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食生活研究室

慢性腎臓病(CKD)とフードファディズム【第3回】
気になる「健康食品」と健康のための食品選びの知恵

2024.7.22

文:ndeco

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紅麹成分を含むサプリメントでの健康被害が報告されたことで、最近何かと話題の機能性表示食品を含む健康食品。いまだに動揺している方も多いのではないでしょうか。
機能性表示食品制度は安倍政権の規制緩和の一環で2015年に始まり、安全性と機能性について事業者責任のみで科学的根拠を示せば良いしくみとなっており、国が審査しないことが課題とされてきました。今回の件を受け、消費者庁は制度の見直しに乗り出しました。

サプリメントは基本的に毎日飲み続けるのが前提です。製品そのものに問題がないものでも、濃縮した特定の成分をそれなりの量摂取することはリスクが伴います。

腎臓の機能が低下している場合は、腎臓で排泄される成分が中心のものには注意が必要です。腎臓の排泄能力を上回る量を摂取すると、腎機能障害が出てしまう場合もあります。

食と健康の情報は玉石混交です。虚偽誇大表示は法律で禁止されていますが、ギリギリ表現のレトリック(巧みな表現技法)、インターネットなどで拡散される真偽が不明な大量の情報、これらに惑わされずに健康食品と上手に付き合うにはどうしたらいいのでしょうか。


健康食品とは

いわゆる「健康食品」と呼ばれるものには法律上の定義は無く、範囲は曖昧です。医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指します。

健康食品の範囲

食品に特筆すべき健康効果があるとしても、医薬品のような表示をすることは健康増進法で禁じられています。

医薬品の承認を受けないとできない表示
  • 生活習慣病予防に
  • 〇〇が治る
  • アレルギーを緩和する
  • 疲労回復
  • 老化予防 など
消費者庁長官の許可が必要な表示
  • 血圧が高めの方に
  • コレステロールの吸収を抑える
  • お腹の調子を整える など

食品の「機能性」、機能性表示食品とトクホ(特定保健用食品)の違い

「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、健康の維持および増進に役立つことを「機能性」といいます。
トクホについて、事業者は最終段階で人を対象とした試験を行い、国(消費者庁)は安全性と効果を個別に審査します。機能性表示食品はいずれも不要なため、トクホと比べて開発コストが安く済みます。そのため機能性表示食品の市場規模は広がり続けています。
紅麹の成分を含むサプリメントは事業者責任のみで試験や審査を経ない機能性表示食品です。

トクホと機能性表示食品

出典:消費者庁「消費者の皆様へ「機能性表示食品」って何?」

機能性表示食品とは

出典:消費者庁「消費者の皆様へ「機能性表示食品」って何?」


食品を上手に選ぶために


魅力的なレトリックに要注意

食品のパッケージや宣伝は、その商品を魅力的に見せるのはもちろん、購買意欲を刺激するメッセージが含まれます。健康食品のメインの購買層は高齢者かつ女性だそうです。世代的に健康不安を抱え、さらに更年期障害などで体調がゆらいでいる方が、自分の健康をサポートしてくれる耳当たりの良い情報に接したら、惹かれてしまうのは当然ですよね。

食品宣伝のレトリック例
  • 高齢になると◯◯が減ります(将来への健康不安に訴える)
  • 〇〇さんも認めた(専門家や権威を利用している)
  • 小さな打消し表示(都合の良い情報の強調)

商品の特長やメリットを説明する際に、その内容に例外がある場合に表示される注釈「個人の感想です」「個人差があります」などの表示のこと。


根拠のない情報に要注意

以下に、新型コロナウイルス感染予防によいと話題になった食品や素材を挙げます。国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所によると、「現時点(2024/03/21)で、新型コロナウイルスに対する予防効果を示した食品・素材の情報は見当たりません」とのことです。

もともと健康に良いとされているもの、中には風邪やインフルエンザなどには効果が確認されたとの報告があるものもありますが、対新型コロナウイルスに関して言うと効果を確認されたものがひとつもないのです。
感染拡大での不安の広がりと比例して、噂レベルの情報も大きく広がってしまったのかもしれません。

