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理学療法士ゆうぼーの じんラボ運動療法講座【第11回】
〜脳卒中のリハビリ ①〜
2015.2.26
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腎臓の働きが悪くなると体内の血液量が増加するため、高血圧になりがちです。血圧が上昇すると心臓や血管に負荷がかかってしまうので、脳血管障害を引き起こすリスクが高くなります。
また腎機能が悪化すると尿毒素により血管壁の石灰化や肥厚(ひこう:肉が肥えて厚くなること)が発生し血圧上昇に繋がります。
他にも貧血やカルシウム・リン代謝、加齢による血管の老化なども脳卒中への危険因子になりうるという報告もあります。
脳血管障害は透析患者さんの合併症の1つであり、代表的なものとして脳卒中について説明し、その後遺症とリハビリ方法について説明します。
脳卒中について
脳卒中の分類として、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などがあります。①脳梗塞
脳梗塞は動脈硬化や高脂血症、栓子(せんし:血の塊)などが原因で起きます。
これらにより血管が塞がってしまいその先の脳細胞に血液が行かず、酸素や栄養素が送られなくなってしまうことにより脳細胞が壊死します。壊死した部位が担当していた機能には障がいが残ることがあります。
②脳出血
脳出血は高血圧や加齢による退行変性などが原因といわれています。これらの原因により血管に小さなコブができ、これが破裂して血腫が出来るのが脳出血です。
③くも膜下出血
脳を外側から順番に覆っている膜、硬膜・くも膜・軟膜がありますが、くも膜下出血はくも膜と軟膜の間に出血します。くも膜下出血の発症前に激しい頭痛が起こるので、異変を感じたらすぐに医師の診断を受ける必要があります。
麻痺は回復するのか?
脳卒中直後は意識障害・頭痛をはじめとした病状が現れます。いろいろな症状が落ち着いたら、麻痺はゆっくりと回復に向かいますが、その回復過程も脳の損傷した大きさや場所によって異なります。
例えばある同じ日に脳出血により倒れた患者さんが何人かいたとしても、治療後の経過は同じではありません。
被殻出血(ひかくしゅっけつ:脳の中央にある「被殻」から出血する脳出血)では重度の運動麻痺、視床出血(ひしょうしゅっけつ:大脳の半球に囲まれた位置にある間脳の一部を占める部位「視床」に出血する脳出血)では感覚障害が主な症状として現れます。橋出血(きょうしゅっけつ:中枢神経の中脳と延髄との間の部位での出血)においては、呼吸障害や四肢麻痺などが起きます。
このように一概に脳卒中といってもさまざまな病変や症状があります。
そこで今回は脳卒中後遺症で最も多い「片麻痺」に対するリハビリテーションについてご説明したいと思います。
片麻痺は損傷した脳の反対側に麻痺が現れます。例えば脳の左半球に出血あるいは梗塞が起これば、右側半身の手足に麻痺が現れます。
代表的な片麻痺のパターンとしては、画像1の写真にように上肢(腕や肩周囲筋)の筋肉の屈曲(くっきょく:折れ曲がる)方向に緊張が高まり、下半身は伸展(伸びる)方向に緊張が高まることが多いです。
この状態が続くと、肩・肘の関節は曲がったまま拘縮(こうしゅく:関節が固まってしまう状態)、足関節においては、「尖足(せんそく)」といって、足が画像2のように下を向いた状態で固まってしまいます。
一度固まってしまった関節を元に戻すのは大変困難なリハビリが必要です。なお固まった状態が長期間経過してしまった場合は、正常に関節を可動することはほぼ不可能といっても過言ではありません。
では、拘縮が起きると何が問題か?
筋力の発揮には関節の動きを伴います。
例えば上腕二頭筋の筋力を発揮するためには肘の関節を曲げなくてはなりません。膝を伸ばす主動作筋である大腿四頭筋を働かせるためには膝関節の動きがなくては筋力を発揮することはできません。
よってリハビリとしてROM(Range Of Motion:関節可動域)訓練と呼ばれている関節を動かす訓練が必要となります。
脳卒中後遺症(片麻痺)に対するリハビリ
今回は運動方法ではなく理学療法としての治療方法の紹介です。
ここで取り上げた方法は個人や家族が行うものではありません。
実際に行う場合は理学療法士の指導の下行いますので、ご注意ください。
下の説明では、左片麻痺という設定で行います。
写真の中で薄茶の服を着ている人が患者、水色の服を着ているのがセラピストです。
※肩が脱臼している人へは、絶対に行わないでください。
①肩関節のROM訓練
麻痺が現れた患者さんは肩関節が亜脱臼(関節から骨の関節面がはずれかかっている状態)している可能性があります。よって、セラピストはまず、右手で患者の肩を抑えるようにして、脱臼を防ぐようにしています(画像3)。
肩を動かすときは抑えたままとしセラピスト側が写真のように上や横方向にゆっくりと動かします(画像4,5,6)。
動かす範囲は、痛みの出ない範囲でできるだけ大きく動かしています。
②手首のROM訓練
手首のROM訓練は時計を付けるあたりを押さえて、写真のように下と上に10回程度動かします。健常な手首では90度程度動きますが、拘縮がある方の場合は可動範囲に制限があることがあります。よって、制限や痛みがある場合はその状況に応じて動かす範囲を小さくします。
③足首のROM訓練
足首のROM訓練では、脛(すね)の下の方を支えながら行います。
つま先を上方向にアキレス腱が伸びるように引っ張ります。
画像12も足首の関節運動を促す訓練になります。傾斜のある専用の台に足を乗せて自分の体重を負荷として行うので、より強い負荷をかけることが可能となります。
足首が固まってしまいますと立った時に左右のバランスが悪くなり、歩行にも大きく悪影響を及ぼします。
関節は3日間まったく動かさなければ固まり始めるといわれています。こまめに動かす機会を作ることが望ましいでしょう。
- 脳卒中後遺症におけるリハビリのポイント
- ★関節が固まってしまう関節拘縮予防のためマメに動かす
- ★麻痺の状態にあった杖や自助具の選定を行う
- ★残存した身体機能の維持に努める
今回は脳卒中の中でも片麻痺に限定したリハビリを紹介いたしました。
前述しました通り麻痺の症状は人によってさまざまです。症状によって適応するリハビリ内容や禁忌事項も異なりますので、不明な事がございましたら「じんラボ知恵の輪」にてご質問ください。
参考
- 日本腎臓学会(2013)『エビデンスに基づくCKD診療ガイド2013』東京医学社
- 福井 圀彦(2009)『脳卒中最前線 第4版』医歯薬出版
- 上月正博(2009)『新編 内部障害のリハビリテーション』医歯薬出版
- 社団法人 日本リハビリテーション医学会(2015/2/7 アクセス)
- 脳卒中ってどんな病気?|厚生労働省 (2015/2/7 アクセス)
- 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン2009(2015/2/7 アクセス)
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