透析前HCO3-濃度
別名:透析前血中重炭酸
略号:
腎臓の機能が低下し酸を処理する能力が衰えると、血液が酸性に傾いた状態である代謝性アシドーシスになります。その状況把握のための重要な酸塩基平衡の指標が透析前HCO3-濃度です。血液ガス分析を測定する機会は極めて少ないため、透析前のリン、ナトリウム、クロールの値を用いて日常の診療で使用しやすいように簡略化した推定式を用いて計算します。
目標値より低値の場合は代謝性アシドーシスや透析量の不足等を疑います。代謝性アシドーシスは軽い場合は症状がないこともありますが、通常は吐き気や嘔吐、疲労感が生じます。悪化に伴って、極度の脱力感と眠気を感じはじめ、意識がもうろうとして吐き気が強くなり、やがて血圧が下がりショック、昏睡、死に至ります。
健康な人の場合血液や体液の緩衝作用、呼吸による調節、腎臓による調節などによって、血液のpHは(7.4±0.05)になるように保たれています。pH7.0が中性ですから健康な人の血液は軽くアルカリ性に傾いていることになります。
血液のpHは、主に腎臓で産生されるアルカリ(HCO3-)と肺の呼吸機能で調節されるPCO2によって決まります。