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腎臓病・透析をしている方が気を付けたい「冬季うつ」とは? 症状や対処法を知ってどんより気分を乗り越えましょう
2022.12.12
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年末に近づくにつれ、仕事や家庭のことでやらなければならないことが増えてきますが、「なんだか気分が落ち込んでやる気が出ない」「十分寝ているのに日中も眠い」といった状態に悩まされている方は、もしかしたら「冬季うつ」かもしれません。
じんラボが行った調査「腎臓病・透析患者の70%以上がうつ病・抑うつ経験者!? 患者を取り巻くメンタルケア環境の実態」によると、腎臓病・透析をしている方の70%以上がうつ病・抑うつを経験されたことがわかっています。今回は、うつ病のひとつ「冬季うつ」についてお話します。
冬季うつとは?
冬季うつは名前の通り冬(または秋から)に症状が現れて春先の3月ごろに寛解するうつ病で、季節性感情障害やウインターブルーとも呼ばれています。
冬季うつには、日照時間が大きく影響していると考えられています。
人は日光を浴びることでセロトニンを合成します。セロトニンは、精神を安定させ幸福感を生み出すなど精神面に大きく影響を与える脳内の神経伝達物質の一つで、別名「幸せホルモン」とも呼ばれます。
セロトニンは体内に蓄えることができず、セロトニンが欠乏すると不安や気分の落ち込み、感情の起伏が激しくなるといった症状を引き起こします。冬は特に高緯度の地域ほど日照時間が短くなり、寒さで外に出る時間も減るため日光を浴びる時間が減少し、冬季うつを発症しやすくなるのです。
また、ストレスがセロトニンをさらに欠乏させると考えられています。特に腎臓病・透析をしている方は水分管理や食事制限、通院や透析の拘束感など、ストレスの要因が多いため注意が必要です。
ストレスと腎臓に関する記事は以下の記事をご覧ください。
- 春はストレスに要注意! 腎臓とストレスの関係
2021.4.26 文:s.yuri
冬季うつに見られる具体的な症状
冬季うつに見られる主な症状として以下が挙げられます。
- 何をするのにも気力がわかない
- 物事を楽しめない
- 倦怠感がある
- イライラする
- いくら寝ても眠い
- 過食(特に炭水化物や甘いものが欲しくなる)
- 体重の増加
1〜4 は一般的なうつ病にも見られますが、5~8 は冬季うつで見られる特徴的な症状です。
日常で行える冬季うつの対処法
気分が落ち込むと何もする気力がなくなるため、体を動かすのが億劫になりがちです。そうするとさらにやる気が出ない、体重が増加する、イライラが解消できないなどの状態からさらに意欲が低下する悪循環に陥りやすくなります。
そうした負の連鎖を断ち切るために、以下の対処法を心掛けてみましょう。
①積極的に日光を浴びる
セロトニンは体内に蓄えておくことができないため、朝起きたらカーテンを開けて、しっかりと日光を浴びましょう。
病院や自宅で人工的な光を浴びる「高照度療法」という治療もあるそうです。晴れた日の屋外は100,000ルクス(明るさを表す単位)、曇りの日でも30,000ルクスあり、高照度光療法は2,500ルクス以上の照明が使われます。
冬季うつ対策として「自室やオフィスは明るい照明を使うのがよい」という言説も見かけますが、一般的な住宅やオフィスの照明は最大でも1,000ルクス程度なので、屋内より曇りの日の屋外の方が効率よく光を浴びることができます。
日光は1時間ほど浴びるのが効果的です。朝散歩しながら朝日を浴び、室内では日光が差し込みやすい南向きや東向きの部屋にいるといいでしょう。
②日常的に体を動かす
運動を取り入れることで活動的な気持ちになることができます。運動の習慣化が心身にもたらす効果は高いものの、急に負荷の高い運動を取り入れるとケガにつながります。体を動かす習慣のない方は無理のない範囲内で少しずつ取り入れてみましょう。
なお以下の記事では、腎臓と運動の関係性や体に負担をかけない適度な運動量などについて解説しているのでぜひご覧ください。
- 腎臓病に負けない! 保存期に取り組みたい運動療法
2022.1.17 文:s.yuri
③規則正しい生活習慣を送る
冬季うつは体内時計の乱れも大きく関係するといわれています。
冬は日が出るのが遅く、そして日が早く沈むため体が時差ぼけのような状態に近くなるそうです。体内時計を乱さないよう、毎日の就寝時間や起床時間ができるだけ大きくずれないよう規則正しい生活を意識しましょう。
①〜③以外にも、「トリプトファン」の摂取が多く推奨されています。トリプトファンは必須アミノ酸の一つでセロトニンの原料となります。トリプトファンは体内で合成できないため食べ物から摂取することになりますが、魚や大豆、乳製品、バナナなどに多く含まれているためカリウムや蛋白質管理が必要な方は注意が必要です。
冬季うつの対策は主治医にも相談を
冬季うつの記事を書こうと思ったきっかけは、私も冬季うつを発症したことがあったからです。以前生活していたカナダでは夏はかなり日が長く夜の9時になっても明るいのですが、冬になると晴れ間が非常に貴重な上に午後4時頃には日の入りしてしまうため、「しっかり寝ているはずなのに眠い」「ずっと体がだるく、何をするにも気力がわかない」「甘いお菓子が食べたくて仕方がない」…という状態に陥ったことがあります。
私の場合は、ドラッグストアでサプリメントを摂取したり、軽く運動を取り入れたりして乗り切ったのですが、腎臓の機能が低下している方の中には服用している薬や体調によってはサプリメントを取り入れるのが難しい方もいるかと思います。今冬は新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行が心配されていることから、通院や透析以外は自宅にこもらざるを得ない日々が続いていることと思いますが、無理のない範囲で、今回お話した対処法を意識してみてくださいね。
また、心の不調はなかなか主治医に相談しにくいかもしれませんが、我慢せずに一度相談してみてはいかがでしょうか。
冬季うつのほか、冬の間に気を付けていただきたいことを以下の記事でもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
- 透析をしている方の多くが悩む、乾燥による肌のかゆみ対策
2022.2.7 文:s.yuri - 透析をしている方必見! ~冬の入浴でのヒートショック対策
2022.1.31 文:s.yuri - 知っトク? こんな事〜患者・家族のお役立ち情報【第42回】冬の盲点、低温やけどにご用心
2020.2.3 文:アスペクト比P
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参考サイト
- e-ヘルスネット(厚生労働省)「セロトニン」 (2022/12 アクセス)
- 保健指導リソースガイド「冬に気持ちが落ち込む『季節性うつ病』 3つの方法で対策」(2022/12 アクセス)
- 医療法人澄心会 豊橋ハートセンター「“ウインター・ブルー(冬季うつ)” 気のせいではなかった!冬に気分が落ち込む理由とは」(2022/12 アクセス)
- あらたまこころのクリニック「冬季うつへの対処 幸せホルモン(セロトニン)とダークホルモン(メラトニン)を味方につける」(2022/12 アクセス)
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