食生活研究室腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
料理研究家 宮成なみの夢を叶えるごはん日記の作り方
【第1回】お腹を痛めて生んだ子が…母の決断!
2015.7.23
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じんラボユーザーのみなさま、お待たせいたしました。3月に食生活研究室室長に就任された宮成なみさんの連載開始です。
まずは宮成なみさんが経験した病気や食事のことを紹介しながら、保存期や透析患者さんに役立つ調理のポイント、減塩のポイントも少しずつご紹介します。
同じ透析患者だから分かる食事制限の厳しさを、料理研究家の立場から「こうすれば食べられる」という“プラスの食事療法”で、食事の「楽しさ」「団らん」「コミュニケーション」をお伝えします!
「お母さんはあんたを丈夫に産んであげられなかったから、その分、生きていく力をつけさせたかったの」
母は私にそう告白したことかあります。
力強い瞳で私をまっすぐと見つめながら。
「私が生きている間は、私の命と人生すべてをかけてあんたを守ってあげる。母親ってそんなもんなの。わが子のためならなんでもできる。でもね、私がいなくなったらあんたはどうなるの? 自分の生活は自分で守らなきゃならないし、作っていかなくちゃいけないの。誰も守ってはくれやしない。世間はそんなに甘くない。
お母さんがいなくなっても、死んでしまっても、あんたが幸せな人生を歩んでいけるだけの力をつけさせたかったの」
そのためには、他人にどう思われても構わない。
時には心を殺して鬼になる。
――― お腹を痛めて産んだ子が一生治ることのない病気を持って生まれた。
その事実を突き付けられた時、母はそう心に誓ったのだと私に教えてくれました。
あれから23年。
ある日突然、健康を失ってしまった16歳の冬から、23年と言う長い長い月日が流れました。25歳まで生きることができないかもしれないと言われていた私は、今年38歳になりました。
母と二人三脚で食事療法に取り組み、私は7年半かけて、医師にも無理だと言われていた社会復帰を無事果たすことができました。
現在私は長年夢見ていた料理研究家と言う職業に就いて、透析をしながら料理教室や食育講演会、企業様のレシピ作成や商品開発プロデュースなどのお仕事をさせていただいています。
ただ栄養管理された、体にいいだけの食事を摂り続けていたとしても、私はここまで元気にもなれなかっただろうと思うのです。母の作ってくれたごはんと家族の支えと団らんある温かな食卓は、挫けそうになる度、もう一度、もう少しだけ頑張ってみようかな…と思わせてくれました。365日積み重ねられるごはんには、とてもとても大きな力があるように思うのです。
母が作ってくれたごはんは特別なものは何一つありませんでした。普通の白米に肉じゃがやおひたしや、手羽先の炊いたものとかきんぴらごぼうとか。食材も近所のスーパーで買ってきたものばかり。平凡などこにでもある普通の食卓。けれど「この子の体を治したい。元気な体に戻したい」と言う想いと知恵が詰まった食卓でした。
「食育」は難しいことではない。
私はそう思うのです。特別なことでもなく、難しいことでもない。誰にでもできて、みんなが幸せになれる。そして、ごはんで作る愛がある。
ほんの十数年前までは、普通に当たり前に、受け継がれていた生活の知恵。
それはわが子に受け渡すことのできる最高のプレゼントだと思うのです。
私は母から5歳のときにフライパンを持たされました。
しかし台所で母から学んだことは、ごはんの作り方だけではなかったように思います。
命の尊さや食の大切さはもちろん、人の愛し方、幸せの作り方、夢の叶え方さえも、私は母から台所で学んだような気がします。
母が与えてくれた生きる力。それは素晴らしい人生を自分の手で調理していく幸せのレシピでした。
私が闘病生活のなかで、母や祖母からもらった「生きる力」と言う名の幸せのレシピ。
次回から私の自己紹介をかねて、少しだけそのお話をしたいなって思っています。
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