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じんラボ所長室

医療者と患者 共に幸せな透析施設を考える
【第1回】わたしの根っこ

2016.3.24

文:所長

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昨年の4月から今年2月にかけて「医療者と患者 共に幸せな透析施設を考える〜医療者編/患者編/医療者&患者編」というイベントを東京にて開催しました。
また、Facebookにてグループをつくりイベントの報告や意見交換を行っています。
そこで今回から4回にわたり、企画を立ち上げたいきさつとイベントのレポート、今後の活動について書きたいと思います。

※Facebookグループへ参加希望の方は本文の最後をご参照ください

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まず、なぜこのイベントの企画開催を考えたのかというと、そもそもの根っこを辿ると私が起業した時の想い、じんラボを立ち上げた想いに繋がっています。
どういうことかというと、私は3歳の時に慢性腎炎に罹り18歳から現在まで29年間透析をしています。
私の人生は医療と共にありました。
医療という世界の中では、私はずっと「治療を受ける」というあくまで「受け身の存在」だったのです。
しかし、大人になり年々
「患者は治療を受けるという存在としてだけではなく、自分が体験したこと、気持ちや想いを医療者と共有することで医療の進歩に貢献できるのではないか」
という考えが強くなりました。
その考えが起業に繋がり、現在の活動の原動力となっています。

そしてこの考え・想いを実際に形にしていくためには、多くの方に共感してもらい仲間になってもらうことが必要だと考え、Facebookにグループをつくることにしました。

実は医療者を巻き込んだ企画を実施するということが、私にとってハードルのように感じ少し躊躇するものがありました。
もしこの想いが受け入れられず、賛同者もいなかったらどうしよう…、と。
しかし結果的にはそんな心配は全く不要でした。

このFacebookグループの目的は「『医療者と患者 共に幸せになれる透析施設』を共に考えることで、お互いの相互理解と尊重を高め、透析医療向上の一助となること」です。
まず最初にこのグループを立ち上げた想いをきちんと理解してもらおうと、こんなメッセージを記載しました。

なぜグループをつくるのか

私は3歳時に慢性腎炎となり、18歳から現在まで28年間透析をおこない、日常、また臨時での国内・海外も含め多くの透析施設・医療者の皆さまのお世話になってまいりました。
施設によって、働いている医師・職員、また同じ患者そして家族から色々な話をうかがう機会がありました。立場を問わず、中にはネガティブなお話もあったりします。
そして、職種が異なる医療者同士の関係、医療者と患者の関係、患者同士の関係等その関係性は複雑に絡みあっています。

施設透析をする患者は平均週3回1回4時間以上という長時間にわたり施設に滞在し、また永続的に通院をすることになり、まさに生活の一部分となります。ということは、それだけ長く患者と医療者は関わることになるわけです。
長い間透析施設に通院しお世話になってきて、患者と医療者、そこに関わるすべての人が幸せになれる理想の病院・クリニックってどういう形だろう?と考えるようになりました。
「そんなもの出来るワケがない」
「理想は理想だよ…」
「きれいごとじゃ経営できないよ…」。
昨年11月、Facebookでこのことを書いた時には貴重なご意見をいただきました。

それからも色々と考えましたが、やはり皆さんと一緒に立場を越えて医療者・患者お互いにとって幸せである「理想の病院・クリニック」についてしっかり考えてみたいです。
腎臓を悪くして、透析患者となったのは悲しい「運命・宿命」かも知れませんが、でもそれは「その病気に関わる人達の幸せのために取り組みなさい」という「運命・宿命」かもしれない。いや、幸せにできるかもしれない、と思いじんラボ等の活動に取り組ませていただいています。

そこで、リアルな座談会やこちらのグループで意見交換等をさせていただきながら医療者・患者の皆さんがお互いを尊重し合い、より良い透析施設を考える一つのきっかけとする「場」を作りました。
大それた呼びかけで大変恐縮ではありますが、共感いただき一緒に考えていける機会となれば嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。

2015年3月10日 Facebookグループへの投稿より

2016年3月現在、このFacebookグループには医療者と患者合わせて53名の方が参加されています。
特に宣伝したり拡散したわけではないのですが友達から友達へ拡がり、私の考えに賛同して一緒に「医療者と患者 共に幸せになれる透析施設」を考えようと集まってくださる方がこれだけいらっしゃることをとてもうれしく思います。


