食生活研究室腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
慢性腎臓病(CKD)とフードファディズム【第1回】フードファディズムとは
2023.7.27
緑の文字の用語をクリックすると用語解説ページに移動するよ。
じんラボ をフォローして最新情報をチェック!
フードファディズムとは、食べ物や栄養が、良くも悪くも健康や病気に与える影響を過大に評価してしまうことです。
「◯◯◯を食べれば痩せる」「◯◯◯を食べれば健康になる、病気が治る」「◯◯◯を食べると体に悪い」などと、日々テレビや雑誌から発信される食に関する情報が私達に与える影響は絶大です。もちろん有益な情報が皆無だとは言いませんが、食のブームにのって食材が枯渇したり、過剰に摂取または避けすぎて体調を崩すなどの弊害も数多く報告されています。
私たちが健康や美に対して強欲なのか、食品メーカーなどの戦略が激しいのか、グルテンフリー、スーパーフード、オーガニック、低炭水化物、ベジファースト、抗糖化、ムードフードなどと食に関する新しい言葉が飛び交い、挙げ句の果てには環境や社会に配慮した「エシカル消費」なんて意識が高い概念まで見かけるようになりました。
そんな食の情報の大海原の荒波を泳ぎ切る自信なんてありません、なんて気分にもなりますが、食事は体を維持して楽しみも与えてくれる、生きるために不可欠なこと、避けて通るわけにはいきませんね。
腎臓病・透析を受けている方は、病気がない人以上に食に関する行動が病状や病気の進行に直結します。この連載で、あふれる食の情報に上手に対峙し、ほどほどに正しく食べて食事を楽しむためのヒントや方法を一緒に考えていけたらと思っています。
今回は、フードファディズムという概念の基本的な解説です。
フードファディズムとは
ファディズム(faddism)とは狂信、流行かぶれなどという意味です。フードファディズムはアメリカで提唱され、1990年代に日本に持ち込まれた概念です。フードファディズムが無視できない点は、健康被害はもちろんのこと、詐欺や食品の枯渇などの実害があるからです。
高橋 久仁子 著「フードファディズム―メディアに惑わされない食生活」によると、フードファディズムは次のような3つのタイプに分類することができます。
1)健康への好影響をうたう食品の爆発的な流行
◯◯さえ摂取すれば万事解決、短期間で痩せたり健康になれる、病気が治る、などとされる食品が大流行することです。
2)食品・食品成分の“薬効”強調
食品そのものや、含まれる特定の成分の“薬効”を強調して勧めることです。その有効とされる成分の量や効果が発現する量には言及せずに、ただ「〇〇に効果がある」と主張する点が特徴的です。
3)食品に対する期待や不安の扇動
食生活全体を考慮せずに、ある食品が体に悪いと決めつけたり、または体に良いと万能薬視することです。特殊な食事法を推奨すること、例えば自然・天然、植物性は「良し」とし、人工、動物性は「悪い」としたりすることも含まれます。
フードファディズムに陥らないために
フードファディズム自体が多種多様なように、フードファディズムに陥らない方法はシンプルではありません。そのため、この連載でフードファディズムという概念を軸に、食とどう付き合うかについて皆さんと考えていけたらと思います。
手始めとして、あふれる食の情報の洪水に飲み込まれない心得を「さらば健康食神話: フードファディズムの罠」から引用しておきます。
本当の意味で身体的、精神的に健康に良いものを探し求めているのならば、私たちは自分の恐怖の奴隷でいてはいけないし、すっと簡単にわかるような答えを知りたいという欲求に捕らわれてはいけません。自分たちの無知を正直に認め、自分がしばしば自分自身をだますことを認識しましょう。そして他の誰かが(たとえ医療医薬の専門家であっても)自分の無知と弱さを認めようとしないときには彼らの嘘を見抜く術を学びましょう。
(さらば健康食神話: フードファディズムの罠, 2020 , アラン・レヴィノヴィッツ (著), ナカイサヤカ (翻訳) , P24)
おまけ:商業的なフードファディズムの見分け方
1991年に出版された Nutrition and behavior の全訳「栄養と行動 : 新たなる展望」という書籍の一節をご紹介します。食の情報に限らず、怪しい医療情報にも当てはまると思いませんか?
…フードファディズムは未立証の食事療法を患者に使ったり、自分のサービスに高い料金を取るニセ医者によって利用されることが多い。以下はこれらの施療者に認められるやり方である。
- 迅速かつ奇跡的な回復を約束する。
- 個人的経験や証明の報告にすぎない栄養的主張を支持する。
- 学問的に認定されていない学校からの信任状や学位を掲げている。
- 栄養的必要性を納得させるために標準化されていないテストを使う。
- 彼らの仕事を抑圧しようとする医師や医療社会を信じないように告げる。
- ビタミンやミネラルの大量投与、ハーブ、酵素、動物の腺や脳からの摘出物など、疑わしい物質を処方する。
- 医師や薬局を通してよりもむしろ人々に直接、あるいは雑誌広告を通して販売しようとする。
次回は、フードファディズムの事例を取り上げ、問題点を掘り下げます。
― with Kidneyプロジェクト 開催中のアンケート ―
この記事はどうでしたか?
参考
- 高橋 久仁子「フードファディズム―メディアに惑わされない食生活」中央法規出版 (2007/10/1)
- アラン・レヴィノヴィッツ (著), ナカイサヤカ (翻訳)「さらば健康食神話: フードファディズムの罠」地人書館 (2020/5/13)
- Robin B.Kanarek, Robin Marks-Kaufman 著,高橋久仁子, 高橋勇二 訳「栄養と行動 : 新たなる展望」アイピーシー(1994/1)
食生活研究室の最新記事
- 慢性腎臓病(CKD)と食のリテラシー【第2回】最近目にするさまざまな用語 その②次世代のたんぱく資源? 培養肉や昆虫食
2024.12.16 - 慢性腎臓病(CKD)と食のリテラシー【第1回】最近目にするさまざまな用語 その①超加工食品や代替食品ってどうなの?
2024.11.25 - 慢性腎臓病(CKD)とフードファディズム【第3回】気になる「健康食品」と健康のための食品選びの知恵
2024.07.22 - 慢性腎臓病(CKD)の食事療法での皆さんの愚痴や悩み
2024.04.15 - 慢性腎臓病(CKD)の食事療法でのうれしい変化と“棚ぼた”
2024.01.15