じんラボ所長室腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
「患者協働の医療」の実現を目指して
2020.2.17
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じんラボをご覧の皆さんや、私と関わりのある方であれば「患者協働の医療」という言葉を一度は耳に(目に)したことがあると思います。
重要なテーマにも関わらず、じんラボでこのテーマを取り上げていませんでした。対照的な「患者中心の医療」と比較しつつ、「患者協働の医療」についてお話しします。
「患者協働の医療」ってなに?
「患者中心の医療」という言葉は聞いたことがあると思います。これは「患者の治療方法を最終的に決めるのは患者自身である」という考え方に基づいて行われる医療のことで、医療者・行政等の専門家が、患者と家族に対してより良いと思われる治療やサポートなどを提案し、双方合意の元に実行します。
下図のように医療者・行政等の専門家が患者を取り囲むようにサポートするイメージです。ご高齢の方や、救急や判断能力が低下している状態などの場合は大変有用な考え方だと思います。
『患者さんの治療方法を最終的に決めるのは患者さん自身である』という考え方に基づいて行われる医療のこと
医療を形作るのは患者を含めた医療に関わるすべての立場・職種の人であり、治療を行うために皆でゴールを共有し、そこに向かって共に前進していくこと
それに対して「患者協働の医療」とは、医療を形作るのは患者を含めた医療に関わるすべての立場・職種の人であり、治療を行うために皆でゴールを共有し、そこに向かって共に前進していくというあり方です。「患者中心の医療」と違い、患者のポジションは取り囲まれるのではなく同一円上です。
「ゴール」とは、患者自身が家族と共に決めた「自分が大切にしたい生活」「生きがい」といったことです。それらの実現のために必要な治療やサービスを医療者・行政等の専門家と共に考えます。
私は、皆で進めるこの「患者協働の医療」のあり方を提唱しています。
命を他人任せにしてしまっていいのか
病気になった時「治療を受ける」ことにより患者は「受け身」の立場になります。そして医療者の言うことは「絶対」で、治療の全てをお任せにしてしまいがちです。これは、弱い立場の者(患者)の最善の利益(治療)の決定の権限は強い立場の者(医療者)が持っているという保護主義的考え方、つまり医療者と患者がパターナリズムであるということです。なおかつ患者・家族自身にこの関係が当然のことだと強く根付いてしまっているからです。
これは一番大切な自分の命を他人任せにしてしまっていることに他なりません。
「治療」の選択は「命の選択」「生き方の選択」です。患者は納得のいく選択をするために、「ただ治療を受ける」態度をやめて「医療にもっと関わる」ことが大切です。
「患者協働の医療」の実現でみんなが幸せに
疾患を抱えながら長く生活をし続ける私たちにとって「患者協働の医療」というあり方はとても有用です。そこで「患者・家族」「医療者」「社会」という3つの視点でどのように有用なのか考えてみます。
まず「患者・家族」ですが、「患者・家族」にとってみれば、自分が大切にしたい生活や生きがいの実現に必要な治療を享受できるため「幸せ」です。
「医療者」にとっては、患者が納得して治療に積極的に向き合うことで長期的には治療効果も見込まれ、医療者の負担軽減が「幸せ」に繋がります。
そして「社会」という視点で一例をあげます。現在「残薬」が社会問題化していますが、自分が服用している薬を「何のために飲んでいるのか」と患者の理解が進むことで、「飲み忘れ」や「勝手に服薬をやめてしまうこと」が減ると考えられます。これは医療費削減に貢献し社会の負担を軽減します。
これらから、「患者協働の医療」の実現は「三方よし」と言えるでしょう。
「患者協働の医療」の実現のために
では、「患者協働の医療」実現のためにはどうすればよいのでしょうか。大それた取り組みは必要なく、医療に携わるそれぞれの立場で、出来ることから少しずつ実行していくことが大切だと私は思っています。
患者の場合は、例えば以下のようなことです。
- 「お薬手帳」を活用して、今自分が服用している薬はそれぞれ何のために飲んでいるのかを知る
→分からないことは薬剤師に尋ね、理解する - 「血圧手帳」に計った血圧を日々記録して診察時に持参する
- 血液検査の結果を理解できるようになる
医療者や企業の方から「患者協働の医療について話して欲しい」というお声がけが大変増えています。
医療に携わる方々の間で「患者協働の医療」の実現に向けての意識が高まっていることの表れです。
次は私たち患者が取り組む番です。 医療は自分事です。何よりも大切な自分の命を医療者にすべて「お任せ」にせず、「治療の選択」「薬の選択」は「生き方の選択」「人生の選択」と捉え、医療にもっと関わりを持ち、しっかり治療に参加していきましょう。
「患者協働の医療」というあり方の実現に向けて、これからも皆さんと共に取り組んでいけたらうれしいです。
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