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透析から移植へ 〜戦いは終わらない〜

【第7話】腎臓移植に向かって ~移植前の検査や心構え①~

2021.9.6

文:OZMA(オズマ)

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手術に向かう日々は「非日常」

眠りから覚めると天井が見えた。ストレッチャーでゴロゴロ運ばれる。
「終わったのかな?」「どうなったんだろう?」そう思ってるうちに病室に運ばれた。まだ麻酔が効いているが窓を見ると外は真っ暗だった。朝8時に手術室に向かったのに、今は何時だろう?

この日は透析を始めてから2年2か月を経た2017年11月1日、ようやくたどり着いた日であった。
後に主治医から「手術は非日常だから」と。しかし、手術に向かう日々すべてが私にとって「非日常」であった。

大腸がんが見つかる前は、この日から半年近く早い5月24日に移植が決まっていた。
手術前のスクリーニングで大腸がんが分かったのが3月上旬。6月12日に大腸がんの手術をし、退院後7月に北海道大学病院の泌尿器科を受診した。主治医は「大腸がんは治癒し、再発率は健常者と同じ程度まで下がった」と。大腸がん手術の結果は北大の移植医にも伝わっていた。

「OZMAさん、これで移植ができます。移植手術は9月13日に行う予定でどうでしょうか?」と突然言われた。仕事の日程調整に、ドナーである妻の都合の確認、そして3か月後にお腹を切るのか? とさまざまなことが頭をよぎった。
主治医には「仕事の都合もあるので1週間くらい待ってほしい」と答えた。

1週間後に「やはり9月は難しい」と伝え、手術は11月1日に決まった。
主治医は11月1日を移植日と言ったのにもかかわらず、移植コーディネーターからは「あくまで予定ですから、決定ではありませんよ」と言われていた。そんな事言われても仕事の都合や妻の予定もあるし何を言ってるのだろう?
しかし入院してからその意味が分かった。なるほど決定ではなく、あくまでも予定なんだということを。


移植前準備のために2週間以上前に入院

まずは、臓器移植に関する基本的なことに触れておこう。
私たち夫婦の血液型は異なる。私がA型、ドナーの妻はB型なため、ABO血液型不適合となる。
血液型が違うと腎臓を移植できないのではと思っている方は多いと思う。しかし最近では強力な免疫抑制剤の投与によって、ABO血液型不適合移植における抗体関連型拒絶反応を抑制することが可能になり、通常の移植と同等の成績を上げているのである。

ドナーとレシピエントの血液型の関係

レシピエント▶
▼ドナー
O型 A型 B型 AB型
O型 適合 適合 適合 適合
A型 不適合 適合 不適合 適合
B型 不適合 不適合 適合 適合
AB型 不適合 不適合 不適合 適合

一昔前までは移植の対象ではなかったが、リツキサン(免疫抑制剤の一種)の投与や血漿交換などの脱感作療法により腎臓移植が可能になった。リツキサンは手術の2週間前に投与しドナーの血液型への抗体を取り除く必要があるため、早めに入院するのである。

私の場合は、手術予定日の11月1日から逆算し、16日前の10月16日に入院。二日後の18日からリツキサンの点滴、グラセプター、セルセプト、メドロール等の免疫抑制剤を使った治療が始まる。リツキサンは痒みと発熱が必発するとのことで、痒み止めのポララミン、解熱鎮痛剤のブルフェンを内服した。幸いにして副作用は全くなかった。

しかし経口免疫抑制剤はそうはいかなかった。
まず酷い下痢に悩まされた。これはセルセプトの影響と判断され、漢方薬(ツムラ半夏瀉心湯)を処方された。薬局でもセルセプトを服用している患者さんによく処方されており、飲んでみたが私には効果がなかった。
そこで薬を変更してもらい、ロペラミド錠1mgの処方になった。この薬は効果があった。


免疫抑制剤を使うということ

ABO血液型不適合移植は、このようにいろいろな薬の副作用を薬で止めながら治療していくのである。
賛否はあるだろうが、免疫抑制剤は必ず服用しなければならない。それを服用するためには新たに薬を被せることもいとわないのだ。幸い現在ロペラミドは服用していないが、下痢を止めるため3年は飲んだと思う。

最初は高用量の免疫抑制剤を飲まなければならない。確かグラセプター1mgを7カプセル、セルセプトを朝に4カプセル、夕方に4カプセル、メドロールは4mgを何錠飲んでいたかあまり記憶がないが、確か5錠(20mg)だったように思う。

これだけ免疫抑制剤を飲んでいると、当然感染症が気になる。
案の定、術後にはヘルペスに悩まされることなった。感染するとウイルスは神経節中に潜み、宿主の免疫力が落ちてくると動き出すのである。
今では疲れた時、寝不足、お酒を飲んだ後、スポーツをした後などに皮膚がピリピリとしたら、ウイルスの活動が始まった予兆だ。この時にバルトレックスという抗ウイルス剤を服用するとすぐに収まった。この予兆は移植した本人が持つ感染症の指標だという。このように日和見感染症とも付き合わなければならないのだ。

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OZMA(オズマ)

OZMA(オズマ)
1961年2月生まれ。
59歳。埼玉県所沢市出身、札幌市在住。
糖尿病性腎症で54歳に透析導入。2年2ヵ月後、妻から腎臓移植。
仕事は、外資系製薬会社に13年勤務、営業、管理薬剤師、開発、広報などを経て1998年より薬剤師として勤務。2001年に独立して薬局経営。現在、新しい薬局の開設準備中。

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