食生活研究室腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
料理研究家 宮成なみの夢を叶えるごはん日記の作り方
【第4回】闘病生活ってどんなもの? 模索し続けた可能性
2015.12.7
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「このままでは、3ヶ月後に透析になってしまいます」
生まれ持った病気から壊れてしまった腎機能をこれ以上失わないことを最優先に、辛い投薬治療と厳しい食事療法が始まりました。
「歯が全部抜けるかも知れません。髪が全部なくなるかも知れません。治療中に何が起こるか分かりません。それに同意した上で治療を受けますという内容の同意書です。内容を確認してください。」
「トイレ以外、ベッドの上で絶対安静。心臓に負担がかかるから、投薬中の2週間は入浴も禁止。身体の負担を考えて、インターバルを空けて数回の投薬をやります。何回やるかはデーターを見ながら相談しましょう」
そう言われ、投薬を開始するための同意書が私の目の前に差し出されました。
同時進行で行われた食事療法は茹でて水にさらした野菜と、小さなメインデッシュとご飯だけの食事でした。病気の進行が進んでいるとはいえども、16歳で育ち盛りのお腹を満たせるワケもなくひもじい日々を送っていました。
入院生活と言う名の慣れない団体生活。
今のように、1人に1台のテレビがあって好きな時に好きな番組を見られて、カーテンでベッドが仕切られ大部屋でもギリギリプライベート空間を作れるなどという状態ではなく、大部屋の端に洗面台とテレビが1台。いつも流れているのは「水戸黄門」と「暴れん坊将軍」。
15歳で発病すれば小児病棟入院となり、同じ世代の子たちと過ごしたり病院の中で勉強したりすることもできましたが、私は16歳での発症なのでオトナの病棟・腎臓内科での入院となりました。話し相手もいない、友達とも会えない、好きな人を眺めるコトもできない、初めて家族と離れて暮らす日々。
体重は2日で1㎏とか3日で1㎏とか減り、今まで見たことのないペースで痩せていきます。肌はレンガのように干からびて、16歳の私の肌の方が当時40歳だった母よりキメは荒く老化が進んでいました。
どんどんやせ衰えていていく身体を見つめながら「この先どうなるんだろう、生きていけるのかな」と不安で仕方ありませんでした。
その一方、私のいないところで両親は呼び出されて医師に言われていたそうです。
「なみさんの病気は5年以内に8割の方がなくなる難病です。もしかしたら25歳まで生きられないかもしれません。
保険の利かない治療をしたいと思います。しかし発見されたばかりの病気ですので、データーも治療法もありません。どのくらいの期間どのような治療をしたら、どうなるという事が言えません。治療にいくらかかるか分かりません。結果が出るとは限りません。保険も利きません。いかがなさいますか? 」と。
父と母は私の病気の治療に大きなお金がかかると分かった上で「お願いします」と言ってくれたのだそうです。
発病した本人もツラいけれど、家族もツラい。
お腹を痛めて産んだ子が痛がっていても変われない。手も足も出せない。見守ることしかできない。
いくら払えばいいか分からない。
この苦しみがいつまで続くか分からない。
自分より先に死ぬかもしれないと分かっている娘に、自分より長く生きることが親孝行だと言わなきゃならない。
かかるのは入院費だけじゃない。娘の命を救うために自分の命を削るようにして仕事を増やすしかない。
ゴールの見えない真っ暗闇を走り続ける耐久レース。
健康を失うという事は身体の自由を失うということだけじゃない。
夢も希望も、お金も、家族の生活の歯車も、すべてを奪い壊してしまうもの。
それが闘病生活というものでした。
私が知らないところで、主治医の先生も両親も少しでも長く透析にならないで済むように、発病する前の元気な姿に戻れるようにと可能性を模索しつづけてくれていたのでした。
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