食品・素材名
1 ビタミンD 28 ユーカリ
2 納豆 29 ティートリー
3 オリーブ葉エキス 30 ミドリムシ(ユーグレナ)
4 マヌカハニー 31 フランキンセンス(乳香)
5 水素水 32 ペパーミント
6 プロバイオティクス 
(乳酸菌・ビフィズス菌など)
33 スイカズラ
7 ニンニク 34 月桃
8 ビタミン C 35 パパイヤ葉
9 タンポポ茶 36 ネトル
10 プレバイオティクス
(β-グルカン、オリゴ糖など)
37 リポポリサッカライド(LPS)
11 ケイ素(シリカ) 38 大麦
12 ビタミンA 39 チャーガ(カバノアナタケ)
13 鉄 40 柿渋
14 亜鉛 41 5-アミノレブリン酸(5-ALA)
15 セレン 42 朝鮮ニンジン(高麗人参)
16 エキナセア 43 セイヨウキョウチクトウ
17 ラクトフェリン 44 コロイド状銀製品
18 エルダーベリー 45 リコリス(甘草)
19 みそ、大豆 46 ニコチンアミドリボシド、ビタミンB3
20 ニコチアナミン(大豆などの成分) 47 グルタチオン
21 緑茶(浸出液) 48 N-アセチルシステイン
22 カテキン(緑茶などの成分) 49 ケルセチン
23 海藻(昆布、もずく、めかぶ) 50 クルクミン
24 フコイダン
(海藻などに含まれる成分)
51 メラトニン
25 重曹 52 n-3 系脂肪酸
26 CBD(カンナビジオール)  53 ビタミン E
27 タイム

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報>新型コロナより作成


確証バイアスに要注意

自分の思い込みや先入観を肯定するために、自分に都合のよい情報ばかりを集める傾向のことを確証バイアスと言います。確証バイアスを自覚して、批判的、統計的、俯瞰的な考え方を身につけましょう。

食品に関する確証バイアスの例
食品添加物を使った加工食品より無添加のほうが安全に決まっている
実際は▶食品添加物が原因の健康被害は過去に例があることはありますが、使用しなかったことによるO157などによる食中毒の方が何度も発生しています。
無農薬の野菜の方が安全に決まっている
実際は▶農薬を使用しないことにより有害なカビが産生されたり、環境中の細菌やウイルスで作物が病気になり、作物自体が有害な物質を産生することもあります。

最後に:「健康食品」の19のメッセージ

「食品」であっても安全とは限りません。

  • 健康被害のリスクはあらゆる食品にあります。身近な「健康食品」にも健康被害が報告されています。
  • 「天然」「ナチュラル」「自然」のものが、安全であるとは限りません。これは食品全般に言えることです。
  • 栄養素や食品についての評価は、食生活の変化や科学の進展などにより変わることがあります。健康に良いとされていた成分や食品が、その後、別の面から健康を害するとわかることも少なくありません。

多量に摂ると健康を害するリスクが高まります。

  • 錠剤・カプセル・粉末・顆粒の形態のサプリメントは、通常の食品よりも容易に多量を摂ってしまいやすいので注意が必要です。

ビタミン・ミネラルをサプリメントで摂ると過剰摂取のリスクがあります。

  • 現在の日本では、通常の食事をしていればビタミン・ミネラルの欠乏症が問題となることはまれであり、ビタミン・ミネラルをサプリメントで補給する必要性を示すデータは今のところありません。健全な食生活が健康の基本です。
  • むしろサプリメントからの摂り過ぎが健康被害を起こすことがあります。特にセレン、鉄、ビタミンA、ビタミンDには要注意です。

「健康食品」は医薬品ではありません。品質の管理は製造者任せです。

  • 病気を治すものではないので、自己判断で医薬品から換えることは危険です。
  • 品質が不均一、表示通りの成分が入っていない、成分が溶けないなど、問題ある製品もあります。成分量が表示より多かったために健康被害を起こした例があります。

誰かにとって良い「健康食品」があなたにとっても良いとは限りません。

  • 摂取する人の状態や摂取量・摂取期間によって、安全性や効果も変わります。
  • 限られた条件での試験、動物や細胞を用いた実験のみでは効果の科学的な根拠にはなりません。口コミや体験談、販売広告などの情報を鵜呑みにせず、信頼のできる情報をもとに、今の自分とって、本当に安全なのか、役立つのかを考えてください。

食品安全委員会、医薬基盤・健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」、厚生労働省のインターネットサイトなど

出典:食品安全委員会『「健康食品」に関する情報』

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ndeco

ndeco
じんラボの中の人。
こどもの頃よく尿検査にひっかかって、腎臓が悪い疑いありってことで定期的に超音波検査を受けていましたが、転院したら「そーゆー体質なんだろう」と言われて通院終了。あれは寛解なんだか完治なんだか。
基本的にずっと健康。2018年7月1日より禁煙継続中。
デザイン屋さん、はにかみ屋さん、てれ屋さん。

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