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透析をしている方必見! ~冬の入浴でのヒートショック対策

2022.1.31

文:s.yuri

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熱めのお風呂に入り、体の芯から温まりたくなる冬。しかし、寒い季節は急激な温度変化によって「ヒートショック」を引き起こしやすく、最悪の場合命を落とす恐れがあります。
気温の大きな変化を受けて血圧が急激に上下し、心臓や血管に悪影響を及ぼすことをヒートショックと呼びます。透析をしている方の死因の3割近くは心血管系合併症が占めており、急激な血圧の変動が及ぼす影響が健康な人と比べて大きいため要注意です。ヒートショックを防ぐ方法を知り、心臓や血管への負担をできる限り減らしましょう。


ヒートショックが起こるしくみ

ヒートショックは寒さが厳しくなる11月から2月の間で発生しやすく、なかでも入浴前後は急激な温度差が血圧の乱高下をもたらします。

人の体は寒さを感じると血管を縮めて血流量を減らすことで体温の低下を防ぐ、つまり血圧を上げる働きがあります。寒い脱衣所で衣服を脱ぐと血圧が上昇し、その後お湯に浸かると体温が急に上がって血管が拡張するため、血圧は急降下します。こうした急激な血圧の変化が心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。冬場は、入浴前後以外にも屋内の温度差などでも起こりえます。急激な血圧の変化に注意しましょう。

ヒートショックのしくみ

また、湯船から立ち上がった際にめまいや立ち眩みを経験した方は多いことと思いますが、これは入浴中の水圧から体が解放され血管が拡張し、血圧が低下することが原因です。軽度のめまいや立ち眩みであれば安静にしていれば治まりますが、ヒートショックで血圧が一気に下がり、失神などの意識障害を引き起こすと溺れて亡くなる恐れがあります。過去の厚生労働省の調査では入浴中の事故死は年間約1万9000人 と推計されています(死因が溺水以外の疾病等と判断されたものを含む)。

特に高齢になると、体温維持機能が低下して血圧が変動しやすくヒートショックに要注意です。厚生労働省によると、2020年に浴槽内において不慮の溺死及び溺水で亡くなった65歳以上の高齢者は4,724人に上りました。


ヒートショックを防ぐために

ヒートショックを防ぐポイントは、温度差を少なくしてできる限り血圧の変化を抑えることす。ここでは、寒さ対策と入浴時の注意点を紹介します。


すぐにできる脱衣所と浴室の寒さ対策

一般的な家の間取りはリビングなどを日当たりの良い南側に設計するため、日が当たりにくい北側のトイレや浴室は冬は一段と冷え込みます。理想的な対策は、家の断熱性能を上げて、暖房がなくて寒い場所をなくすなどして家全体を暖めることですが、まずは服を脱いだ後の寒さを和らげるために、次の対策を行いましょう。

  • できれば脱衣所と浴室に暖房器具を設置する
  • 床一面にマットやすのこ等を敷き、足元の冷えをふせぐ
  • 脱衣所の窓に断熱シートを貼る

入浴時の注意点

入浴時には家族に伝えましょう
万が一入浴中に体調が悪化した場合、家族に早く気付いてもらうことが重要です。お風呂に入る前に声をかけましょう。
湯船の温度は41度以下を目安に、熱くしすぎないよう注意しましょう
熱いお湯に浸かると血圧が急上昇します。居間や脱衣所の気温18度未満になると家全体が温暖な場合と比べて42度以上の“熱め入浴”になりやすい そうです。
お風呂に入る前に浴室暖房などで脱衣所や浴室内を暖めましょう
暖房がない場合は、湯船の蓋と浴室のドアを開けて湯気を立てたり、シャワーで浴室の壁と床にお湯をかけることなどで室内を暖めてください。
湯船に入る前にかけ湯をしましょう
体が冷えた状態で急に湯船に入ると、血圧が急降下します。湯船に入る前には、心臓から遠い手足からお湯をかけて少しずつ体を温めましょう。かけ湯は一回だけでなく複数回行うことで、湯船に浸かったときの血圧の変化は緩やかになります。
お湯に浸かるのは「胸元くらいの高さまで」「10分まで」を目安にしましょう
肩までお湯につかると体に水圧がかかり、静脈が圧迫されることで心臓への血流量が増え、心臓に大きな負担 がかかります。また長時間お湯に浸かることで、のぼせ(熱中症)を引き起こす恐れがあるため、お湯に浸かるのは10分を目安にしましょう。
お湯から出るときは急に立ち上がらないようにしましょう
湯船から急に出ると、脳への血流量が減少して意識障害が生じやすくなります。浴槽の縁や手すりなどにつかまりながら徐々に立ち上がりましょう。

こんなときは入浴を控えましょう

  • 起床して間もない時間…血圧の変動が大きいため、起床後すぐの朝風呂は控えましょう。
  • 食事後…食事後1時間は消化のため胃に血液が集まり、血圧が下がりやすくなります。
  • 飲酒後…飲酒すると血管が拡張して血圧が低下します。またアルコールによって適切な判断が難しくなるため、事故やけがを招く恐れがあります。
  • 透析後…透析後は血圧が下がりやすいため、入浴によってさらに血圧が低下して意識障害を招く恐れがあります。透析後に入浴する場合は血圧が安定しているか必ず確認してください。

【執筆後記~家中のどこで何をしていても心臓を労わるために】

「ちょっとの時間だけだから…」と、洗面所や浴室が寒いのを我慢してお風呂に入る人はとても多いと思いますが、油断は禁物です。寒さが厳しい日ほど熱いお風呂に浸かりたくなりますし、長風呂もしたくなるものですが、心臓や血管を労わることを念頭にできるところから取り入れてみてくださいね。

今回は入浴前後のヒートショック対策について解説しましたが、トイレや廊下など暖房が効いていない場所に移動する際もヒートショックのリスクは高まります。ちなみに暖房なしの冬場のトイレは、10度以下まで下がる と言われており、対策が欠かせません。

しかし、廊下のように暖房器具を設置するのが難しかったり、一日中暖房を稼働させるのがあまり現実的ではない所もありますよね。そのような場合は、普段着の上から“室内用の防寒着”を着用するのがおすすめです。私はここ数年、冬の間は「着る毛布」という防寒着をお風呂に入るとき以外ずっと愛用しています。そのお陰でトイレに行くときも朝布団から出るときも全く寒さを感じません。みなさん一人一人の生活にあったヒートショック対策を取っていただけるとうれしいです。

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s.yuri

s.yuri
じんラボのライター。大学卒業後、地元紙で主に教育や警察、司法、スポーツ、地域ネタを追いかける社会部記者として働き、その後夫の転勤に伴いゆるいフリーランスでライター・編集者として活動してきました。
学生時代から医療福祉に関する執筆に関わりたいと思っていたのが、十数年の時を経てじんラボでご縁をいただました。透析や腎臓病の勉強を重ね、少しでも元気の出る情報をお届けします。

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