with Kidney調査
第3回 医療者アンケート①腎臓病と診断されたばかり(透析未導入)の患者さんに、まず知ってほしい・特に必要だと感じている情報や知識 調査結果
2023.7.20
― with Kidneyプロジェクト 開催中のアンケート ―
調査目的
当プロジェクトにて慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease、以下 CKD)の治療と生活に関わるドキュメントや情報を全てマネージメントするための、カスタマイズして長期にわたって使える管理のしくみ(仮称「CKDとの上手な付き合い方のしくみ」)を構築するにあたって、「第1回 当事者アンケート①」で「腎臓病が分かったばかりの頃に一番知りたかったこと」をテーマにアンケートを実施しました。
逆に、腎臓病に携わる医療者の皆さんが、知ってほしいと当事者の方に求める情報や知識は何だろう? 普段から腎臓病の方に接している医療者の方々なら、治療を通じて生活や人生を形づくるための、本人では気付けないヒントを知っているかもしれないと考え、当事者アンケートと同じ選択項目でアンケートを実施しました。
調査概要
調査方法 | Webアンケート |
---|---|
調査対象 | 腎臓病患者さんと直接関わることがある医療者の方 |
調査期間 | 2023年6月9日(金)~ 6月29日(木) |
有効回答数 | 104名 |
回答者の属性等
管理栄養士 | 看護師 | 医師 | 臨床工学技士 | 医療事務 | 事務 | 調理師 | 社会福祉士・ ソーシャルワーカー |
MR | 看護助手 | 総計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
~20代 | ― | 2 | ― | 2 | 1 | ― | ― | ― | ― | ― | 5 |
30代 | 7 | 3 | 3 | 7 | 2 | 1 | 2 | ― | ― | ― | 25 |
40代 | 18 | 9 | 3 | 2 | ― | ― | ― | 1 | ― | 1 | 34 |
50代 | 9 | 9 | 9 | ― | ― | 1 | ― | ― | 1 | ― | 29 |
60代 | 4 | ― | 6 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 10 |
70代 | ― | ― | 1 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 1 |
総計 | 38 | 23 | 22 | 11 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 104 |
調査内容と結果
CKDの治療に関わる46個の選択肢から腎臓病が分かってすぐに知って欲しい知識や情報を5つ選択し、選択肢にないものは自由に記入いただくアンケートを実施しました。結果は以下の通りです。
原疾患ごとや、ご家族に向けた選択肢もありましたが、腎臓病や生活習慣に関わる普遍的項目が当然多く選ばれる結果となりました。
もくじ
選択肢と回答数(回答数順)[n=104:回答数=520]
選択肢 | 回答数 |
---|---|
1. 食事療法 | 82 |
2. 血圧管理 | 67 |
3. 生活習慣と運動 | 45 |
4. 塩分をなぜ抑えるべきなのか | 43 |
5. CKDの定期検査 | 34 |
6. 禁煙 | 27 |
7. 水分摂取・管理 | 26 |
8. 薬物療法(服薬管理と飲み方) | 22 |
9. 体重管理 | 19 |
9 血糖値管理 | 19 |
11. CKDの検査とその意味 | 18 |
12. 家族向け:食事の準備の工夫 | 13 |
13. 蛋白尿をなぜ抑えるべきなのか | 11 |
14. 治療の不安を解消するには | 10 |
14. 腎臓病+糖尿病 | 10 |
16. カリウム管理 | 8 |
16. CKDの自覚症状とその理由 | 8 |
18. 精神状況:ストレス対処 | 7 |
19. 社会生活:働くための支援 | 6 |
20. 家族向け:療養・生活のマネジメント | 5 |
20. CKD検査教育入院 | 5 |
22. 原疾患ごとの役立つ情報 | 5 |
23. 病状管理:むくみ | 4 |
選択肢 | 回答数 |
---|---|
23. 病状ごとの役立つ情報 | 4 |
23. CKDはなぜ心血管疾患を起こしやすいか | 4 |
26. 社会生活:治療とお金 | 3 |
27. 薬剤性腎障害/薬物動態 | 2 |
27. 家族向け:ストレス対処 | 2 |
27. 家族向け:高齢者の場合のマネジメント | 2 |
27. 年齢層ごとの役立つ情報 | 2 |
31. CKD-MBD管理 | 1 |
31. 早寝早起き休養 | 1 |
31. 貧血管理 | 1 |
31. 排尿を我慢しない | 1 |
31. 感染症 | 1 |
31. 家族向け:接し方 | 1 |
31. 原疾患管理:膠原病、全身性感染症 | 1 |
38. 原疾患管理:泌尿器科系 | 0 |
38. 原疾患管理:高尿酸血症 | 0 |
38. 社会生活:職場でのコミュニケーション | 0 |
38. 社会生活:CKDカードを持とう | 0 |
38. アシドーシス管理 | 0 |
38. 尿毒症管理 | 0 |
38. 病状管理:乾燥・かゆみ | 0 |
38. 病状管理:網膜症 | 0 |
38. ヘルプカード活用法 | 0 |
医療者と当事者、それぞれの回答TOP10
医療者の方の回答と、透析導入前、CKDステージG1〜G4(保存期腎不全)までの当事者の方の回答の比較です。
医療者のTOP10 | 透析導入前の当事者のTOP10 | |||
