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東京ネクスト内科・透析クリニック 第3回在宅血液透析患者会参加レポート Part1
2015.6.25
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2015年4月26日(日)、東京・日暮里にある「東京ネクスト内科・透析クリニック」で、在宅血液透析(HHD)の患者さんを集めて第3回在宅血液透析患者会が開催されました。
過去2回の開催では食事会が中心でしたが(第1回の様子は「東京ネクスト内科・透析クリニック 第1回在宅血液透析患者会参加レポート」でご覧ください)、今回は東京ネクスト内科・透析クリニック院長である陣内彦博先生の講演と、患者さん、医療スタッフ、医療メーカーを交えた勉強会の形式でした。在宅血液透析の今後のあり方が語られ、また、さまざまな意見が交換された様子を、バンザイさんとのイラストコラボで3回にわたり紹介します。
陣内先生から在宅血液透析の現状について報告
今回は東京ネクスト内科・透析クリニックだけではなく、埼玉医科大学病院、品川ガーデンクリニック、腎内科クリニック世田谷など、他の透析施設からも大勢の在宅血液透析患者さんが参加しました。 早速陣内先生のお話です。国内外問わず多くの頻回・長時間透析に関する論文から、死亡率の低下を示すデータが数多く示されました。
「このスライドは透析時間と1年死亡危険度を示したものです。週3回、1回4時間の透析時間(240〜270分)での死亡危険度を1とした時、時間を30分延長するだけでもかなり死亡率が下がるのが分かります」
「またMeta-Analysisという頻回・長時間透析の論文をまとめたもの(論文数:400、登録患者数:600人)には、在宅やオーバーナイト透析のデータも含む頻回・長時間透析に関するデータがあり、心臓の大きさが155gだったものが、頻回透析や長時間透析を行うことによって30g減っていることが示されています。これは頻回透析、長時間透析を行うことで心臓の状態が良くなり、また血圧も下がることを示しています」
透析時間により生存率に差が出てくる理由として「週3回、1回4時間の透析では毒素の抜けに限界がある」と説明いただきました。時間や回数をかけなければ抜けない毒素が存在するとのことです。
陣内先生はさまざまな論文から頻回透析と長時間透析の効果を実感し、2年前に「施設での長時間透析を患者さんに提供しよう。たとえ30分延ばすだけでも意味がある」と考え、長時間や頻回(オーバーナイトや在宅血液透析)を行うために東京ネクスト内科・透析クリニック開院をされたそうです。
「透析患者の9割が中2日空き後に亡くなっています。在宅血液透析は唯一中2日空きを無くすことのできる透析であるから、できるだけ多くの患者さんに在宅血液透析に取り組んでほしい」
東京ネクスト内科・透析クリニックでの在宅血液透析とオーバーナイト血液透析への取り組み
現在、東京ネクスト内科・透析クリニックでは、施設での長時間透析と週1回のオーバーナイト透析(週末の深夜時間帯に8時間の血液透析)提供と、在宅血液透析導入の訓練と実施におけるサポートを行っています。
上の写真は、在宅血液透析に取り組んでいるある患者さんの自宅の様子です。中央にあるのが我々にも馴染みのある血液透析装置、その隣にあるのが「RO水装置」と言う家庭用の水道水を浄化するための専用機器です。手前の丸い機器は血液検査で使用する「遠心分離機」です。在宅血液透析を行うには、このような機器の設置の他に、ダイアライザや透析液などの消耗品の保管場所も必要です。
※あわせて基礎知識「在宅血液透析について」の情報もご覧ください。
続いて東京ネクスト内科・透析クリニックにおける透析の取り組みについての説明がありました。
「昨年11月の数値でまだ数が少ないのですが、施設透析は106人、週1回NHD(オーバーナイト透析)10人、在宅透析は11人、今現在は20人程に増えています。施設でも長時間を行なっているので週の平均透析時間は13時間、オーバーナイトは平均15時間、在宅透析での平均時間は一番長い方で29.9時間です」
一般的な施設透析に比べ、どの透析も長時間行われていることが分かります。
施設透析での血液検査は通常、中2日空き直後に採血が行われ検査数値を出しますが、在宅血液透析の場合は基本的に中2日空きが無く中1日空きでの血液検査になります。これらの検査結果を比較しても条件が異なるため、東京ネクスト内科・透析クリニックでは毎年11月に施設透析で中1日空き後の採血を行うことで条件を揃え、施設透析、オーバーナイト透析、在宅血液透析の検査結果を比較しています。
「尿素窒素(BUN)の前値では、頻回が行われている在宅透析が一番良い数値で42.9mg/dL。施設透析においても56.8mg/dLですので、悪い数値ではありません。注目すべきは在宅透析の前β2-ミクログロブリン(β2MG)の値が19.7mg/dL。週3回、1回4時間の施設透析では20mg/dLを切ることは難しいと思います」
また、リン(IP)の値も在宅透析が一番良い数値が出ており、副甲状腺ホルモンの分泌量であるIntact PTH(副甲状腺ホルモンintact)の値は施設全体できれいにコントロールされている値でした。
※検査値の見方は、陣内先生にも監修いただいた「とうせきくん」をご参照ください(ご利用には会員登録が必要です)。
「所長のとうせきくん」でサンプルをご覧いただけます。
以下は東京ネクスト内科・透析クリニックでの頻回透析、長時間透析の利点のまとめです。
- 長時間ではリン(IP)、尿素窒素(BUN)、β2-ミクログロブリン(β2MG)の数値が良く、リン吸着剤使用が減る傾向にあった。
- 頻回透析では加えて降圧剤使用が明らかに少ない傾向にあった。
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