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理学療法士ゆうぼーの じんラボ運動療法講座【第6回】
血圧と運動
第二部:早朝高血圧
第三部:血圧コントロール
2013.8.19
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第一部:腎臓病と高血圧
腎臓と血圧には密接な関係があります。
そもそも血圧とは?
血液を全身に循環させる為に、心臓がポンプの役割を果たすことで血液を動脈に送り出します。血圧とは、この心臓が血液を送り出す際に血管に加わる圧力を指します。
血圧は上・下の数値が示されますが、上の数値は「収縮期血圧」といい、心臓が血液を送り出す為に収縮したときの動脈内圧のことで、下の数値は「拡張期血圧」といい、これは心臓が拡張して戻ってきた血液を心臓へ入れるときの内圧を示しています。
腎臓の機能が低下すると、Na(塩分)と水分(尿)をうまく排泄出来なくなり、血液量が増加するので血圧も上昇します。
また、腎臓は末梢血管(毛細血管)から成り立っているので、腎臓の機能が悪くなると、末梢血管(毛細血管)に血液が流れ込む際に受ける圧力が強くなり、血液が流れにくくなることで血圧が上昇します。
更に、腎臓の内分泌機能(ホルモンをつかさどる機能)は「レニン‐アンジオテンシン系」という血圧調節機能を有しています。「レニン」という物質は腎臓(傍糸球体細胞)から分泌されるので、血圧調節に大きく関与しています。
高血圧治療には、一般的にはARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)やACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)が用いられ、これだけで血圧が目標値まで下がらないときにはCa拮抗薬やループ利尿薬を併用することもあります。
非薬物療法としては、十分な睡眠と適度な運動、食事などのバランスと生活のリズムを整えることが重要です。
運動の必要性とは・・・?
運動することで血中の脂肪分解が促進され、降圧効果を得ることができます。また、これにより動脈硬化や高脂血症の改善にもなります。
更に、運動を約3ヶ月継続することで収縮期血圧10〜20mmHgの降圧が期待できる報告もあり、継続することで安定した血圧を維持することもできるでしょう。
具体的な運動方法については、第1〜4回の運動療法講座を参考にしてください。
- 理学療法士ゆうぼーの じんラボ運動療法講座 第1回
- 理学療法士ゆうぼーの じんラボ運動療法講座 第2回
- 理学療法士ゆうぼーの じんラボ運動療法講座 第3回
- 理学療法士ゆうぼーの じんラボ運動療法講座 第4回
第二部 早朝高血圧
血圧は日によって変動しますが、1日の間でも一定ではありません。気温変化や身体活動、精神状態、尿意・便意の有無等の影響を受けて、変動を繰り返しています。 また、血圧は覚醒度によっても異なってきます。 睡眠中は副交感神経が優位に働き、血圧は低くなりますが、起床と同時に上昇しはじめ昼前後にピークを迎えます。 起床時間に交感神経-副交感神経の切り替えがあり、交感神経の活性が急激に高まります。この作用により、起床時には急激に血圧が高まります。これは「早朝高血圧」と呼ばれており、血圧の大きな変動が起きやすいので、早朝には脳卒中や心筋梗塞が多発しています。
予防策としては、目を覚ますと同時に活動すると交感神経が急激に活性化して血圧を一気に上昇させてしまいます。なので、目が覚めて間もなくは布団の中でゆっくりしてから起き出すことが望ましいでしょう。
また、急な温度変化も大きな血圧変動を招くので、悪影響を及ぼします。入浴前後や温度差のある場所の行き来はなるべく避けるようにしましょう。
第三部 血圧コントロール
最後に、「血圧コントロール」のお話をしたいと思います。
一口に血圧といっても、ひとそれぞれ正常値は異なります。よって、定期的に血圧を測定して、ご自身の血圧がどれくらいなのか知っておくことが必要です。その上で、経過を追っていくことで、血圧の変動の有無も確認するようにしましょう。変動がある際には、主治医の先生に相談してください。
以下、血圧コントロールの指標として用いられることの多い「アンダーソン・土肥の基準」を掲載しますので、運動する際の参考にして下さい。
アンダーソン・土肥の基準
Ⅰ.運動を行わないほうがよい場合
- 安静時脈拍数 120/分以上
- 拡張期血圧 120以上
- 収縮期血圧 200以上
- 労作性狭心症を現在有するもの
- 新鮮心筋梗塞1ヶ月以内のもの
- うっ血性心不全の所見の明らかなもの
- 心房細動以外の著しい不整脈
- 運動前にすでに動悸や息切れのあるもの
Ⅱ.途中で運動を中止する場合
- 運動中、中等度の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛などが出現した場合
- 運動中、脈拍が140/分を越えた場合
- 運動中、1分間10個以上の期外収縮が出現するか、または頻脈性不整脈(心房細動、上室性または心室性頻脈など
- 運動中、収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合
自分の血圧と体調に注意しながら、規則正しい生活をしていきましょう!!
参考
- 細田多穂、柳澤健(編集)(2000)『理学療法ハンドブック改訂第3版第1巻』協同医書出版社
- 細田多穂(監修)、山崎裕司、川俣幹雄、丸岡弘(編集)(2012)『内部障害理学療法学テキスト』南江堂 改訂第2版
参考サイト
- 厚生労働省『高血圧ホームページ』(2013/8 アクセス)
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