じんラボリサーチ
【第5回】「ヘルプマーク」を知っていますか?
障害者も知らないマークの乱立の行方、いったい誰のための、何のためのマーク…?
2017.5.29
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実施概要
調査目的
「ヘルプマーク」とは、内部障害や難病の方などで援助や配慮を必要としていることが外見からは分からない人々が、配慮が必要なことを周囲に知らせることで援助を得やすくなるよう、東京都によって作成されたマークです。2012年10月の導入から、東京都は認知度向上・普及啓発活動に取り組み、現在では日本全国へ拡大しつつあります。
しかし一方で、援助や配慮を必要としている方自身や、周りの方の認知度はまだまだ低いようです。
透析患者は外見からは分かりづらく周りから理解されにくい、まさに「援助や配慮を必要としている内部障害者」です。
そこで、腎臓病・透析患者のヘルプマークに対する認知度を調査し、現状の問題点等を検討するため、アンケートを実施しました。
調査方法 | WEBアンケート |
---|---|
調査エリア | 全国(内東京在住者27名:24.8%) |
調査対象 | 腎臓病・透析患者・腎移植者 男女 年齢不問 |
調査期間 | 2016年8月1日(月)〜8月8日(月) |
有効回答数 | 109名(内透析患者90名:82.6%) |
調査対象詳細
性別 | ||
---|---|---|
男性 | 67 | 61.5% |
女性 | 42 | 38.5% |
年代 | ||
〜30代 | 9 | 8.3% |
40代 | 45 | 41.3% |
50代 | 32 | 29.4% |
60代 | 20 | 18.3% |
70代 | 3 | 2.7% |
80代〜 | 0 | 0.0% |
腎臓病との関わり | ||
CKDステージG1〜G3 | 3 | 2.7% |
CKDステージG4(保存期腎不全) | 7 | 6.4% |
CKDステージG5(透析を受けている) | 90 | 82.6% |
腎移植者 | 9 | 8.3% |
居住地域 | ||
北海道 | 5 | 4.6% |
東北 | 9 | 8.3% |
関東(東京都を除く) | 18 | 16.5% |
東京都 | 27 | 24.8% |
中部 | 9 | 8.3% |
近畿 | 23 | 21.1% |
中国 | 5 | 4.6% |
四国 | 2 | 1.8% |
九州 | 11 | 10.0% |
(1)下にある3つの画像のうちヘルプマークはどれですか(n=109)
1 | 画像(1) | 4 (3.6%) | |
---|---|---|---|
2 | 画像(2) | 15 (13.8%) | |
3 | 画像(3) | 90 (82.6%) |
(2)あなたは3つのマークの違いが分かりますか(n=109)
1 | 知っている | 41 (37.6%) | |
---|---|---|---|
2 | あまり知らない | 52 (47.7%) | |
3 | 全く分からない | 16 (14.7%) |
(3)あなたはヘルプマークを使っていますか(n=109)
1 | 使っている | 23 (21.1%) | |
---|---|---|---|
2 | 持っているけど使っていない | 8 (7.3%) | |
3 | 持っていない | 78 (71.6%) |
ヘルプマークの画像3択クイズは正解率82.6%と高かったものの、3つのマークの違いについては「知っている」と回答した方は37.6%でした。ヘルプマークは2012年に東京都が作成し導入しているため、回答を東京都在住者に絞ると「知っている」が55.6%と全国対象よりは18%高かったものの、マーク使用の対象者でありながら、認知度の低さが目立つ結果となりました。
記述回答の中には、「ヘルプマークをこのアンケートで初めて知った」という意見も多く寄せられました。障害者を対象としたシンボルマークや標識が現在多数存在しているのも原因の一つではないでしょうか。
世界共通の「障害者のための国際シンボルマーク」は、すべての障害者を対象としていますが「車いす使用者のみを表している」と誤解されていることが多いようです。
障害の中には心臓や呼吸器、腎臓など身体内部の機能障害があり、長時間の立位維持が困難な方や、日常生活に大きな支障があり援助や配慮を必要とされている方が大勢います。
そんな、外見からでは分からない内部障害や難病の方などが、援助や配慮を周囲に知らせるためのものとして2012年にヘルプマークが東京都より導入されましたが、実はほぼ同じ意味合いを持つ「ハート・プラス マーク」が2003年に作成されています。当時はこれに類似したものはなく、多くの地方自治体が同マークを採択しました。
多種多様に乱立するマーク
表のマークはほんの一部であり、地方自治体や各障害者団体等が独自に作成・提唱しているものも多数あります。これらは対象者、利用方法、示す意味、帰属団体などがバラバラで、まったく同じ目的なのに地方自治体によってマークが異なることも少なくありません。
これだけ乱立した多種多様な障害者に関するマークをいったいどれだけの人が認識しているのでしょうか。
類似するマークがこれだけ乱立すれば一般の人はもちろん、対象の障害者ですらその意味を認識出来なくなるのは当然です。
善意から生まれたマークのはずが、障害者を援助するどころか、かえって混乱をきたしているのではないでしょうか。
本アンケートの障害者マークに対する要望・意見の記述回答の中で「マークの認知度を向上してほしい」と、多くの方が切望されていました。また、「内部障害の理解を深めてほしい」という意見も多数寄せられました。
なぜ内部障害者が援助や配慮を必要とするのか
内部障害者は、見た目は健常者と変わらないため、誤解されたり、危険にさらされるなど、社会生活をする上で多くの不便を抱えています。
本当に障害者に関するマークを根付かせるためには、以下の3つが重要だと考えられます。
1)障害に対する理解を深める活動
2)同じ目的のマーク全国統一化
3)マークの認知度向上の活動
援助する側、される側の双方がマークの真意を正しく理解し、助け合える社会となるよう、マークのあり方を今一度見直すことが必要です。
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