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夫婦間生体腎移植 〜繋がる想い〜

【第1話】透析導入、そして運命の出会い

2015.6.22

文:横山真三

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妻と出会ったばかりのころ妻と出会ったばかりのころ

透析導入となるまで

私が慢性腎不全と診断されたのは25歳の時でした。
当時、家業の建設業を継いでいた私は月に1日2日しか休みを取らず、ひたすら現場の作業に没頭していました。

そんな中、夏も近付いてきた蒸し暑い日でした。その日も普段通り現場に出ていた私は、突然身体が重くなり、座り込んだまま動けなくなってしまいました。「少し疲れが出たのだな…」と思いながら、やっとの思いで事務所まで戻った私の姿を見た母親が、これはただ事ではないと感じたのでしょう、「大丈夫だ! 」と言い張る私を近くの病院へ引きずるように連れて行ってくれました。そのころには随分気分が良くなっていた私は不謹慎ながら「これでしばらくは休めるかな…」などと考えていました。

狭いベッドに横にさせられた私は「とりあえず採血をしましょう」と担当の看護師さんに言われ、右腕を差し出しました。看護師さんが採血のために針を刺した瞬間「わっ! 」と言う声をあげ、何事かと見たその手の注射器には、ど素人の私でも分かるくらいの“薄い”血液が吸い込まれていました。

「よくこの状態で立っていられましたね。絶対立ち上がらないで待っていて下さい! 」
この時すでに末期の腎不全でした。

それまで一度も検診などで引っかかったこともなく、大きな病気の経験や入院の経験さえない私は病気の知識も全く無く、この一大事にその重大さが理解できずに「しばらくはクーラーの効いた病室でゆっくりできる…」と能天気なことを考えていました。

それから間もなく“慢性腎不全”と診断され、病気に無知な私も徐々にその恐ろしさを学習し「これはえらいことになってしまった」とようやく実感し始めました。それからは「どうやって透析を逃れるか」ばかりを考え、退院して自宅にて安静と食事療法に専念しましたが、思いとは裏腹に検査データは悪くなる一方…。とてつもなく厳しい食事制限に身体は痩せていくばかり…。

それでも回復を願い透析導入を拒否し、抵抗を続けましたが半年ほど頑張ったある日の診察日。クレアチニンが限界値まで上がっており、主治医の先生から「もう限界だね。本当に透析を考えないと…」と言われたのと同時にその場に倒れてしまいました。体も限界、精神的にも限界、そしてついに透析導入を言い渡されたショック、全てが重なり目を覚ますと病室のベッドでした。

数ヶ月前からデータ的にもギリギリの状態であったにも関わらず、少しでも導入を遅らせようとしてくれた先生に感謝しながら、病室に来た先生に「もう透析してください。僕も限界みたいです」と言い、自分の気持ちに区切りをつけました。


思わぬ出会い

多くの透析機が並び赤く染まったダイアライザー、ずらりと並ぶ患者さんたち。「俺の人生も終わりだな…」そう思いながら初めての透析を開始したことを忘れはしません。しかし始めてみると徐々に体調は良くなるし、保存期の厳しい食事制限からも解放され「もう少し早く導入していたら楽だったかもな〜」などと思う余裕も出てきました。

また何よりこの時の透析室のスタッフの素晴らしさが透析を苦痛ではなくしてくれました。常に笑い声が聞こえ、時には仕事ではなく人として相談に乗ってくれたり相談されたり…。20数年経った今でもその当時のスタッフ数人とは繋がりが持てています。

 こうして順調に透析ライフを送り始めて3年ほど経ったある日、3名の看護師さんが透析室へ異動してきました。その中で一際小さく、いつも笑顔の彼女の腎臓が、今私の中で必死に働いてくれるようになると、その時は想像できるはずもありませんでした。

次回は結婚、そして妻からの腎臓提供の申し出についてです。

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横山真三

横山真三
26歳で透析導入となり途中腹膜透析(CAPD)も経験しました。CAPDもノントラブルで経過しましたが、腹膜を守るために8年で終了し再びHDへ。縁あって透析室の看護師さんと結婚して17年間、妻からは常に腎臓提供を申し出てくれていましたが、妻の体にメスを入れることなど考えられず、気持ちだけもらっていました。
そんなある日「この方たちなら妻を任せることができる! 」という心から信頼できる先生方との出会いに恵まれ「夫婦間生体腎移植」へ踏切ました。現在移植後4年を順調に経過しています。

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