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重複障害と透析

【第7回】透析室職員とのエピソード~臨床工学技士編~

2025.1.14

文:ミーナ

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医療スタッフイメージ

視覚障害をもつ私が経験した透析室の職員とのエピソードの中から、特に印象に残っていることをお話しします。今回は臨床工学技士さんとのエピソードです。


1. 技士さんに人気の杖

皆さんは「杖」と聞いてどんなものを思い浮かべますか?一般的には足の不自由な人が使うため、棒状で体重を支えるのに適した構造・強度になっていますよね。
しかし視覚障害者が使う「白杖」は「白い杖」であるという特徴以外は、その形状や構造もさまざまです。握る部分(グリップ)の材質や色、杖本体の材質や構造も多様ですし、地面と接触する石突(チップ)も、ローラー付きや電球のような形(ドロップ)、しずく型などなど本当に多種多様です。ミーナが使っているのは杖本体が折りたたみ式で、先端にローラーがついているものです。

私が通っている病院の透析室の技士さんたちはみんな、私の杖に興味津々です。
どうやら変わった機械や道具が好きな人が多いようで、杖に限らず、私が普段使いしている視覚障害者向けの道具についても関心を示されます。
技士になる方はもともと機械を触るのが好きな人も多いだろうから、変わった道具にも興味があるのかなぁと思うところです。


2. 変わった道具が好きな技士さん

変わった道具といえば、点字を打つ機械「点字器」に食指を動かす技士さんもいます。

道具や機械の構造に興味があるようで、私が点字器を使っているところを見つけるやいなや好奇心旺盛に「何それ、何それ」とやってきます。そしてかなり長い時間、穴が空くほど見つめては「スゲー」を連発(笑)。でも、あんまりずーっと見ていると、他のスタッフに「遊んでないで仕事しなさい!」って怒られちゃうようですが…。
私が音声パソコンでこの原稿を書いていることを知ったら、きっとまた少年のように「見たい見たい!」と興奮するんだろうなぁと思います。原稿そのものじゃなくて、私が書いているところをね(笑)。


3. 怖い顔の技士さん

強面 イメージ

私が透析をはじめて5年目くらいの時に、よその病院から中途採用で入ってきた技士さんがいました。彼は体格が良く少々強面とのことで、初対面の患者さんや若いスタッフたちからかなり怖がられていました。第一印象で怖い人と思われてしまい、自信を無くしてしまったようで、私のところに穿刺に来た時にわざわざ「俺、穿刺下手なんだ…」と言うのです。ですが穿刺は痛みも少なく、特に下手だとは思いませんでした。

ミーナは彼のことをあまり怖がらないので、よく穿刺にやってくるようになり、それ以外でも色々と話しかけてくれるようになりました。私が怖がらなかった理由は単純に、見た目からの先入観を抱くことがなかったからです。
その技士さんが転勤先の病院ではじめて仲良くなった患者さんは、見た目で判断しない視覚障害者だったということですね。

人は外界の情報の約80%を視覚から得ていると言われています。それだけ物事の判断基準は視覚に依存し、視覚優位に進む傾向があるのではないでしょうか。確かに第一印象は大切ですが、それだけで相手に先入観を持ってしまうのは良くない気がします。

もし私が視覚障害でなければ、他の人と同じように「見た目が怖いから」と敬遠してしまったかもしれません。
逆説的な話ですが、私も視力が落ちてきてからの方が、物事の本質がかえってよく見えるようになってきました。
だからと言って目が悪くなった方が良いという話でもないんですけどね。


4. いたずら好きの技士さん

私が通う病院の透析室の技士さんたちは、なぜかみんないたずら好きです(笑)。
ミーナの手を触って誰か当てさせたり、わざと声色を変えて話しかけたりと、他愛のないものが多いのですが、透析中の息抜きとしては結構おもしろいです。
生まれつき目が悪い私は触覚や聴覚はわりと敏感なので、案外すぐにわかってしまうのですが、いたずらに悪乗りしてわざと間違えてみたり、私自身も色々と遊んじゃっています。

真面目な性格の方は「病院でふざけるなんてけしからん」と思うかもしれませんが、長い闘病生活、長時間拘束される透析治療中においては、多少の息抜きやおふざけも必要なのかなぁと思うところです。
もちろん、緊急時など、いたずらやおふざけをしてはいけない場面はちゃんと心得ています。


5. ダイアライザを触らせてくれた技士さん

ダイアライザ イメージ

ある日の透析終了後、技士さんが「ダイアライザに触ってみない?」と声をかけてくれました。

ダイアライザ(人工腎臓、透析器)という名は知っていても、実際に見て確認することができないミーナは、それがどのようなものなのかまったくイメージできていませんでした。せっかくなので、機械から取り外した状態の使用済みダイアライザ(自分が使ったもの)を触らせてもらいました。
大きさや形状を確認し、回路の全長(約3m)も触ってみました。

回路は手もとの数センチを少し触ったことしかなく、そのあまりの長さにびっくりしました。またダイアライザ自体も簡単に触れるものだと思っていなかったので、それも驚きでした。中身の中空糸の構造についてもわかりやすく説明してくれました。

「ミーナさんに、いつか機械の形とか教えてあげたいって思ってたんだ」と技士さん。後から知ったことですが、彼には小中学校時代に弱視のお友達がいたとのことで、私のことをわりと気にかけてくれていたそうです。
「透析室にあるものでわからないものがあったら言ってね」と言ってくれたので、脱血のためのポンプや気泡検知器を実際に触らせてもらい、機械の全形も触ってみました。個人的には液晶モニター付きの洗濯機のような印象でした(笑)。

触察 イメージ

もちろん触察には限界があります。雲や星のように物理的に触れることができないものや、危険だったり不潔なために触らない方が良いものなど、どうしても話だけで理解しなくてはいけないことも多く、そのために目が悪いと情報障害となるのですが、透析室にあるものを可能な限り触らせてくれようとしていることは、とてもうれしかったです。


さて、今回は臨床工学技士さんとのエピソードをご紹介しましたがいかがだったでしょうか…。

良かったら、皆さんの透析室でのエピソードもぜひ色々と聞かせてください。

看護師さんとのエピソードも紹介していますので、良かったら読んでみてください。

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ミーナ

ミーナ
1990年9月生まれです。生まれつき、先天性緑内障という目の病を持っており、幼い頃から弱視で現在はほとんど見えていません。腎臓は2017年に急な体調不良から緊急透析導入となり、今に至ります。原因は不明です。視覚と腎臓の重複障害ですが、日々楽しく生活しています。
趣味は読書で、4時間の透析中に1〜3冊くらいは読んでしまうかなりヘビーな読書家です。

    こんな体験談が読みたい、私も体験談を書きたいなど、「研究員のはなし」にご意見をお寄せください!

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