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食生活研究室

日本初の栄養ドリンクで透析患者を支える
~ベータ食品の思い
【後編】これからも“患者の目線”で

2020.5.18

文:s.yuri

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「カルフェロを通じて、いろんな医師の先生に出会えて本当にありがたい」と語る、ベータ食品の原年秀代表取締役。カルフェロの商品開発で多くの医療関係者と会う機会が増えたのをきっかけに、透析患者さんを雇用するようになったそうです。
透析患者さんの就労をめぐっては、時間の制限や会社の理解など多くの壁があります が(透析者が就労し、働き続けるために【第2回】5つの課題・問題を踏まえた解決策 参照)、ベータ食品ではこれまで複数の透析患者さんの就労実績があります。後編となる今回は、ベータ食品の透析患者雇用の取り組みについての、原代表とじんラボ所長の宿野部との対談です。さらにベータ食品の展望についてもご紹介します。


透析患者と共に働く職場づくりへの取り組み

ベータ食品が透析患者さんを初めて雇い入れたのは2003年9月。これまで延べ8名雇用し、現在も1名就業しています。

ベータ食品は1999年、日本初となる透析患者さん向けの栄養補助ドリンク『カルフェロ』を開発。以降、カルフェロは透析患者さんや医療機関に広く知られるようになったものの、原代表は「私ども健常者は、どうしても透析患者さんの思い ー 例えば透析導入時の心の葛藤や、その後の生活などが、わからない点がある」と思い、共に働くメンバーに透析患者さんを迎え入れる必要性を感じたそうです。そこで、大阪腎臓病患者協議会(大腎協)に相談し、腎友会で役員を務められている透析患者さんの採用に踏み切りました。

一般的に透析は1回4時間程度ですが、入社された方は5時間透析を行っていました。この方は透析についてかなり勉強していたため、原代表はこのとき長時間透析(現在は「週3回、1回6時間以上」の透析を長時間透析と言います)の意味合いを教わったそうです。結果、この方は月・水・金で9時~15時、火・土は9時~17時で勤務されました。

「お客様からの相談事に真摯に対応する姿が心に残っていますね」と原代表。この方は残念ながら別の病気で亡くなりましたが、入院中に「お客様に迷惑がかかってしまうため、透析について熱心に勉強している透析患者さんを紹介したい」というご本人の申し出を受け、その後新たな透析患者さんの採用につながりました。

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新しく入社した方も腎友会の役員でしたが、その方でさえも透析導入当初は透析との付き方がわからなかったそうです。腎友会に入会し、会の先輩から透析と付き合う方法を教わったこと、会が企画する旅行に参加して同じ境遇の友人ができたこと、そして共に助け合っている話をよくされていたそうです。原代表は「その従業員から、『お客様(透析者同士)と話し合いができたことで、お客様の心の支えになれただけでなく、自分自身にとっても身になる良い機会をいただけた』と言われた時は、とても嬉しかったです」と語ります。

これまで入社された透析患者さんは、カルフェロ事業部と、透析患者さんやご家族の対応も行うお客様対応部隊TMS(テレマーケティングサービス)に配属され、ご自身の経験や知識を存分に発揮しています。原代表はこれまでの雇用を踏まえ、「まず本人がしっかり透析して、自分を大切にしてもらう。そして次に家族を、その次に会社を大切にしていただきたい」と強く思うようになったそうです。

宿野部:そこまで考えてくれる経営者はなかなかいないですよ。透析患者は見た目で分かりませんし、マスコミなどによる「透析が必要になったら人生終わり」という偏向報道もあるので、周囲の理解はなかなか難しいと思います。

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原代表:ベータ食品としては、今後は“透析患者さんに寄り添うベータ食品”というブランド力の構築に、より集中しなければならないと思います。「透析患者さんに元気に働いてもらうためには、どうしたらいいか」と引き続き考えていかなければなりませんね。

宿野部:私も、病気のために長時間を外で働くのが難しい人たちと一緒に働いていますが、リモートワークでその人の得意分野を依頼しています。オンラインで働き方も随分変わってきたので、外出が大変で、時間が限られている方も社会参加が叶う時代になりましたね。

原代表:そうですね。経営は“人を減らすこと”だと言われています。アウトソーシングして社員を少なくするとその分経費を削減できるかもしれませんが、会社を大きくするうえで、いつかどこかで必ず人は足りなくなる。身体の都合で、家で働かなければならない人はテレワークで活躍できるので、そういったネットワークをもっと作っていく必要がありますね。


