―。わたしは「病気の自分」だとずっと思い込んでいた。


透析はわたしの「一部」

K先生は、いつもわたしをひとりの人間として接してくれ、生き方を尊重してくれた。 病気の話だけでなく、親身に話を聴いてくれたし、先生の人生に影響を与えた本や、医師になりたての時の話などいろんなことを教えてくれた。

時には、「僕は医者で、患者さんの生きる手助けをしている。病気を治すのは医者ではない、患者さんの生きたいという強い思いだ」
「心ない言葉を言う人は、放っておけばいい。その人にあなたの痛みはわからないのだから」
「医療は日進月歩。今の医療がすべてではない。今治らない病気が、明日治るかもしれない。生きることを諦めてはいけない」と励ましてくれた。先生はいつもわたしに安心をくれた。

わたしはひとりの人間で、病気は自分の一部だと。その辺にいる女の子と何ら変わりのない、みんなと同じ人間なのだということを教えてくれた。
わたしが今まであたりまえだと感じていた痛みや悩み、苦しみに触れ、わたしの心のドアを叩き続け向かい合ってくれ、喜怒哀楽を共にし受け入れてくれる存在だった。

K先生とは、生きてきた場所も年齢も違うけど、わたしの人生の中でK先生に出逢えたことには大きな意味があり、人生を良い方向に向かせてくれた恩人だと思っている。 もし、あの時献腎移植の話がなければ、東京に行くこともなかった。でも移植を決意してK先生に出逢った。この出逢いはわたしにとって必要不可欠だったのだと感じている。

「人事を尽くして天命を待つ」は、K先生の口癖だった。
やるだけのことをやったら、後は運を天に任せろ!と何回言っていただろう。この言葉は今もわたしの中に生きている。

K先生の後押しをもらい、わたしは猛勉強して数年後看護師になった。移植によって導かれた最高の人生の生き方。これがずっと続くと思っていたのに―。

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もあぞう

もあぞう
小学3年生で透析導入し、中学1年で献腎移植を東京で受ける。移植後10年で透析再導入になり今年で25年。自分がされて嬉しかったことを患者さんにしてあげたいと看護師の資格を取得。
2002年詩集『ぞうに咲くひまわり』、2012年絵本『もあのきもち』、2014年詩集『ぞうの恩送り』書籍出版。看護師として働いたのち、現在会社員。余暇はペーパークイリング、自然を眺めたりしながら、創作活動に励んでいる。

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