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腎臓病・透析をしている方の熱中症対策
2021.7.26
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2021年は近畿・中国地方などで平年より3週間近く早く梅雨入りし、特に西日本では長い梅雨となりました。梅雨が明けるといよいよ夏本番、近年の夏はうだるような暑さなので、梅雨の最中から夏の訪れに戦々恐々としていました…。
そのような中、「透析をしている方の熱中症対策を教えていただきたい」というご意見をいただいたので、今回は熱中症対策についてお話しします。
熱中症をめぐる状況
近年、熱中症で亡くなる方や緊急搬送される方は非常に多く、大きな問題となっています。
2020年の夏(6〜9月)は全国で約6万5千人が救急搬送され、1200人以上の方が亡くなりました。東京都では、2020年に熱中症で亡くなった方の90%以上が室内で亡くなっており、その大半がエアコンを使っていなかったそうです。
コロナ禍で今年の夏も昨年に引き続きマスクが手放せませんが、マスクで熱が体内にこもり体温が上がりやすくなります。ある報道では、神奈川県のとある市で2020年に熱中症で救急搬送された方の3割近くが救急隊の現場到着時または直前までマスクをつけたままだったそうです。
周囲の目が気になってマスクを外しにくいと思う方は多いかもしれませんが、周囲と適切に距離をとれている場合は適宜マスクを外すことが大切です。
特に年配の方は体内水分量が低いため、脱水になりやすいと言われています。さらに透析をしている方は自律神経機能が低下し体温調節機能が苦手なので、より一層熱中症に注意しましょう。
熱中症対策の4カ条!
それでは熱中症のリスクをできる限り減らすために、実際どのようなことに気をつければいいのか見ていきましょう。
①少しずつ暑さに負けない体づくりを
身体が暑さに慣れるまではある程度の日数がかかります。日本救急医学会などで構成される熱中症診療に関するワーキンググループは昨年、屋内や屋外で適度に運動して少しずつ体を暑さに慣らしていく重要性を呼び掛けていました。
新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症診療に関するワーキンググループの提言
ただし運動をする場合は、気温が高く日差しが強い時間帯は避ける、効率よく放熱する素材のスポーツウェアを活用するなどしましょう。また、どれくらいの運動量が適切なのかは、必ずかかりつけ医に相談してくださいね。
②今日の暑さは大丈夫?「熱中症警戒アラート」を活用しよう
2021年4月から全国で「熱中症警戒アラート」の運用が始まりました。熱中症警戒アラートとは、熱中症の危険が非常に高いと予測された場合に注意を呼び掛けるもので、前日17時及び当日5時の1日2回、発表されます。
熱中症警戒アラートでお住まいの地域が発表されたら、外出を控え、室内にいる場合はエアコンを稼働させる、屋外や空調の利いていない室内での運動は原則中止するなどの対応を取りましょう。
熱中症警戒アラートは、ニュースや天気予報をはじめ、以下の手段で知ることができます。
ウェブサイト | 環境省「環境省熱中症予防情報サイト - 熱中症警戒アラート」 |
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ウェブサイト | 気象庁「「気象庁ウェブサイトにおける熱中症警戒アラート」 |
メール配信サービス (登録が必要) |
環境省「環境省熱中症予防情報サイト - 熱中症警戒アラートのメール配信サービス」 |
LINEで受け取る (環境省を友だち追加) |
環境省「環境省熱中症予防情報サイト - 環境省公式LINEアカウントによる情報配信」 |
③外出先では体を冷やせるものを活用する
外出先や空調の利いていない屋内では、対策をしないと熱中症のリスクが高まります。体を冷やせるものをうまく活用しましょう。
体を冷やせるものの一例
- ハンディ扇風機
- 冷却ジェルシート
- 接触冷感素材の衣類
- 氷枕や保冷剤
冷凍ペットボトルや冷えた缶ジュースは準備しやすく手軽に手に入るのでおすすめです。動脈が体表近くを通っている首回りや脇の下、太ももの内側に冷えたものを当てると効率よく体を冷やせます。
④塩分の多いものは控える
夏になると、「熱中症対策のために、水分だけでなく塩分摂取も心掛けましょう」と呼びかけられますが、腎臓病・透析をしている方が最も気をつけなければならないのは、熱中症対策と言って塩分を摂りすぎてしまうことです。
もちろんスポーツや肉体労働で大量に汗をかいた場合は別ですが、普段空調の利いた場所にいることが多い、つまり汗をあまりかいていない方が塩飴やスポーツドリンクのように塩分の多いものを摂ると、塩分過多になってしまいます。
また脱水にならないように、水分はこまめに体重を測って適切に不足分を補うようにしましょう。
⑤我慢は禁物! 冷房器具はフル活用
「エアコンをつけると電気代がかさんでもったいない…」「我慢できる暑さだから大丈夫」などと思い、冷房器具をつけずに過ごしていませんか?
このような我慢は、最悪の場合は命に関わります。絶対にやめましょう! 文明の利器はフル活用するのが吉ですよ。
扇風機を組み合わせて使うと、気流が生じて同じ温度でも涼しく感じるので、特に長時間いる部屋には涼しく過ごすために工夫をしてみましょう。
熱中症対策に関する以下の記事もぜひご覧ください。
参考
- 総務省消防庁「過去の全国における熱中症傷病者救急搬送に関わる報道発表一覧」(2021/7 アクセス)
- 東京都福祉保健局「令和2年夏の熱中症死亡者の状況 【東京都23区(速報値)/[参考]多摩島しょ地域(速報値)】」(2021/7 アクセス)
- 時事メディカル「マスク着用で迎える2度目の夏と熱中症 ~口周り40度近く上昇、脱水症の危険~」(2021/7 アクセス)
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