今後のベータ食品の展望 ー アジア圏でスクラムを組む

近年は透析患者さんの高齢化もあり、1990年代と比べて患者さんをめぐる状況は変化してきています。高齢な透析患者さんは比較的食が細くなりやすいため、透析過剰でアミノ酸が抜けやすく、その結果筋肉量は減ってしまいがち。さらに透析困難症の方の栄養面でのケアなど、「まだ解決すべき弱点はある」と原代表は語ります。

またベータ食品では、制度や地域、心の問題などお客様の相談にもできる限り対応しています。透析者団体と業務提携を結ぶことで、例えば国や自治体の補助金制度のように、従来ベータ食品だけでサポートするのが難しかった点について、サポートできる幅が広がっているそうです。


宿野部:今後の展望についてはいかがでしょうか?

原代表:柱は二つあります。
一つは、もちろんカルフェロの国内販売強化についてです。以前はネット通販で、扱う商品数を増やしていけば売れる時代でした。でも今は違う。ベータ食品は、カルフェロというニッチに絞り込んだ商品を主力に、オリジナル商品の販売を強化し、単品通販のビジネスモデルに再び取り組もうと思っています。そのためには、ベータ食品のファンづくりが必要です 。これからも、より良い商品、サービスを展開していきたいと思っています。

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原代表:あともう一つは、海外の透析患者さんとのつながりを積極的に持つことです。 今までは、日本国内の患者さんを中心として販売を行ってきましたが、これからは国外にも目を向けていこうと思っています。販路開拓はもちろんですが、世界の透析事情はさまざまです。透析を受けることすらできない患者さんがたくさんいらっしゃり、そういった方を支援していきたいと考えています。
そのために、まずは、韓国や台湾を中心としたアジア圏とスクラムを組んでいきたいですね。韓国の腎友会の会長さんには以前お会いし、私たちの機関紙を翻訳してお渡しする準備をしています。同じ病気を持った日本人が頑張っている姿を共有し、越境で商品販売や情報共有をできないかと考えています。

原代表:また、東南アジアの子供たちの透析事情では、病院まで通院する費用も捻出できないため、病院に住みながら透析を受けている子供たちがいると聞いています。そのため、両親や家族に会えるのは年に1度という子どもたちもたくさんいるようです。
恥ずかしながら、そういった事情は知りませんでしたので、驚きとともに、何か支援できることがあれば是非お手伝いしたいと強く思いました。

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原代表:弊社の協力会社にお手伝いをいただきながら、ドリンクを通じで支援していければと取り組んでいる最中です。国内だけでなく、海外との人のつながりも大切にしていき、そこから学べることはたくさん吸収し、これからにつなげていきたいですね。
今後も、医者目線ではなく“透析患者さんの目線”に合わせることを心がけ、希望となるような商品開発や情報発信をしたい。そしてその思いが数珠つなぎになっていって“互助”になっていけばいいと思います。

まとめ(取材後記)

インタビュー中、原代表は「知識は必ずその人を助けてくれる。『医師に言われたから』ではなく、選択肢はたくさんあることを知ったうえで、自分で判断するのが重要」と力を込めておっしゃいました。透析患者さんをサポートする商品を作るべく、「原代表ご自身も、透析治療や栄養についてかなり研究なさったに違いない」と感じるほど、熱意がひしひしと伝わりました。

情報も食べ物もあふれ過ぎている現代では、どれが自分にとっていいものなのか判断するのは大変なこと。特に食事は日々のことなので、毎回しっかり考えるのは負担になりやすいですよね。そういった悩みのある方には、ベータ食品の『カルフェロ』シリーズはひとつの希望の光になるのではないでしょうか。
「透析患者さんの助けになりたい」という一心で、社内一丸でお客様に寄り添うベータ食品の姿勢は、これからも患者さんやご家族の心の支えとなってくれそうですね。

ベータ食品のお問い合わせ先

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s.yuri

s.yuri
じんラボのライター。大学卒業後、地元紙で主に教育や警察、司法、スポーツ、地域ネタを追いかける社会部記者として働き、その後夫の転勤に伴いゆるいフリーランスでライター・編集者として活動してきました。
学生時代から医療福祉に関する執筆に関わりたいと思っていたのが、十数年の時を経てじんラボでご縁をいただました。透析や腎臓病の勉強を重ね、少しでも元気の出る情報をお届けします。

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