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食生活研究室

料理研究家 宮成なみの夢を叶えるごはん日記の作り方
【第3回】初めて聞く言葉「しょくじりょうほう」

2015.10.22

文:宮成なみ

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「現代の医学で、なみちゃんの病気を治す方法は無いけれど、唯一病気の進行を遅らせる方法があります。それが“食事療法”です」

――― 食事療法。
生まれて初めて聞く言葉でした。

「このままでは3ヶ月後には透析です」と医師に言われてしまうほど、私の腎臓は機能低下を起こしていました。これ以上、腎臓の機能を失うわけにはいかない。即座に入院が決まり、血管と腎臓に負担をかけない食事を摂ることになりました。

腎臓はちょうどドリップコーヒーのフィルターのような役割をしています。私たちがご飯を食べて栄養を吸収した後、老廃物で汚れてしまった血液をきれいにしてくれる高性能な浄化装置です。たくさん老廃物が出る食べ物を摂れば、その分腎臓は血液を浄化するために働かなくてはなりません。ただでさえ瀕死状態の私の腎臓に、これ以上の労働を強いるのは難しい。疲れた腎臓に有給休暇を出して休んでもらおう! そのために「老廃物がたくさん出る食べ物は避け、腎臓がゆっくり養生できる時間を作ること」。それが食事療法の目的でした。

食事制限では塩分、蛋白質、カリウムを減らした食事を摂ることになりました。塩分は言わずと知れた塩味です。蛋白質は、肉、魚、卵、牛乳、乳製品、豆類などに多く含まれる栄養素です。潤った肌や艶やかな髪、筋肉などの原料となる蛋白質は、人間にとって大切な栄養素ですが、腎機能が低下すると血液を汚してしまうので制限すると言われました。最後にカリウム。これは野菜や果物に多く含まれています。カリウムは健康な人にとってはたくさん摂るように推奨されている栄養素で、むくみを取り除き血圧を正常化してくれます。しかし腎機能が低下してしまうとうまくカリウムを体外に排泄することができなくなり、摂った分だけ体に溜まるため高カリウム血症という状態になってしまいます。高カリウム血症になってしまうと筋肉の痙攣が起こり、こむら返りのように手足が引きつります。最悪の場合は心臓も筋肉でできているため心不全のような状態になり、命に関わることもあると説明を受けました。

…ん? ちょっと待てよ。
医師の説明を聞き終わった後、私はすごく不思議に思いました。

……肉、魚を食べられない。野菜、果物もダメ。塩味もつけられないって、私は何を食べるの?

疑問に思いながらも夕食の時間を心待ちにして、出てきた食事を見てびっくりしました。

まず、ごはん。小さな茶碗にご飯が少し。

それから茹でたキャベツ。

カリウムは茹でこぼしたり、長時間水でさらしたりするとその量を減らすことができます。茹でて水でさらして絞っただけであろう茹でキャベツはキャベツの味さえしませんでした。

そしてメインディッシュが「ゆで卵の白身のフライ」。

白身魚のフライではなく卵の白身のフライ。ゆで卵の白身のみに衣をつけて揚げたもの。なぜか分かりませんが、その後も卵の白身だけで作ったフライはメインとしてよく出てきました(最近知り合った栄養士さんに話を伺うと、黄身はリンが高いのですが、白身は良質な蛋白質な上に低リンなので、卵の白身をフライにしたものがよく出ていたんじゃないか、とのことでした)。

それでその日の夕食の献立は終わり。

これではビタミンもミネラルもカロリーも足りません。足りないビタミンは点滴で、足りないカロリーは補助食品で補いました。

今から20年以上前の話。
腎臓病の専門書を開くと「食事療法」だと思っていた言葉が、「食餌療法」と書かれていた時代でした。

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宮成なみ

宮成なみ
福岡出身11月3日調味料の日生まれの料理研究家。
16歳の時に「現代の医学では治すことのできない難病」結節性動脈周囲炎を発症。主治医の「唯一病気の進行を遅らせる方法が食事療法」という言葉に希望を託し、金なし、コネなし、資格なしのなか10年越しの夢を叶え、27歳で料理研究家となる。
現在は週3回、1回6時間の透析をこなしながらテレビ、ラジオなどのメディア出演、食育講演会、商品開発など、「ムリせず、気負わず、頑張りすぎず、できることからはじめよう」をモットーに冷蔵庫にあるもので、誰でもカンタンに作れて元気になれる台所のコツを発信している。
楽しい食卓株式会社 代表取締役、料理研究家

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