---|---|---|---|---|
1 | 食事療法 | 82 | 食事療法 | 60 |
2 | 血圧管理 | 67 | 生活習慣と運動 | 38 |
3 | 生活習慣と運動 | 45 | 血圧管理 | 27 |
4 | 塩分をなぜ抑えるべきなのか | 43 | 薬物療法(服薬管理と飲み方) | 21 |
5 | CKDの定期検査 | 34 | 精神状況:ストレス対処 | 20 |
6 | 禁煙 | 27 | 社会生活:治療とお金 | 20 |
7 | 水分摂取・管理 | 26 | 病状ごとの役立つ情報 | 20 |
8 | 薬物療法(服薬管理と飲み方) | 22 | 水分摂取・管理 | 18 |
9 | 体重管理 | 19 | CKDの定期検査 | 17 |
10 | 社会生活:治療とお金 | 19 | 年齢層ごとの役立つ情報 | 15 |
職種ごとの回答TOP5
当アンケートには、管理栄養士(38名)、看護師(23名)、医師(22名)の順で多く回答いただきました。その3職種の回答の比較です。
管理栄養士の方のTOP5 | 看護師の方のTOP5 | 医師の方のTOP5 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 食事療法 | 33 | 食事療法 | 13 | 血圧管理 | 20 |
2 | 血圧管理 | 26 | 血圧管理 | 11 | 食事療法 | 19 |
3 | 塩分をなぜ抑えるべきなのか | 19 | 生活習慣と運動 | 11 | 生活習慣と運動 | 11 |
4 | CKDの定期検査 | 12 | 塩分をなぜ抑えるべきなのか | 11 | CKDの定期検査 | 9 |
5 | 水分摂取・管理 | 10 | CKDの定期検査 | 9 | 禁煙 | 9 |
5 | CKDの検査とその意味 | 10 | ― | ― |
回答の傾向
選択肢は、「治療や病気の管理に関わること」「心に関わること」「病気に対する知識(治療に直接的に関わらないもの)」「社会生活に関わること」「その他」の5つに大別できます。
医療者の方と当事者の方からの回答の傾向を比較すると、「治療や病気の管理に関わること」に対する回答の割合はおよそ6割強とほぼ同じですが、医療者の方の回答は「病気に対する知識」が2番目に多いことに対し、当事者の方は「社会生活に関わること」「心に関わること」の直接病気に関わらない項目の合算が多くを占めていました。
医療者と当事者の立ち位置や「病気とともにあること」への考え方の違いが、この差に現れていると言えるでしょう。病とともに生きる当事者それぞれ個々に異なる生活背景やその時々の心の状態への理解と対処が、医療に求められているのかもしれません。
- 治療や病気の管理に関わること
- 食事療法、生活習慣と運動、水分摂取・管理、血圧管理、体重管理、カリウム管理、薬物療法(服薬管理と飲み方)、感染症、病状管理:むくみ、腎臓病+糖尿病、薬剤性腎障害/薬物動態、病状管理:乾燥・かゆみ、貧血管理、原疾患管理:膠原病、全身性感染症、血糖値管理、CKD検査教育入院、尿毒症管理、禁煙、早寝早起き休養、病状管理:網膜症、アシドーシス管理、CKD-MBD管理、排尿を我慢しない、原疾患管理:泌尿器科系、原疾患管理:高尿酸血症
- 社会生活に関わること
- 治療とお金、働くための支援、年齢層ごとの役立つ情報、職場でのコミュニケーション、ヘルプカード活用法、CKDカードを持とう、家族向け:療養・生活のマネジメント
- 心に関わること
- 精神状況:ストレス対処、治療の不安を解消するには、家族向け:ストレス対処、家族向け:接し方
- 病気に対する知識(治療に直接的に関わらないもの)
- CKDの定期検査、蛋白尿をなぜ抑えるべきなのか、CKDの自覚症状とその理由、CKDの検査とその意味、CKDはなぜ心血管疾患を起こしやすいか、塩分をなぜ抑えるべきなのか
- その他
- 病状ごとの役立つ情報原疾患ごとの役立つ情報家族向け:食事の準備の工夫家族向け:高齢者の場合のマネジメント
自由記述回答
自由記述においては、当事者の方からは治療の具体的な実践方法を知りたいなど、目前・直近の困りごとが最も多かったのに対し、医療者の方からは、CKDは進行性で腎臓の機能は変化することへの理解を深めて欲しいという回答が最も多く、2番目に腎臓の働きへの理解という回答でした。
原因や理由をしっかり理解してこその適切な治療や生活、ひいては人生を作り上げることができるという、治療への姿勢や意思決定をサポートする医療者の皆さんならではの結果となりました。
CKDは進行性であること、腎臓の機能は変化することへの理解
- 原疾患の管理、今後治療することで何が変わるのか、進行抑制について(管理栄養士)
- 腎機能低下は不可逆的であること(看護師)
- 今後起こり得る症状と経過(看護師)
- 病気の特性(進行性であること、進行の速度を遅くすることができること)(医師)
- 腎機能の長期的推移(eGFR slope)を知る(医師)
- 病状の見通し(医師)
腎臓の機能や働きへの理解
- 腎臓の役割、なぜ腎臓が働きを失うのか(医師)
- 腎臓の働き(看護師)
- 腎臓の働き、なぜ食事療法が必要か(管理栄養士)
その他:管理栄養士
- 定期受診の必要性、専門医とかかりつけ医の2人主治医制
- 厳しい食事療法になるがなぜその食事療法が必要なのかを、本人はもちろん、キーパーソンとなる方々が理解ゆくまでの説明
- 排便コントロール
その他:医師
- 栄養指導や申請以外のことでも、医療従事者は社会生活の相談に乗れるし、柔軟に対応を考えられること
- 糖尿病があれば基礎カーボカウント
その他:看護師
- 受診を中断しない
その他:臨床工学技士
- 透析室の雰囲気
- 腎代替療法選択