そしてリアルな座談会、イベントを開催するべく動き始めました。
第1回は「医療者編」です。
異なる透析施設に勤務する医療者に、それぞれの考える「医療者と患者 共に幸せな透析施設」をテーマに意見交換してもらい、その結果を自身の仕事に活かしたり、患者も共有することでより良い透析医療の貢献に繋げようという試みです。

開催に先立ち、まずは私自身が患者として「患者にとって幸せな透析施設」について考え、Facebookグループとブログに掲載しました。

患者にとって幸せな透析施設とは…

まず、お断わりしておきます。
このようなテーマにふれると必ずと言っていいほど、「制度的に恵まれた透析医療の恩恵を受けているのに、患者としてまだこれ以上求めるのか」という反論や批判がありますが、私はこのようなテーマについて「医療者と患者が共に考えること」が、透析医療の現場に何かしら良い影響を及ぼすのではないかと考え、この活動に取り組んでいます。「制度の恩恵」とは別次元の話ですので、誤解のないようにお願いいたします。

さて、本題に入ります。
まず「患者」にとって幸せな透析施設ってどういう施設なのかを考えてみました。
文字通りに考えれば「安心して自分にとって最適な透析生活を送れる施設」となるのでしょうか。
「安心」「最適」という言葉が含まれていますが、透析歴が長くなった私にとってこの「安心」「最適」というのは、建物や医療機器といったいわゆるハード面や透析条件等だけではなく、そこでお世話になる「医療者」への気持ちという側面がかなり大きいと感じています。
では、医療者にどのようなことを求めるのか。(「求める」という言葉に少し違和感はありますが…)
4つ浮かびました。

  • 「病気」を診ていただくことはもちろんなのですが、一人一人置かれている環境が異なる「人」「生活者」としての側面も尊重してくださること。
  • 「数字」にばかりこだわるのではなく、患者自身の体感や感情を大切にしてくださること。
  • 一人一人に合った透析条件を共に考え、透析を行ってくださること。
  • 基本的な会話やコミュニケーションができること。

医療者は職業として「病気」と向き合うことはもちろんですが「病気」と向き合う前に「患者」と向き合うことが本当の意味でとても大切なことではないかと私は思っています。
「そんなの当たり前じゃないか!」と思われる医療者の方もいらっしゃると思います。
これは別に医療者へのクレームではなく、私個人の経験から思っていることなのですが、そのように思われた方に改めて問いたいと思います。
「あなたは本当に患者と向き合えているのですか?」と。
でも、これは逆に患者にとっても言えることなんですよね。
「あなたは医療者と向き合えているのですか?」

こうして書いていくと「向き合う」って何?という話になってきます。
治療を施す立場である医療者と、治療を受ける立場である患者。
立場は違いますが、透析施設で長い期間に渡って同じ場所同じ時間を共有していく者同士「相互理解と尊重」はお互いの幸せの基盤となる事ではないでしょうか。
この「相互理解と尊重」のうえに、お互いが本当の意味で「向き合う」ことができてこそ心身共に治療の効果が上がるのではないかと思います。
それぞれのお考えやご意見が集まり、医療者と患者がお互いを理解する場の一助になればこれ以上嬉しいことはありません。

2015年4月7日 Facebookグループへの投稿より

皆さんはこれを読まれて、どのように考えられましたか?

次回は「医療者編」のレポートです。
医療者からはどんな考えや意見がでているのでしょうか。お楽しみに。

Facebookグループに参加ご希望の方

以下の手順で、参加リクエストをお願いします。

医療者と患者 共に幸せな透析施設を考える シリーズ

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所長

所長
一般社団法人ペイシェントフッド代表理事。社会福祉士。透析歴31年。
14年間勤めた一般企業を退職後、福祉職を経て、2010年9月に株式会社を設立し、2018年4月からは一般社団法人ペイシェントフッドに法人格を変更。
長い年月にわたり「治療を受ける」という「受け身の立場」で医療と関わってきましたが、腎臓病を経て、透析を受ける当事者として、その経験・想いを「腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのために」役立てられないかと一念発起し、起業しました。
「じんラボ」はみなさんと一緒につくりあげていくコミュニティです。
「ひとり一人の「生きる力」が、医療を支える、希望ある社会」の実現に皆さんと共に歩んでまいります!どうぞよろしくお願いします!

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